人間の機能を構成する8つの要素

「人間の機能」について、ソースでは帆船のメタファーを用いて多角的かつ理解しやすい視点から説明されています。このメタファーは、人間が複雑な存在であり、日々の感情や行動に影響を与える自分自身や周囲の多くの異なる側面を理解するためのものです。

帆船のメタファーは、人間の機能を「全体論的(holistic)な視点」から捉え、ウェルビーイングに影響を与える肯定的および否定的な多くの要因を考慮に入れています。

人間の機能を構成する8つの要素は以下の通りです:

  1. 水(Water):私たちの直接的な物理的現実や環境を表します。これは私たちの仕事、家、持ち物、地理的な場所など、私たちが生活し交流する直接的な環境を指します。他の要素(例えば「浸水」や「操舵輪」)が、この環境をどのように認識し、関わるかに影響を与えます。環境を変えること(例えば仕事や故郷を変えること)は、他の要素を考慮せずに幸福度を自動的に高めるわけではないと指摘されています。
  2. 操舵輪(Steering Wheel):個人の価値観、つまり人生をどのように生きたいかを決定する方向性を表します。価値観は達成されるものではなく、方向性として動詞で表現されるのが最も適切です(例:「創造的であること」や「他者の幸福に貢献すること」)。不適応な価値観(例えば恐怖を制御することや他者の承認を得ること)に過度に焦点を当てると、幸福度を低下させる可能性があります。
  3. 目的地(Destination):具体的な目標や願望を表します。目標は抽象的な価値観を具体化し、集中力を高め、活力を与え、自信を築くのに役立ちます。
  4. 浸水(Leak):弱み、または価値ある生き方や目標達成を妨げる要因を表します。これらは個人的な幸福度を低下させ、否定的な思考パターン、困難な感情の抑制、衝動的な行動などが含まれます。弱みだけに焦点を当てる(「浸水」を直すこと)だけでは、幸福度の向上にはつながりにくいとされており、問題を解決するだけでなく、「帆」を上げて前進することも重要です。
  5. 帆(Sails):個人の強み、または価値ある生き方や目標達成を促進する要因を表します。これらは肯定的な思考、感情、行動の特性であり、最適な機能、発展、パフォーマンスを可能にします。例として、楽観主義や受容などの効果的な対処スタイル、または書くことや絵を描くことなど、エネルギーと熱意を与える活動が挙げられます。
  6. 羅針盤(Compass):内的な経験、感情、直感といった内的なフィードバックを表します。これらは人生の進路に関する情報を提供するナビゲーションツールとして機能し、肯定的な感情も否定的な感情も、進むべき道の貴重な指標となります。感情自体が問題なのではなく、その感情に効果的に対処できないことが問題であり、これは「浸水」となることがあります。
  7. 天気(Weather):人生における制御不能な状況を表します。私たちが制御できない肯定的および否定的な出来事(例えば、愛する人の喪失、宝くじに当たるなど)が含まれます。これらの状況に効果的に対処する能力は、レジリエンスを構築し、困難にもかかわらず軌道にとどまるのに役立ちます。
  8. 他の船(Other Boats):私たちを取り巻く人々、ソーシャルネットワークを表します。他者は私たちに肯定的にも否定的にも影響を与えることがあり、支援を提供することもあれば、自己不信や恐れを引き起こすこともあります。

要素間の相互作用 これらの要素は孤立して存在するのではなく、互いに継続的に相互作用しています。例えば、弱みを無視して強みを使うだけでは、船は勢いを増しても徐々に沈んでしまいます。個人的に価値ある方向に航海する船は、嵐の天候でも軌道に留まりやすいです。また、恐れのために「コンフォートゾーン」を出ようとしない船は、新しい水域へ航海することは難しいでしょう。私たちの日常の現実は、制御不能な出来事だけでなく、私たちが人生で下す意図的な選択によっても影響を受けます。

ウェルビーイングの主要な条件としての人間の機能 ウェルビーイングを高めるためには、単にこれらの要素を認識するだけでは不十分であり、行動を起こすことが不可欠です。また、すべての要素にバランスの取れた注意を払うことが、ウェルビーイングの基本的な条件です。いずれかの要素に過度に集中しすぎると、ウェルビーイングにつながる可能性は低くなります。

さらに、人間の機能の各要素は「継続的な関与」を必要とします。例えば、弱み(浸水)は一時的に修復するだけでなく、継続的にチェックし、強化する必要があります。価値観に沿った生き方も継続的な注意が必要な進行中のプロセスです。また、これらの要素は静的なものではなく、非常に「動的」なものとして捉えるべきであり、状況に応じて方向性や目的地をいつでも変更できる「柔軟性」が重要です。

支援専門家は、クライアントが自身の価値観、目標、強み、弱みなどを認識するのを助け、彼らが「自分の船の船長である」ことを認識し、それに応じて行動するのを支援することで、人間の機能の向上を促進します。

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