ジョハリの窓(Johari Window)
自分に知られている | 自分に知られていない | |
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他者に知られている | 1. 公開(public) | 2. 盲点(blind) |
他者に知られていない | 3. 秘密(secret) | 4. 無意識(unconscious) |
私たちはしばしば、自分自身が他者にどのような影響を与えているのか、他者の目に自分がどのように映っているのかについて、驚くほど無自覚です。
自分の意図とは裏腹に、相手を傷つけていたり、誤解されていたり、あるいは、自分では気づいていない魅力や強みを持っているのに、それを活かせていなかったりするかもしれません。セラピーの目標の一つは、この「盲点」を減らし、現実検討能力(reality testing)を高め、クライエントが「他者が見る自己」と「自己が認識する自己」とのギャップを認識し、より客観的でバランスの取れた自己像を築く手助けをすることです。
具体的な観察と、聞き手の感情に焦点を当てる。
「あなたは〇〇だから、こう言ったに違いない」といった相手の動機に関する推測や解釈(ラベリング)ではなく、「あなたが〇〇と言ったのを聞いて、私は(具体的な感情、例えば)少し距離を感じた/悲しくなった/混乱した」のように、具体的な観察事実と、それが自分に引き起こした感情(I-message)を伝えることが大切です。
盲点を指摘されることは、一時的に不愉快なこともあるだろう。タイミングも大切だ。「いま、ここ」が有効なのはこの領域である。
自己開示は、秘密の領域をすこしだけ、公開の領域に移動することだ。
無意識の領域は精神分析の仕事であるが、無意識には無意識の役目があるのだろうから、簡単に意識化していいわけでもないように思う。
「盲点の窓」に光を当てるフィードバックは、自己理解と成長のための強力な道具ですが、同時に、非常にデリケートな扱いを要するものでもあります。鋭すぎる光は目を眩ませ、不用意な言葉は心を閉ざさせてしまうかもしれません。もしあなたが、クライエントの「いま、ここ」での振る舞いの中に、彼(彼女)が抱える中心的な問題(例えば、人間関係の困難さ)と深く関連していると思われる、明確な印象を持っているならば、その観察を、相手が受け入れ、そして内省の糧とできるような形で伝えるための「技法」と、そして何よりも「心遣い」を磨く必要があります。それは、まるで熟練した外科医がメスを扱うように、正確さと優しさが求められる営みなのです。
セラピーの比較的早い段階で、私がこの繊細なプロセスを円滑に進めるために、しばしば有用だと感じているいくつかのステップがあります。
ステップ1:同盟を結び、許可を得る
まず、私はクライエントを、この探求における「同盟者(ally)」として位置づけ、協力を仰ぎます。具体的には、私がセッション中に気づいた「いま、ここ」での観察――つまり、二人の間で起こっていることについての私の印象――を、率直に伝えてもよいか、彼の許可を求めます。これは、一方的な「評価」や「診断」ではなく、あくまで二人の共同作業であることを明確にするためです。「これから私たちが一緒に時間を過ごしていく中で、私たちの間で起こっていることについて、私が感じたことや気づいたことを、時々お伝えしてもよろしいでしょうか? それは、あなたがご自身のことをより深く理解する上で、役立つかもしれないと思うからです。」
ステップ2:治療目標との関連性を明確にする
次に、これらの「いま、ここ」での観察が、決して些末なことや、単なる私の個人的な感想ではなく、クライエントがそもそもセラピーを受けようと決意した理由、すなわち彼(彼女)が解決したいと願っている中心的な問題(例えば、人間関係のパターン、自己肯定感の問題、感情表現の困難さなど)に、深く関連している可能性が高いことを明確に伝えます。これは、フィードバックが「なぜ重要なのか」という文脈(コンテクスト)を提供し、クライエントがそれを受け止め、探求する動機づけを高めるためです。
ポイント:観察と感情に焦点を当て、解釈を避ける
具体的な行動の観察: 「視線を合わせない」「メモを取る」「長い話をする」など、客観的に観察可能な具体的な行動に言及。
セラピスト自身の感情(I-message): その行動が「私に」どのように感じさせるか(「優しく話しかけたくなる」「自発性が抑えられる」「迷子になる」)を伝える。これは、相手を非難するのではなく、あくまで「私の」反応であることを強調します。
動機の推測や解釈を避ける: 「あなたは私を避けようとしている」「私をコントロールしようとしている」「私を楽しませようとしている」といった、相手の意図に関する推測(ラベリング)は避けています。なぜなら、それは相手の防御を引き起こしやすいからです。私たちは相手の心を読むことはできません。
関係性への影響を示唆する: その行動が、二人の関係性(「親しさを感じることを妨げる」「深い出会いを妨げる」)や、セラピスト自身のあり方(「慎重になる」)にどのような影響を与えているかを伝えます。
他者との関係への可能性を問う: 「他の人にも同じように影響を与えている可能性は?」「他の人から聞いたことがあるか?」と問いかけることで、セッションでの気づきを、クライエントの日常の人間関係へと繋げる橋渡しを試みる。
関係を深めたいという願いを伝える: 根底には、「あなたともっと近づきたい」「もっと深くあなたを知りたい」という、セラピストの肯定的な願いがある。フィードバックは、突き放すためではなく、より良い関係性を築くための招待状なのです。