七夕の短冊に書かれた願い事

七夕が近いので、七夕の飾りを見かける。短冊に願いを書いている。

願いを書いてくださいと言われれば、
自分が何を願っているのか、少し考えることになる。

自分はどこに向かって歩いているのか、考えることになる。

目標を持たないよりも、目標を持っていたほうが、目標に近づきやすいのは当然だろう。

目標を持って歩いたとしても、
なかなか実現できないかもしれないが、
目標があったほうが、
自分の生活の各部分の必要・不必要を評価しやすくなる。

そのような生き方がよいのかどうかは分からない。
目標をはっきり持たず、日々を生きるだけでも十分だとも考えられる。

目標を持ったとして、その目標でよいのかどうかはかなり問題がある。
七夕の短冊を眺めていて、他人にはどんな願いがあるのかを知る。

深層の願いと表層の願いとがあるだろう。
複数の願いの間で対立や矛盾があることもある。

国政選挙は七夕の頃に行われることが多く、
投票所が学校の場合には子供たちの願い事が短冊に書かれていて、
投票の後に短冊を眺めていたことが記憶にある。

七夕の 短冊に書かれた 願い事 
比翼の鳥 連理の枝

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昔、白居易の長恨歌について、
くだらない、つまらないと言っていた人がいて、
こちらとしても、確かに、絵柄としては子供っぽいし、儒教的に言えば大きな志がないので
思想としても緩いものだと思うと話していたと思う。

しかし、文学としては私は長恨歌を特に愛好している。
最高傑作だと思う。
言葉の選択が素晴らしい。
理解しやすいし、焦点もくっきりと結んでいる。
イメージとしては定番のものばかりかもしれないが、
それを表現する言葉として、ぴったりのものが並んでいると感じられる。

価値観の選択として、源氏物語もこの路線だし、その後の多くの日本の文学もこの路線だと思う。
中国の一流の政治家や文人の趣味から言えば、裏文化だし二流に過ぎないものともいえるだろう。
とはいうものの、これもまたブンガクの本流だという感じもする。

傾城が存在したとしても、実際の恋愛はこんな風にはならないはずで、
ただふわふわした感情を軽い言葉で連ねただけということは理解もできる。
しかしそれでいいではないか。
実際の男女の困った関係の、手前にある、きれいでうっとりする部分を
拡大して見せている。
ただ言葉にうっとりして、その延長として、空想的な恋愛にうっとりして、
それで終わりだ。それでいいではないかと思う。
それ以上の何があるというのだろう。

少年少女の頃の恋愛と文学へのあこがれ。それはそれで本物の価値ではないか。
それ以上に美しいものが他にどれだけあるだろうか。


白文書き下し文訳文
漢皇重色思傾国漢皇色を重んじて傾国けいこくを思ふ漢の皇帝は女色を重視し絶世美女を望んでいた
御宇多年求不得ぎょ多年求むれども得ず天下統治の間長年に渡り求めていたが得られなかった
楊家有女初長成楊家ようかむすめ有り初めて長成し楊家にようやく一人前になる娘がいた
養在深閨人未識養はれて深閨しんけいに在り人未だらず深窓の令嬢として育てられ、誰にも知られていない
天生麗質難自棄天生の麗質自ら棄て難く生まれつきの美しさは埋もれることはなく
一朝選在君王側一朝選ばれて君王のかたわらに在りある日選ばれて、王のそばに上がった
迴眸一笑百媚生ひとみめぐらして一笑すれば百媚ひゃくび生じ視線を巡らせて微笑めば、そのあでやかさは限りない
六宮粉黛無顔色六宮りくきゅう粉黛ふんたい顔色がんしょく無し宮中の奥御殿にいる女官たちは色あせて見えた
春寒賜浴華清池春寒うしてよくを賜ふ華清かせい(彼女は)春まだ寒い頃、華清池の温泉を賜った
温泉水滑洗凝脂温泉水滑らかにして凝脂ぎょうしを洗ふ温泉の水は滑らかで、きめ細かな白い肌を洗う
侍児扶起嬌無力侍児しじたすけ起こせばきょうとして力無し侍女が助け起こすと、なまめかしく力がない
始是新承恩沢時始めて是れ新たに恩沢おんたくくる時こうして初めて皇帝の寵愛を受けたのである
雲鬢花顔金歩揺雲鬢花顔金歩揺うんびんかがんきんぽよう雲のように柔らかな髪、花のような顔、歩くと揺れる黄金や珠玉で作られたかんざし
芙蓉帳暖度春宵芙蓉のとばり暖かにして春宵しゅんしょうわた芙蓉の花を縫い込めた寝台の帳は暖かく、春の宵を過ごす
春宵苦短日高起春宵はなはだ短く日高うして起く春の宵は短い事に悩み、日が高くなってから起き上がる
従此君王不早朝此れり君王早朝せずこの時から王は早朝の政務をやめてしまった
承歓侍宴無閑暇歓をけ宴にして閑暇かんか無く皇帝の心にかない、宴では傍らに侍り暇がない
春従春遊夜専夜春は春遊に従い夜は夜を専らにす春には春の遊びに従い、夜は皇帝のお側を独占する
後宮佳麗三千人後宮の佳麗三千人後宮には三千人の美女がいるが
三千寵愛在一身三千の寵愛一身に在り三千人分の寵愛を一身に受けている
金屋粧成嬌侍夜金屋きんおくよそおい成ってきょうとして夜に侍し黄金の御殿で化粧をすまし、艶かしく夜をともにする
玉楼宴罷酔和春玉楼宴んで酔うて春に和す玉楼での宴がやむと、春のような気分に酔う
姉妹弟兄皆列土姉妹弟兄しまいていけい皆土をつら妃の姉妹兄弟はみな諸侯となり
可憐光彩生門戸あわれし光彩門戸に生ずるをうらやましくも、一門は美しく輝く
遂令天下父母心遂に天下の父母の心をしてついには天下の親たちの心も
不重生男重生女男を生むを重んぜず女を生むを重んぜしむ男児より女児の誕生を喜ぶようになった
驪宮高処入青雲驪宮りきゅう高き青雲に入り驪山華清宮は雲に隠れる程高く
仙楽風飄処処聞仙楽せんがく風にひるがえりてしょ々に聞こゆこの世の物とも思えぬ美しい音楽が風に飄りあちこちから聞こえる
緩歌慢舞凝糸竹緩歌慢舞かんかまんぶ糸竹しちくらしのどやかな調べ、緩やかな舞姿、楽器の音色も美しく
尽日君王看不足尽日じんじつ君王看れども足らず皇帝は終日見ても飽きることがないそのときに
漁陽鞞鼓動地来漁陽ぎょよう鞞鼓へいこ地を動かして来たり漁陽の進軍太鼓が地を揺るがして迫り
驚破霓裳羽衣曲驚破きょうは霓裳羽衣げいしょうういの曲霓裳羽衣の曲で楽しむ日々を驚かす
九重城闕煙塵生九重きゅうちょう城闕じょうけつ煙塵生じ宮殿の門には煙と粉塵が立ち上り
千乗万騎西南行千乗万騎西南に行く兵車や兵馬の大軍は西南を目指す
翠華揺揺行復止翠華すいか揺々として行きてた止まりカワセミの羽を飾った皇帝の御旗は、ゆらゆらと進んでは止まる
西出都門百余里西のかた都門を出ずること百余里都の門を出て西に百余里
六軍不発無奈何六軍発せず奈何いかんともする無く軍隊は進まず、どうにもできない
宛転蛾眉馬前死宛転たる蛾眉がび馬前に死す美しい眉の美女は、馬の前で命を失った
花鈿委地無人収花鈿かでん地に委して人の収むる無し螺鈿細工のかんざしは地面に落ちたままで、拾い上げる人はいない
翠翹金雀玉搔頭翠翹すいぎょう金雀きんじゃく玉搔頭ぎょくそうとうカワセミの羽の髪飾りも、孔雀の形をした黄金のかんざしも、地に落ちたまま
君王掩面救不得君王面をおほひて救ひ得ず君王は顔を覆うばかりで、救うこともできない
迴看血涙相和流かえり看て血涙相和して流る振り返っては、血の涙を流した
黄埃散漫風蕭索黄埃こうあい散漫さんまんかぜ蕭索しょうさく土埃が舞い、風は物寂しく吹き付る
雲桟縈紆登剣閣雲桟縈紆うんさんえいう剣閣けんかくに登る雲が係る程の高い架け橋は、畝々と曲り畝り、剣閣山を登っていく
峨眉山下少人行峨眉山下がびさんげ人の行くことまれ峨眉山のふもとは、道行く人も少ない
旌旗無光日色薄旌旗せいき光無く日色薄し皇帝の所在を示す旌旗は輝きを失い、日の光も弱々しい
蜀江水碧蜀山青蜀江しょくこうの水はみどりにして蜀山しょくざんは青く蜀江の水は深い緑色で満ち、蜀の山は青々と茂るも
聖主朝朝暮暮情聖主せいしゅちょう々の情皇帝は朝も日暮れも(彼女を)思い続ける
行宮見月傷心色行宮あんぐうに月を見れば傷心の色仮の宮殿で月を見れば心が痛み
夜雨聞鈴腸断声夜雨やうに鈴を聞けば腸断ちょうだんの声雨の夜に鈴の音を聞けば断腸の思い
天旋日転迴竜馭めぐり日転じて竜馭りゅうぎょめぐらし天下の情勢が大きく変わり、皇帝の御車はへと向かう
到此躊躇不能去此に到りて躊躇ちゅうちょして去るあたはずここに到って、心を痛め去ることができない
馬嵬坡下泥土中馬嵬坡下ばかいはか泥土でいどうち馬嵬の土手の下、泥の中に
不見玉顔空死処玉顔を見ずむなしく死せるところ玉のような美しい顔を見ることはない 空しく死んだところ
君臣相顧尽霑衣君臣あいかえりみてことごところもうるほす君臣互いに見合い、旅の衣を涙で湿らす
東望都門信馬帰東のかた都門を望み馬にまかせて帰る東に都の門を望みながら、馬に任せて帰っていく
帰来池苑皆依旧帰り来たれば池苑ちえん皆旧に帰って来ると、池も庭も皆もとのまま
太液芙蓉未央柳太液たいえきの芙蓉未央びおうの柳太液池の芙蓉、未央宮の柳
芙蓉如面柳如眉芙蓉は面のごとく柳は眉のごと芙蓉は(彼女の)顔のよう、柳は眉のよう
対此如何不涙垂此に対して如何いかんぞ涙の垂れざらんこれを見て、どうして涙をながさずにおられようか
春風桃李花開夜春風桃李花開く夜春の風に桃や李の花が開く夜
秋雨梧桐葉落時秋雨梧桐ごどう葉落つる時秋の雨に梧桐(あおぎり)の葉が落ちる時
西宮南苑多秋草西宮南苑秋草しゅうそう多く西の宮殿や南の庭園には、秋草が茂り
宮葉満階紅不掃宮葉階に満ちて紅はらはず落葉が階を赤く染めても掃く人はいない
梨園弟子白髪新梨園の弟子ていし白髪新たに梨園(玄宗が養成した歌舞団)の弟子たちも、白髪が目立ち
椒房阿監青娥老椒房しょうぼう阿監あかん青娥せいが老いたり椒房(皇后の居室)の阿監(宮女を取り締まる女官)も、その美しい容貌は老いてしまった
夕殿蛍飛思悄然夕殿蛍飛んで思ひ悄然しょうぜん夕方の宮殿に蛍が飛んで、物思いは憂い悲しく
孤灯挑尽未成眠孤灯かかげ尽くすも未だ眠りを成さずひとつの明かりをともし尽くしてもまだ眠れない
遅遅鐘鼓初長夜遅々たる鐘鼓しょうこ初めて長き夜時を告げる鐘と太鼓を聞くにつけ、夜の過ぎるのが初めて長く感じられる
耿耿星河欲曙天こう々たる星河けんと欲するの天天の川の輝きはかすかとなり、空が明けようとしている
鴛鴦瓦冷霜華重鴛鴦えんおうの瓦冷ややかにして霜華そうか重く鴛鴦の瓦は冷ややかで、霜が重なり
翡翠衾寒誰与共翡翠ひすいふすま寒くして誰と与共ともにせん翡翠の衾は寒々しく、いっしょに寝る人はいない
悠悠生死別経年ゆう々たる生死別れて年を経たり(楊貴妃と)生死を分かって幾年月
魂魄不曾来入夢魂魄こんぱくかつて来たりて夢にも入らず(楊貴妃の)魂は夢にも出て来ない
臨邛道士鴻都客臨邛りんきょうの道士鴻都こうとの客(このとき)臨邛道士長安を訪れていた
能以精誠致魂魄能く精誠を以て魂魄こんぱくを致す真心を込めた念力で、魂を招き寄せられるという
為感君王展転思君王展転の思ひに感ずるが為に眠れなく何度も寝返りを打つほどの君王の思慕の情を思い
遂教方士殷勤覓遂に方士をして殷勤いんぎんもと方士に(楊貴妃を)懇ろに探し求めさせた
排空馭気奔如電空を排し気をぎょしてはしることいなづまごと大空を押し分け、大気に乗り、雷のごとく走りめぐる
昇天入地求之遍天に昇り地に入りて之を求むることあまね天に昇り、地に入って、くまなく探し求める
上窮碧落下黄泉上は碧落へきらくを窮めしも黄泉こうせん上は青空を極め、下は地の底まで探したが
両処茫茫皆不見両処ぼう々として皆見へずどちらも広々としているだけで、姿は見あたらない
忽聞海上有仙山たちまち聞く海上に仙山有りと俄に聞いた所によると、海上に仙山があるという
山在虚無縹緲間山は虚無縹緲きょむひょうびょうの間に在りその山は何物も存在しない遠く微かな当りにあった
楼閣玲瓏五雲起楼閣玲瓏ろうかくれいろうとして五雲起こり楼閣は透き通るように美しく、五色の雲が湧き上がっている
其中綽約多仙子其のうち綽約しゃくやくとして仙子多しその中に若く美しい仙女がたくさんいた
中有一人字太真中に一人有りあざな太真たいしん其内の一人に、太真という女性がいた
雪膚花貌参差是雪膚花貌せっぷかぼう参差しんしとして是れなり雪のような膚、花のような容貌、楊貴妃に殆どそっくりである
金闕西廂叩玉扃金闕きんけつ西廂せいしょう玉扃ぎょくけいを叩き黄金造りの御殿の西側の建物を訪れ、玉で飾られた扉を叩き
転教小玉報双成転じて小玉をして双成に報ぜ小玉に頼んで(楊貴妃の腰元である)双成に(自分が来たことを)伝えてもらう
聞道漢家天子使聞くならく漢家天子の使ひなりと聞けば、漢の天子の使いであるという
九華帳裏夢魂驚九華きゅうか帳裏ちょうり夢魂むこん驚く華麗な刺繍の帳の中で、夢を見ている魂は驚き目覚める
攬衣推枕起徘徊衣をり枕を推してちて徘徊はいかい衣装を纏い、枕を推しやって、起き出してさまよい歩く
珠箔銀屏邐迤開珠箔しゅはく銀屏ぎんぺい邐迤りいとして開く真珠の簾や銀の屏風が、次々と開かれていく
雲鬢半偏新睡覚雲鬢うんびん半ば偏りて新たにねむりより覚め雲のような鬢の毛はなかば偏って、目覚めたばかりの様子
花冠不整下堂来花冠整へず堂を下り来たる花の冠も整えないまま、堂を降りて来た
風吹仙袂飄颻挙風は仙袂せんべいを吹ひて飄颻ひょうようとして挙がり風が吹き、仙女の袂はひろひらと舞い上がる
猶似霓裳羽衣舞霓裳げいしょう羽衣の舞に似たりまるで霓裳羽衣の舞のよう
玉容寂寞涙闌干玉容寂寞ぎょくようせきばくとして涙闌干らんかん玉のような容貌はさびしげで、涙がはらはらとこぼれる
梨花一枝春帯雨梨花一枝りかいっし春雨はるあめを帯ぶ一枝の梨の花が春の雨に打たれるよう
含情凝睇謝君王情を含みひとみを凝らして君王に謝す想いを込めてじっと見つめ、君王に謝辞を述べる
一別音容両渺茫一別いちべつ音容おんようふたつながら渺茫びょうぼうたりお別れ以来、声も姿もともにはるかに遠ざかり
昭陽殿裏恩愛絶昭陽殿裏しょうようでんり恩愛おんあい絶え昭陽殿での寵愛も絶え
蓬萊宮中日月長蓬萊ほうらい宮中日月じつげつ長し蓬萊宮の中で過ごした月日が長くなった
迴頭下望人寰処こうべめぐらしてしも人寰じんかんところを望めば頭をめぐらせ、はるか人間界を望めば
不見長安見塵霧長安を見ずして塵霧じんむを見る長安は見えず、塵や霧が広がっている
唯将旧物表深情唯だ旧物をもって深情を表さんと思い出の品で、ただ深い情を示したいと
鈿合金釵寄将去鈿合金釵でんごうきんさい寄せち去らしむ螺鈿細工の小箱と黄金の簪を、預け持って行かせる
釵留一股合一扇さい一股いっことどごう一扇いっせん簪の片方の脚と、小箱の(蓋か本体の)一方を残す
釵擘黄金合分鈿釵は黄金をき合は鈿を分かつかんざしは黄金を裂き、小箱は螺鈿を分かつ
但令心似金鈿堅但だ心をして金鈿の堅きに似せ金や螺鈿のように心を堅くさせれば
天上人間会相見天上人間てんじょうじんかんかならず相まみえんと天上と人間界に別れたふたりも、必ず会うことができるでしょう
臨別殷勤重寄詞別れに臨んで殷勤いんぎんに重ねてことばを寄す別れにあたっては、丁寧に重ねて言葉を送る
詞中有誓両心知詞中しちゅうに誓ひ有り両心のみ知る言葉の中にふたり(皇帝と楊貴妃)だけに分かる言葉があった
七月七日長生殿七月七日長生殿ちょうせいでん七月七日、長生殿
夜半無人私語時夜半やはん人無く私語の時誰もいない夜中、親しく語った時(の言葉である)
在天願作比翼鳥天に在りては願はくは比翼ひよくの鳥と天にあっては、願わくは比翼の鳥となり
在地願為連理枝地に在りては願はくは連理れんりの枝とらんと地にあっては、願わくは連理の枝となりたい
天長地久有時尽天は長く地は久しきも時有りて尽くとも天地はいつまでも変わらないが、いつかは尽きる時がある
此恨綿綿無絶期此の恨み綿めん々として絶ゆるのとき無からんしかしこの悲しみは綿々と、いつまでも絶えることがないだろう

 長 cháng 恨 hèn 歌 ちょうごん
 漢 hàn 皇 huáng 重 zhòng 色  思  傾 qīng 国 guó漢皇かんこういろおもんじて傾国けいこくおも
 御  宇  多 duō 年 nián 求 qiú 不  得 御宇ぎょうねんもとむれども
 楊 yáng 家 jiā 有 yǒu 女  初 chū 長 zhǎng 成 chéngようむすめはじめて長成ちょうせい
 養 yǎng 在 zài 深 shēn 閨 guī 人 rén 未 wèi 識 shíやしなわれて深閨しんけいればひといまらず
 天 tiān 生 shēng 麗  質 zhì 難 nán 自  棄 天生てんせい麗質れいしつおのずかがた
 一  朝 zhāo 選 xuǎn 在 zài 君 jūn 王 wáng 側 一朝いっちょうえらばれて君王くんのうかたわら
迴 huí 眸 móu 一  笑 xiào 百 bǎi 媚 mèi 生 shēngひとみめぐらしてひとたびわらえばひゃくこびしょう
 六 liù 宮 gōng 粉 fěn 黛 dài 無  顔 yán 色 六宮りっきゅう粉黛ふんたい顔色がんしょく
 春 chūn 寒 hán 賜  浴  華 huá 清 qīng 池 chí春寒はるさむくしてよくたまわるせいいけ
 温 wēn 泉 quán 水 shuǐ 滑 huá 洗  凝 níng 脂 zhī温泉おんせんみずなめらかにして凝脂ぎょうしあら
 侍 shì 児 ér 扶  起  嬌 jiāo 無  力 侍児じじたすこすもきょうとしてちから
 始 shǐ 是 shì 新 xīn 承 chéng 恩 ēn 澤  時 shíはじめてあらたに恩沢おんたくけしときなり
 雲 yún 鬢 bìn 花 huā 顔 yán 金 jīn 歩  揺 yáo雲鬢うんびんがんきんよう
 芙  蓉 róng 帳 zhàng 暖 nuǎn 度  春 chūn 宵 xiāoようとばりあたたかくして春宵しゅんしょうわた
 春 chūn 宵 xiāo 苦  短 duǎn 日  高 gāo 起 春宵しゅんしょうはなはみじかくてたかくして
 従 cóng 此  君 jūn 王 wáng 不  早 zǎo 朝 cháo君王くんのう早朝そうちょうせず
 承 chéng 歓 huān 侍 shì 宴 yàn 無  閑 xián 暇 xiáかんえんしてかん
 春 chūn 従 cóng 春 chūn 遊 yóu 夜  専 zhuān 夜 はるはるあそびにしたがよるよるもっぱらにす
 後 hòu 宮 gōng 佳 jiā 麗  三 sān 千 qiān 人 rén後宮こうきゅうれい三千人さんぜんにん
 三 sān 千 qiān 寵 chǒng 愛 ài 在 zài 一  身 shēn三千さんぜん寵愛ちょうあい一身いっしん
 金 jīn 屋  粧 zhuāng 成 chéng 嬌 jiāo 侍 shì 夜 きんおくよそおりてきょうとしてよる
 玉  楼 lóu 宴 yàn 罷  酔 zuì 和  春 chūn玉楼ぎょくろうえんみてひてはる
 姉  妹 mèi 弟  兄 xiōng 皆 jiē 列 liè 土 姉妹しまい弟兄ていけいれっ
 可  憐 lián 光 guāng 彩 cǎi 生 shēng 門 mén 戸 あわれ光彩こうさいもんしょう
 遂 suì 令 lìng 天 tiān 下 xià 父  母  心 xīnついてん父母ふぼこころをして
 不  重 zhòng 生 shēng 男 nán 重 zhòng 生 shēng 女 おとこむをおもんぜずおんなむをおもんぜしむ

娥眉馬前に死す

 驪  宮 gōng 高 gāo 処 chù 入  青 qīng 雲 yún驪宮りきゅうたかところ青雲せいうん
 仙 xiān 楽 yuè 風 fēng 飄 piāo 処 chù 処 chù 聞 wén仙楽せんがくかぜひるがえりて処処しょしょこゆ
 緩 huǎn 歌  慢 màn 舞  凝 níng 糸  竹 zhúかんまんちくらし
 尽 jìn 日  君 jūn 王 wáng 看 kàn 不  足 尽日じんじつ君王くんのうれどもりず
 漁  陽 yáng 鼙  鼓  動 dòng 地  来 lái漁陽ぎょようへいうごかしてたり
 驚 jīng 破  霓  裳 cháng 羽  衣  曲 驚破きょうは霓裳げいしょう羽衣ういきょく
 九 jiǔ 重 chóng 城 chéng 闕 què 煙 yān 塵 chén 生 shēng九重きゅうちょう城闕じょうけつ煙塵えんじんしょう
 千 qiān 乗 shèng 万 wàn 騎  西  南 nán 行 xíng千乗せんじょうばん西南せいなん
 翠 cuì 華 huá 揺 yáo 揺 yáo 行 xíng 復  止 zhǐすい揺揺ようようとしてきてまる
 西  出 chū 都  門 mén 百 bǎi 余  里 西にしのかたもんでてひゃく余里より
 六 liù 軍 jūn 不  発  無  奈 nài 何 六軍りくぐんはっせず奈何いかんともする
 宛 wǎn 転 zhuǎn 娥 é 眉 méi 馬  前 qián 死 宛転えんてんたる娥眉がびぜん
 花 huā 鈿 diàn 委 wěi 地  無  人 rén 收 shōuでんゆだねられてひとおさむる
 翠 cuì 翹 qiào 金 jīn 雀 què 玉  搔 sāo 頭 tóu翠翹すいぎょう金雀きんじゃく玉搔頭ぎょくそうとう
 君 jūn 王 wáng 掩 yǎn 面 miàn 救 jiù 不  得 君王くんのうめんおおいてすく
 迴 huí 看 kàn 血 xuè 涙 lèi 相 xiāng 和  流 liúかえれば血涙けつるいしてなが
 黄 huáng 埃 āi 散 sǎn 漫 màn 風 fēng 蕭 xiāo 索 suǒ黄埃こうあい散漫さんまんとしてかぜ蕭索しょうさくたり
 雲 yún 桟 zhàn 縈 yíng 紆  登 dēng 剣 jiàn 閣 雲桟うんさんえいして剣閣けんかくのぼ
 峨 é 嵋 méi 山 shān 下 xià 少 shǎo 人 rén 行 xíng峨嵋がびさんひとくことすくなく
 旌 jīng 旗  無  光 guāng 日  色  薄 せいひかり日色にっしょくうす
 蜀 shǔ 江 jiāng 水 shuǐ 碧  蜀 shǔ 山 shān 青 qīng蜀江しょくこうみずみどりにして蜀山しょくざんあお
 聖 shèng 主 zhǔ 朝 zhāo 朝 zhāo 暮  暮  情 qíng聖主せいしゅ朝朝ちょうちょう暮暮ぼぼじょう
 行 xíng 宮 gōng 見 jiàn 月 yuè 傷 shāng 心 xīn 色 行宮あんぐうつきれば傷心しょうしんいろ
 夜  雨  聞 wén 鈴 líng 腸 cháng 断 duàn 声 shēng夜雨やうすずけばちょうたれるこえ

太液芙蓉、未央柳

 天 tiān 旋 xuán 地  転 zhuàn 迴 huí 龍 lóng 馭 てんめぐてんじて龍馭りゅうぎょめぐらし
 到 dào 此  躊 chóu 躇 chú 不  能 néng 去 ここいたりて躊躇ちゅうちょしてることあたわず
 馬  嵬 wéi 坡  下 xià 泥  土  中 zhōngかいもとでいなか
 不  見 jiàn 玉  顔 yán 空 kōng 死  処 chù玉顔ぎょくがんむなしくせるところ
 君 jūn 臣 chén 相 xiāng 顧  尽 jìn 霑 zhān 衣 君臣くんしんかえりみてことごところもうるお
 東 dōng 望 wàng 都  門 mén 信 xìn 馬  帰 guīひがしのかたもんのぞみてうままかせてかえ
 帰 guī 来 lái 池 chí 苑 yuàn 皆 jiē 依  旧 jiùかえたればえんきゅう
 太 tài 液  芙  蓉 róng 未 wèi 央 yāng 柳 liǔたいえきようおうやなぎ
 芙  蓉 róng 如  面 miàn 柳 liǔ 如  眉 méiようめんごとやなぎまゆごと
 対 duì 此  如  何  不  涙 lèi 垂 chuíれにたいして如何いかんなみだれざらん
 春 chūn 風 fēng 桃 táo 李  花 huā 開 kāi 日 春風しゅんぷうとう花開はなひら
 秋 qiū 雨  梧  桐 tóng 叶  落 luò 時 shí秋雨しゅううどうつるとき
 西  宮 gōng 南 nán 苑 yuàn 多 duō 秋 qiū 草 cǎo西宮せいきゅう南苑なんえん秋草しゅうそうおお
 落 luò 叶  満 mǎn 階 jiē 紅 hóng 不  掃 sǎo落葉らくようきざはしちてくれないはらわず
 梨  園 yuán 弟  子  白 bái 髪  新 xīnえんてい白髪はくはつあらたに
 椒 jiāo 房 fáng 阿 ā 監 jiān 青 qīng 娥 é 老 lǎo椒房しゅうぼうらんせい
 夕  殿 diàn 蛍 yíng 飛 fēi 思  悄 qiǎo 然 ránせき殿でんほたるびておもしょうぜんたり
 孤  灯 dēng 挑 tiǎo 尽 jìn 未 wèi 成 chéng 眠 miánとうかかつくすもいまねむりをさず
 遅 chí 遅 chí 鐘 zhōng 鼓  初 chū 長 cháng 夜 遅遅ちちたるしょうはじめてながよる
 耿 gěng 耿 gěng 星 xīng 河  欲  曙 shǔ 天 tiān耿耿こうこうたるせいけんとほっするてん
 鴛 yuān 鴦 yāng 瓦  冷 lěng 霜 shuāng 華 huá 重 zhòng鴛鴦えんおうがわらややかにしてそうおも
 翡 fěi 翠 cuì 衾 qīn 寒 hán 誰 shuí 与  共 gòngすいしとねさむくしてたれとかともにせん
 悠 yōu 悠 yōu 生 shēng 死  別 bié 経 jīng 年 nián悠悠ゆうゆうたるせいわかれてとしたり
 魂 hún 魄  不  曾 céng 来 lái 入  夢 mèng魂魄こんぱくかつたりてゆめらず
 臨 lín 邛 qióng 道 dào 士 shì 鴻 hóng 都  客 臨邛りんきょうどうこうかく
 能 néng 以  精 jīng 誠 chéng 致 zhì 魂 hún 魄 せいせいもっ魂魄こんぱくいた
 為 wèi 感 gǎn 君 jūn 王 wáng 展 zhǎn 転 zhuǎn 思 君王くんのう展転てんてんおもいにかんずるがため
 遂 suì 教 jiào 方 fāng 士 shì 殷 yīn 勤 qín 覓 ついほうをしていんぎんもとめしむ
 排 pái 空 kōng 馭  気  奔 bēn 如  電 diànくうはいぎょしてはしることいなずまごと
 昇 shēng 天 tiān 入  地  求 qiú 之 zhī 遍 biànてんのぼりてこれもとむることあまね
 上 shàng 窮 qióng 碧  落 luò 下 xià 黄 huáng 泉 quánうえ碧落へきらくきわした黄泉こうせん
 両 liǎng 処 chù 茫 máng 茫 máng 皆 jiē 不  見 jiàn両処りょうしょ茫茫ぼうぼうとしてえず

此恨綿綿無絶期

 忽  聞 wén 海 hǎi 上 shàng 有 yǒu 仙 xiān 山 shānたちま海上かいじょう仙山せんざんりと
 山 shān 在 zài 虚  無  縹 piāo 緲 miǎo 間 jiānやまきょ縹緲ひょうびょうかん
 楼 lóu 閣  玲 líng 瓏 lóng 五  雲 yún 起 楼閣ろうかく玲瓏れいろうとしてうんこり
 其  中 zhōng 綽 chuò 約 yuē 多 duō 仙 xiān 子 なか綽約しゃくやくとしてせんおお
 中 zhōng 有 yǒu 一  人 rén 字  太 tài 真 zhēnなか一人ひとりあざな太真たいしん
 雪 xuě 膚  花 huā 貌 mào 参 cēn 差  是 shìゆきはだはなかんばせしんとしてれなり
 金 jīn 闕 què 西  廂 xiāng 叩 kòu 玉  扃 jiōng金闕きんけつ西廂せいしょう玉扃ぎょっけいたた
 転 zhuǎn 教 jiào 小 xiǎo 玉  報 bào 双 shuāng 成 chéngてんじて小玉しょうぎょくをして双成そうせいほうぜしむ
 聞 wén 道 dào 漢 hàn 家 jiā 天 tiān 子  使 shǐ聞道きくならかんてん使つかいと
 九 jiǔ 華 huá 帳 zhàng 裏  夢 mèng 魂 hún 驚 jīng九華きゅうか帳裏ちょうりこんおどろ
 攬 lǎn 衣  推 tuī 枕 zhěn 起  徘 pái 徊 huáiころもまくらちて徘徊はいかい
 珠 zhū 箔  銀 yín 屏 píng 邐  迤  開 kāi珠箔しゅはく銀屛ぎんぺい邐迤りいとしてひら
 雲 yún 鬢 bìn 半 bàn 偏 piān 新 xīn 睡 shuì 覚 juéうんびんなかくたれてあらたにねむ
 花 huā 冠 guān 不  整 zhěng 下 xià 堂 táng 来 láiかんととのえずどうりてたる
 風 fēng 吹 chuī 仙 xiān 袂 mèi 飄 piāo 颻 yáo 挙 かぜせんべいきて飄颻ひょうようとしてがる
 猶 yóu 似  霓  裳 cháng 羽  衣  舞 たりげいしょう羽衣ういまい
 玉  容 róng 寂  寞  涙 lèi 闌 lán 干 gānぎょくよう寂寞せきばくとしてなみだらんかんたり
 梨  花 huā 一  枝 zhī 春 chūn 帯 dài 雨 梨花りか一枝いっし春雨はるあめ
 含 hán 情 qíng 凝 níng 睇  謝 xiè 君 jūn 王 wángじょうふくみひとみらして君王くんのうしゃ
 一  別 bié 音 yīn 容 róng 両 liǎng 眇 miǎo 茫 mángひとたびわかれしより音容おんようふたつながら眇茫びょうぼうたり
 昭 zhāo 陽 yáng 殿 diàn 裏  恩 ēn 愛 ài 絶 juéしょうよう殿でん恩愛おんあい
 蓬 péng 萊 lái 宮 gōng 中 zhōng 日  月 yuè 長 cháng蓬萊ほうらい宮中きゅうちゅう日月じつげつなが
 迴 huí 頭 tóu 下 xià 望 wàng 人 rén 寰 huán 処 chùこうべめぐらして人寰じんかんところしたのぞめば
 不  見 jiàn 長 cháng 安 ān 見 jiàn 塵 chén 霧 長安ちょうあんえずじん
 唯 wéi 将 jiāng 旧 jiù 物  表 biǎo 深 shēn 情 qíng旧物きゅうぶつもっ深情しんじょうあらわさん
 鈿 diàn 合  金 jīn 釵 chāi 寄  将 jiāng 去 鈿合でんごう金釵きんさいらしむ
 釵 chāi 留 liú 一  股  合  一  扇 shànさいいっとどめてごういっせん
 釵 chāi 擘  黄 huáng 金 jīn 合  分 fēn 鈿 diànさい黄金おうごんごうでんかつ
 但 dàn 教 jiào 心 xīn 似  金 jīn 鈿 diàn 堅 jiānこころをして金鈿きんでんかたきにせしむれば
 天 tiān 上 shàng 人 rén 間 jiān 会 huì 相 xiāng 見 jiàn天上てんじょう人間じんかんかならまみえんと
 臨 lín 別 bié 殷 yīn 勤 qín 重 chóng 寄  詞 わかれにのぞんでいんぎんかさねてことば
 詞  中 zhōng 有 yǒu 誓 shì 両 liǎng 心 xīn 知 zhīことばなかちか両心りょうしんのみ
 七  月 yuè 七  日  長 cháng 生 shēng 殿 diàn七月しちがつ七日なのか長生ちょうせい殿でん
 夜  半 bàn 無  人 rén 私  語  時 shíはんひと私語しごとき
 在 zài 天 tiān 願 yuàn 作 zuò 比  翼  鳥 niǎoてんりてはねがわくはよくとり
 在 zài 地  願 yuàn 為 wéi 連 lián 理  枝 zhīりてはねがわくはれんえだらんと
 天 tiān 長 cháng 地  久 jiǔ 有 yǒu 時 shí 尽 jìnてんながひさしきもときりてきん
 此  恨 hèn 綿 mián 綿 mián 無  絶 jué 期 うら綿綿めんめんとしてえるからん

書き下し分で読むのであるが、これにも個人的なこだわりがあり、
自分の好きな書き下し以外は認められない。
それは妥協できない。
上の書き下し文にも不満がある。
意味が通じればいいなんてものは文学ではない。

ところが、白居易は古代中国語で書いたのであって、
勿論、日本での書き下し文などを想定してはいない
それなのに、書き下し分で親しんでおいて、何がブンガクかということになるが、
私の場合は、自分の読んでいた書き下し文のリズム以外に長恨歌はないのである。
特殊な文学受容であり、ねじ曲がった態度であると思うのだが、
私の場合はそれでいいのだから仕方がない。
誰にも迷惑かけていないわけだし、と援交の場合みたいなことを言う。

そして 七月七日長生殿 なのである。

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