以下に、コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)の枠組みに基づいた、実践的なセッション構成例とワークシート例を提示します。仏教的慈悲瞑想とも親和性が高く、うつ・不安・自己批判に苦しむクライエントへの応用に適しています。
🔷 セッション構成例(全6回のモデル)
回 | セッションテーマ | 内容 | ワーク例 |
---|---|---|---|
第1回 | コンパッションとは何か | CFTの理論紹介、3つの感情システムの理解(脅威・駆動・安心) | 感情システムマップの記入 |
第2回 | 自己批判の理解と記録 | 自己批判の声を明確化し、それに対する反応を観察 | 自己批判ダイアリー |
第3回 | 安心・安全の感覚の育成 | 呼吸を使った落ち着きの誘導、温かい記憶の想起 | 「安全な場」を描写する練習 |
第4回 | 慈悲深い自己との出会い | 慈悲深い自己または他者のイメージを構築 | 慈悲的イメージワーク |
第5回 | 慈悲の声で語る | 内なる慈悲の声で自己批判に応答する練習 | 「慈悲の手紙」ワーク |
第6回 | 統合と振り返り | 自分の変化、苦しみへの態度の変容を共有 | コンパッション日誌のまとめ |
🔶 具体的なワークシート例
① 感情システムマップ(第1回用)
3つの感情システムに関する自己観察記入シート
システム | 感情 | 最近の出来事 | 身体感覚 | 行動 |
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脅威 | 不安・怒り・自己批判 | 例:上司に注意された | 胃の緊張 | 引きこもる |
駆動 | 喜び・達成感・意欲 | 例:仕事で成功 | 心拍上昇 | 誰かに話す |
安心 | 安堵・親しみ・優しさ | 例:猫と過ごす時間 | 肩がゆるむ | 微笑む |
② 自己批判ダイアリー(第2回用)
自分を責めた時の状況・内容・感情・慈悲的視点での再解釈
日時 | きっかけ | 自己批判の言葉 | 感情 | 慈悲的な応答(もし親友に同じことが起きたら?) |
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月曜 | 仕事でミス | 「自分は無能だ」 | 恥・怒り | 「誰でも間違う。あなたは一生懸命だった」 |
③ 慈悲の手紙(第5回用)
自己批判に対して、慈悲的な自己が書く手紙(自由記述)
親愛なる私へ
最近、つらいことがあったね。○○で傷ついたとき、自分に対してとても厳しくなっていたことに気づいているよ。
でも私は知っている。あなたがそのとき、どれだけがんばっていたか。
あなたはただ休むことが必要だったんだ。間違いや弱さは、あなたの価値を決して減らさない。
あなたが安心して、また歩き出せるように、私はここにいるよ。
慈しみをこめて
慈悲のあなたより
🔷 応用:仏教的エッセンスの統合方法
技法 | CFTセッションでの応用 | 仏教的要素 |
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慈悲の瞑想(Metta) | 安心の感覚を育てる | 「自他への幸せを願う」心 |
慈悲的イメージ | 内なる菩薩・観音としてのイメージ構築 | 慈悲の対象化・擬人化 |
空・非自己の理解 | 思考や自己批判を「流れる雲」として見る練習 | 固定的な自己からの自由 |
🔚 補足
これらのセッションやワークは、うつ・PTSD・自己否定・愛着不安など、さまざまな臨床的文脈で柔軟に応用可能です。また、グループ形式やセルフヘルプにも適応できます。