我々人間の「コンパッション(思いやり・ケア)」が先史時代からどのように進化してきたかを、考古学的証拠や進化論の観点から解説します。
● コンパッションの古い起源
- 最初期の人類(約150万年以上前)から、病気や障害を持つ個体を長期的にケアした証拠がある。
- ケニアやジョージアの遺跡では、重い病気や歯を失った個体が周囲の支援で生き延びた痕跡が見つかっている。
- ネアンデルタール人もまた、重い障害や病気を抱えた仲間を長年支援していた。
● 社会的評判と進化
- こうしたケアは単なる感情ではなく、協力や信頼に基づく集団の生存戦略だった。
- 協力的な者、他者をケアする者は集団内で評判が高まり、長期的な利益を得やすかった。
- チンパンジーにも協力や「公正」を守る行動が見られるが、人間はさらにそれを発展させてきた。
● 精神的・感情的ケアの始まり
- 精神的・感情的苦痛にも応える兆候が見られる。
- 埋葬儀式や、てんかんや発達障害を持つ人がシャーマンと見なされる例も。
- 穿頭術(頭に穴を開ける治療)は精神的苦痛への対応でもあった可能性。
● 進化の方向性の複雑さ
- 人間は単純に「優しく進化した」のではなく、競争や暴力の文化も同時に存在していた。
- コンパッションは内部集団には発達したが、外部集団への寛容はかなり後になって発達した。
- 感情やコンパッションの可塑性は、人間が置かれた環境や文化に応じて変化した。
● 結論
- 我々は祖先を強く独立した存在とみなしがちだが、実際には彼らは脆弱であり、お互いに深いケアや感情的コミットメントで支え合っていた。
- この広範な感情的なつながりとコンパッションが、人間という種を作り上げ、進化の成功の基盤となった。