日本臨床におけるハビトゥスの症例類型


日本臨床におけるハビトゥスの症例類型


症例A:医師

「正しさ」に守られてきた身体

背景(形成されたハビトゥス)

  • 医師家庭 or 進学校
  • 幼少期から
    • 正解がある
    • 努力は報われる
    • 権威は信頼できる
  • 医療という
    • 正統文化
    • 国家資格
    • 象徴資本の塊

👉
「私は正しくあればよい」ハビトゥス


破綻の契機

  • クレーム医療
  • 訴訟リスク
  • 患者の「納得しない」語り
  • 管理医療・数値化・KPI

👉
正しさが通用しない場への投げ込み


症状

  • 抑うつ(特に罪悪感より「空虚感」)
  • イライラ・冷笑
  • 「患者が幼稚に見える」
  • 共感疲労

臨床的読み

これは:

  • 共感性欠如ではない
  • 性格の問題でもない

👉
医師ハビトゥスと医療現場の場(フィールド)の乖離


介入の視点

  • 「正しさ」を捨てさせない
  • ただし
    • 正しさが防衛になっていたことを言語化
  • 「正しさ以外の位置取り」を試せる安全圏を作る

症例B:教師

「ちゃんとした大人」であろうとする身体


背景

  • 地方中流
  • 教員家庭 or 優等生
  • 学校=世界の縮図

👉
規範の媒介者としてのハビトゥス


破綻の契機

  • 保護者対応
  • 発達特性の多様化
  • 管理職からの圧力
  • 「正しさ」が暴力になる瞬間

症状

  • 不眠
  • 強迫的反省
  • 「自分が間違っているのでは」という過剰自責
  • 休職

臨床的読み

教師は:

  • 超自我を外在化する職業
  • しかし日本では
    • 超自我を「自分の人格」に引き受ける

👉
社会的超自我=自己超自我化


介入

  • 問題を「力量」に還元しない
  • 教師という役割が
    • 過剰な超自我を背負わされている
      ことを明示
  • 「よい教師であること」と「生き延びること」を分離

症例C:地方出身者(都市移動)

「居心地の悪さ」を言葉にできない身体


背景

  • 地方の濃密な人間関係
  • 暗黙の了解
  • 空気・年功・沈黙

👉
関係優位型ハビトゥス


都市での体験

  • 自由だが冷たい
  • 正解がない
  • 自分から出ないと関係が生まれない

症状

  • 社交不安
  • 「自分が薄い感じ」
  • 無意味感
  • 過剰適応 or 引きこもり

臨床的読み

  • 適応不全ではない
  • 能力不足でもない

👉
「場」が変わったのに、身体が追いついていない


介入

  • 「慣れれば大丈夫」を言わない
  • 地方ハビトゥスが
    • どれほど合理的で
    • どれほど守ってくれたか
      を丁寧に回収
  • 都市的ハビトゥスを「学習対象」として扱う

まとめ(症例横断)

共通して起きているのは:

  • 病理 ≠ 個人の欠陥
  • 病理 =
    ハビトゥスと場の関係が破綻したときの悲鳴

臨床家への一文

ブルデューを知ると、
クライエントにこう言えるようになります。

「あなたの感じ方は、
ある世界では正しかった」

この一文は、
支持でも否認でもなく、
社会を含んだ再物語化です。


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