学業や仕事の場で、途中からついていけなくなる人がいる。
原因として、次の二点を考えたい。
第一に、これは単に能力の問題ではなく、社会構造の変化が関係しているのではないかという点である。
たいていは適性を見て採用や進学がなされるが、IT化や生産性向上の圧力の中で、業務内容が急速に変化している。
その変化の速さに、一定数の人が適応しきれないのである。
かつては、同じ職場にさまざまな役割があり、人それぞれの得意を生かす余地があった。
しかし現在は、効率化の名のもとに余裕が削られ、適応できない人を包み込む仕組みが弱まっている。
戦後の高度成長期のように、社会全体に「余剰」があった時代には、さまざまな人を抱え込むことができたのかもしれない。
いまは全体のパイが縮み、競争が強まる中で、社会の包容力そのものが失われつつあるように思われる。
第二に、個人の中で、高齢期以前に高次脳機能の低下を示すような病態が存在するのではないかという点である。
その一部は「大人の神経発達障害」や「大人のADHD」と呼ばれているが、それだけでは説明できないケースもあるように思う。
この領域の理解はまだ発展途上であり、社会的適応の問題を単に「努力不足」や「能力差」として片づけずに、医学的・心理的な側面からも検討する必要があるだろう。
就職後、何年か経過して、能力水準が低下する人たちが一部いて、原因がよく分からない、というのが現状だと思う。その一部は、適応不全となり、自律神経症状や抑うつ、不安などを呈する。
その場合は、能力水準低下を手当てしないと本質的な治療にならないと感じている。
