統合失調症と双極性障害は近縁であるという事実は、遺伝学的研究において明確に示されています。

1-3 遺伝統計学的事実

統合失調症と双極性障害は近縁であるという事実は、遺伝学的研究において明確に示されています。これらの疾患は、遺伝的要因が強く関連しており、しばしば同一の家族内で複数のケースが見られることがあります。双極性障害と統合失調症の遺伝的関連性は、共通の遺伝的リスク因子がいくつか存在することから、近縁性が高いことが示唆されています。

統合失調症と双極性障害の近縁性

統合失調症と双極性障害は、病理学的および臨床的に異なる疾患であるものの、両者は遺伝的に密接に関連していることが、近年のゲノム研究によって確認されています。特に、統合失調症と双極性障害の間に共通する遺伝的リスク因子が存在することが、複数の大規模な遺伝子関連研究から明らかにされています。これらの疾患が同一の遺伝的基盤を持つ可能性があることを示す証拠として、共通の遺伝子変異や多型が複数確認されています(Lichtenstein et al., 2009)。

Lichtensteinら(2009)の研究では、双極性障害の患者統合失調症のリスクも高いことが示されました。この研究は、両者の疾患が遺伝的な共通点を有し、同じ遺伝的リスクを共有する可能性があることを示唆しています。さらに、双極性障害の家族内で統合失調症患者が見られることが多いという事実も、これらの疾患の遺伝的なつながりを支持しています。

単極性うつ病と統合失調症・双極性障害の違い

一方、単極性うつ病(一般的に単極性抑うつ症)については、統合失調症や双極性障害とは異なる遺伝的背景を持つことが、遺伝学的な調査から明らかになっています。統合失調症や双極性障害が共通の遺伝的リスク因子を共有しているのに対し、単極性うつ病はこれらの疾患とは別のグループとして分類されるべきだとされています。研究において、単極性うつ病の遺伝的リスク因子は、統合失調症や双極性障害とは異なるとされ、これらの疾患が異なる遺伝的基盤を持っていることが示唆されています(Kendler et al., 2006)。

Kendlerら(2006)の研究では、単極性うつ病が、遺伝的に統合失調症や双極性障害とは区別される病態であることが確認されています。特に、うつ病患者は統合失調症や双極性障害の患者と比べて、異なる遺伝的多型を示すことが多いことが報告されています。これにより、単極性うつ病は、統合失調症や双極性障害とは遺伝的に別の疾患グループに位置づけられるべきであるとされています。


参考文献

  • Lichtenstein, P., Yip, B. H., Björk, C., Pawitan, Y., Cannon, T. D., Sullivan, P. F., & Hultman, C. M. (2009). Common genetic determinants of schizophrenia and bipolar disorder in Swedish families: a population-based study. The Lancet, 373(9659), 234-239.
  • Kendler, K. S., Neale, M. C., Kessler, R. C., Heath, A. C., & Eaves, L. J. (2006). A longitudinal twin study of personality and depression in women. Archives of General Psychiatry, 63(4), 406-412.

このように、統合失調症と双極性障害は遺伝的に近縁であり、共通の遺伝的リスク因子を有することが確認されています。一方、単極性うつ病はそれとは異なる遺伝的背景を持ち、これらの疾患群は遺伝学的に分離されるべきであるという事実は、精神疾患の遺伝的理解において重要な視点を提供しています。

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