ヒトの乳児は、生後6〜9か月頃になると、
- 体を自分でコントロールできるようになり、
- 這う(はい進する)ことで限られた範囲内を移動できるようになります。
この段階で、親は乳児の安全を守るため、より積極的な養育行動(パラタルケア)を取る必要が出てきます。
ヒト以外の動物でも、たとえば
- アヒルのヒナ
- 大型類人猿(ゴリラやチンパンジー)
- ネコ科動物(ライオンなど)
は、攻撃性を通して新生児を守ろうとする行動が見られますが、ヒトでは、赤ちゃんの反応自体が「可愛らしさ」によって親の防衛本能を引き出す仕組みになっています。
赤ちゃんの泣き声や表情に対する親の感受性は、
- 主に「接近システム(proximity-seeking behavior)」に基づいていると考えられます。
つまり、赤ちゃんは「かわいい」反応を通して親に近づき、保護を得ようとするわけですね。
一方、**「愛着(attachment)」**とは少し違った意味で、
- **「絆(bonding)」**という言葉が使われます。
絆とは、生物学的・心理学的・生理学的なプロセス(たとえばオキシトシンの分泌など)を通して、母親と子の間に安定した感情的つながりができることを指します。
この絆の形成において非常に重要なのが、生後すぐの期間です。
特に生後最初の24〜48時間がクリティカル(決定的)な時期とされています。
この間に母子間で十分な接触や授乳が行われないと、
- 新生児の死亡リスク(ネオナタルモータリティ)が高まる可能性があることがわかっています。
このような絆の欠如は、たとえば
- 継父との養育環境
- 虐待や無視による心的外傷
などにつながり、乳児の発達に深刻な影響を与えることが指摘されています。
内的作業モデル(Internal Working Model)
絆が一度形成されると、
乳児や幼児は**「内的作業モデル」**(自分と他者に関する無意識的な期待・イメージ)を発達させます。
この内的作業モデルにより、子どもは将来の人間関係に対する期待を形成し、
自分自身が安全で愛される存在かどうかという自己認識にも影響を及ぼします。
安全な愛着が形成された場合:
- 環境を積極的に探索できる
- 社会性が発達する
- ポジティブな情動(喜び、愛着)が強まる
一方、不安定な愛着や分離不安がある場合:
- 警戒行動(泣く、うずくまる、逃げる)を示す
- 不安や抑うつ傾向が見られる
分離反応(Separation Reaction)
分離反応には3段階あります:
- 抗議(Protest):母親がいなくなったことに怒り、叫んだり泣いたりする段階。
- 絶望(Despair):抗議が実らず、絶望感に陥る。無気力になり、動きが減少。
- 脱愛着(Detachment):環境に無関心になり、再び親が現れても関心を示さなくなる段階。
この最後の段階は、進化的には「適応的応答」として理解されますが、心理的には深刻な影響を残すことが多いです。
愛着スタイル(Attachment Styles)
1歳半前後になると、乳児は明確な愛着スタイルを示すようになります。
有名な「ストレンジ・シチュエーション実験(Strange Situation Test)」では、以下の4つのスタイルが確認されています:
- 安定型(Secure)
- 回避型(Avoidant)
- 抵抗型(Ambivalent/Resistant)
- 無秩序型(Disorganized)
これは、乳児がどのようにして親との分離・再会に反応するかによって分類されます。
また、乳児の気質(内向性・外向性など)にも影響されることが示唆されています。
文中の斜体部分(まとめ)
- ポイント1
“Humans infants display facial features such as large eyes and heads, small faces,…”
→ ヒトの乳児は、大きな目と頭、小さな顔などの特徴を示し、親の養育行動を引き出す。 - ポイント2
“Neonatality may occur at attachment establishment…”
→ 新生児期は愛着の確立にとって極めて重要な時期である。 - ポイント3
“Separation from the attachment figure produces protest, despair, and ultimately detachment…”
→ 愛着対象からの分離は、抗議・絶望・脱愛着という段階を経る。 - ポイント4
“Attachment theory distinguishes four types of attachments…”
→ 愛着理論では、安定型・回避型・抵抗型・無秩序型の4つの愛着スタイルが区別される。