コンパッション-12


🔥 自傷を繰り返す人の背景

自傷(リストカットや過食嘔吐など)を繰り返す人の多くは、

  • 強い恥や自己嫌悪
  • 過去の虐待や見捨てられ体験
  • 感情調整の困難(強い感情を自分で和らげる手段がない)
    を抱えています。

自傷は「苦しみを一時的に和らげるための自己流の対処」であり、本人にとっては 緊急避難的なケアの手段 です。
そのため「やめるべき行為」と一方的に見ず、

🔸 なぜそれが必要だったのか
🔸 何を和らげるためにしているのか
を丁寧に探っていくことが非常に重要です。


🌿 CFTの自傷へのアプローチ

1️⃣ 自傷を「責めない・恥じない」枠組みを提供

  • 「あなたが悪いからやっているわけではなく、それだけ必死に対処しようとしてきたんですね。」
  • 自傷を「脳の脅威システムが暴走し、それをどうにか鎮めるための最後の手段」として理解。

これだけで、恥と自己嫌悪が少し緩み、苦しみの二次的な層(=自分をさらに嫌悪する)を減らせます。


2️⃣ 自傷に向かうプロセスを丁寧に探る

  • 自傷をしたいとき、どんな状況だったか?
  • 身体や心にどんな感覚があったか?
  • 自傷した後、何が変わったか?

これを「自己攻撃のストーリー」ではなく、「脳の脅威システムがどう作動し、どう安心を求めたか」という視点で整理します。


3️⃣ 安心・ケアシステムを育てる

🫂 自傷の代わりに「安心」を作る

  • 自傷の代替を探すのではなく、「なぜ自傷が必要だったのか」をまず十分に理解した上で、
  • 小さなケア行動や安心できる身体感覚を探す。

例:

「自傷した後に感じる“すっとする感覚”を、他の方法で少しだけ感じられるものは何か一緒に探しませんか?」
「呼吸をゆっくりする」「重い毛布をかける」「ぬいぐるみを抱く」「温かいタオルを胸に当てる」など。

これは単なる代替行動ではなく、

  • 身体に「今、危険じゃない」「守られている」感覚を与える試み。

4️⃣ 自分への優しい声を練習

自傷をした後、ほとんどの人は強い自己嫌悪や恥に襲われます。
CFTでは、そこに優しい声を届ける練習をします。

例えば:

「またやってしまった…」
 ↓
「とても苦しくて、そうせざるを得なかったんだよね。あなたはダメなんじゃなくて、ただすごく傷ついているんだよ。」

これをセラピストと一緒に繰り返すことで、「自分を責める声」しかなかった脳に、新しい神経経路をつくっていきます。


5️⃣ 自分を責める声(自己批判)への慈悲

  • 自傷した自分を責める声は、しばしば過去の親や環境の声。
  • その声を「あなたを守ろうとしている古いやり方かもしれませんね」と丁寧に扱い、
  • 新しい優しさの声を育てていく。

🌸 ケースの例

🎭 ケース例

  • 20代女性。高校時代からリストカットを繰り返す。
  • 両親から「お前なんかいない方がいい」と言われた経験があり、自分を深く嫌悪。
  • 「つらいときに自分を切ると、心臓のドキドキが落ち着く」と語る。

💡 CFTでのプロセス

  • まず「自傷は生き延びるための必死の方法だったんですね」と共感。
  • そこから「なぜそれが必要だったのか」「どんなときに一番切りたくなるのか」を丁寧に聴く。
  • 呼吸や体に手を当てるワークで、少しでも脅威システムを落ち着かせる感覚を繰り返し体験。
  • 「あなたは価値があるから、これを一緒にやっています。あなたにはケアされる価値があるんです。」と、存在価値そのものを何度も伝える。

📝 CFTでの自傷への態度のポイント

責めない
自傷を恥や罪の証拠ではなく、「あなたが今まで生き延びるために身につけたやり方」と理解する。

安心を少しずつ育てる
「自分に優しく」は難しいので、まずは体で安心を少しずつ感じることから。

自分を支える声を練習する
「あなたは大丈夫だよ」「今ここは安全だよ」という声を育てていく。


💬 まとめ

🪷 自傷を繰り返すケースのCFTでは

  • 自傷を責めず、その背景を共感的に理解
  • 「安心・ケア」の感覚を身体レベルで少しずつ作る
  • 自己批判や恥に優しい声を届ける練習を続ける
  • 長期的に「安心システム」を神経可塑性で育てる

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