出産後すぐの時期にヒトが経験する未熟性のため、ヒトの新生児は一部の特徴を胎児期から引き継いでいます。
この早熟性(プレコシャリティー)は、他の動物に比べてヒトの赤ちゃんが新たに獲得した、ある意味で二次的な特徴です。
早熟性の特徴には、以下が含まれます:
- 母親への接近行動
- 母親への執着
- 自力で移動できないこと
- 泣き声を上げて助けを求める行動
こうした行動は、巣の中で過ごす多くの哺乳類(巣居性動物)に似ています。
また、ヒトの赤ちゃんには以下のような典型的な未熟の特徴も見られます:
- 大きな目と耳
- 体の未熟さ(運動できない)
- 無毛や薄毛
- 皮膚が薄くデリケート
これらはすべて、ヒトの新生児が自力で移動したり、自己防衛する能力を欠いていることを示しています。
そのため、生存のためには、他者(特に母親)に抱きかかえられることが絶対に必要です。
ドイツ語にはこの現象を指す言葉があり、「Tragling」(「運ばれる存在」)と呼ばれます。
この「運ばれる存在」という生物学的条件は、二足歩行の進化によって手が自由になったことによって可能になったと考えられています。
この**母子間の結びつき(ダイアド)**の形成は、ヒトにとって心理学的に極めて重要な適応であり、
- 母親との愛着
- その後の社会的絆の形成
に直接つながっていきます。
この「愛着(アタッチメント)」の生物学的基盤は、**ジョン・ボウルビィ(John Bowlby)**によって最初に提唱されました。
ボウルビィとその後継者たちは、ヒトを含む哺乳類に共通する愛着行動について体系的に研究し、
- 養護施設
- 里親ケア
- 幼少期のトラウマ(身体的・精神的・性的虐待など)
が、どのように愛着形成に影響を与えるかを明らかにしました。
愛着理論は、進化論的な枠組みにおいても一貫性があり、愛着行動は若い個体の生存率を高め、
社会的学習を促進する適応として進化してきたと考えられています。
また、次のようなことも指摘されています:
- ヒトの新生児は、出産直後からすでに「顔」に対して特別な反応を示します。
特に母親の顔に反応し、声を認識し、積極的にアイコンタクトをとろうとします。 - 生後4ヶ月頃には、ヒトの乳児は自分と他者(特に母親)との間に感情的なつながりを感じるようになります。
- 生後6ヶ月以降には「見知らぬ人恐怖(stranger anxiety)」が見られるようになります。
これは、発達的に適応的な反応と考えられ、見知らぬ人に対する警戒心を高め、潜在的な危険から身を守るためのものです。
文中の斜体部分(まとめ)
- ポイント1
“Humans babies display prenatal features such as open eyes and ears at birth…”
→ ヒトの新生児は、出生時に目と耳が開いているなど、胎児期に典型的な特徴を示す。 - ポイント2
“The formation of the dyad between mother and offspring…”
→ 母親と子の間に形成される絆(ダイアド)は、ヒトにおける最も重要な心理学的適応の1つである。 - ポイント3
“In piawhim infants actively seek contact with human faces…”
→ 生後4ヶ月になると、ヒトの乳児は積極的に人間の顔との接触を求めるようになる。
この愛着形成の話は、ヒトの社会性の進化にも深く関係してきます。