1. 前提:マルクス的視点とは何か
マルクスの核心は、道徳批判でも陰謀論でもなく、
「社会の矛盾は、資本の運動法則から生じる」
という冷徹な構造分析です。
- 個人の努力や善意では解決しない
- 問題は「誰が悪いか」ではなく
- 資本が自己増殖する過程で、何が必然的に生じるか
現代日本をこの視点で見ると、
新自由主義・少子化・インフレ・軍国主義・弱者切り捨て・医療費削減は
バラバラの政策失敗ではなく、同一の構造から派生した症状群
として現れます。
2. 新自由主義:資本の論理が国家を内側から占拠する
マルクス的に言えば、新自由主義とは
**「国家が資本の代理人として振る舞う段階」**です。
- 規制緩和
- 労働の非正規化
- 社会保障の削減
- 公共部門の市場化
これは「小さな政府」ではなく、
資本にとって都合の良い政府への再編です。
日本の場合:
- 終身雇用・年功序列 → 労働力の固定化で資本の柔軟性を阻害
- これを「硬直」と呼び、解体
- 労働者は「人間」から「コスト」に変換される
結果、
賃金は抑制され、労働は不安定化し、生活は個人責任化されます。
3. 少子化:再生産コストを家庭に押しつけた結果
マルクスは「労働力の再生産」を重視しました。
労働者は働くだけでなく、
- 食べる
- 休む
- 子どもを育てる
ことで次世代の労働力を生み出します。
日本ではこの再生産が、
- 家庭任せ
- 女性任せ
- 無償労働任せ
にされ続けました。
新自由主義下では、
- 子ども=将来の労働力
- しかし育成コストは社会が負担しない
という構造的搾取が起きます。
その結果、
- 子どもは「愛の対象」から「負債」になる
- 出生は理性的に回避される
少子化は価値観の問題ではなく、
資本主義が再生産を破壊した帰結です。
4. インフレ:賃金を上げずに負担だけを分配する装置
マルクス的に見ると、インフレは中立的現象ではありません。
- 資本は価格に転嫁できる
- 労働者は賃金交渉が弱い
つまりインフレは、
実質賃金を静かに削る装置
として機能します。
日本では、
- 物価上昇
- 賃金停滞
- 社会保障削減
が同時に進み、
労働者は二重三重に圧迫されます。
これは「政策の失敗」ではなく、
資本の利潤率を維持するための調整です。
5. 軍国主義:内部矛盾の外部化
マルクス主義では、軍拡は偶発的選択ではありません。
- 国内で分配が行き詰まる
- 階級矛盾が可視化する
- 不満の矛先を外に向ける
このとき、
- 安全保障
- 国威
- 危機
が強調されます。
軍需は、
- 国家支出を正当化
- 産業に利益を供給
- 国民統合を演出
する資本主義的安全弁です。
日本でも、
- 社会保障は「財源がない」
- 防衛費は「必要だからある」
という非対称が生じています。
6. 弱者切り捨て:労働価値のない存在の排除
マルクス的には、資本主義は人間を
- 労働力として有用か
- 利潤を生むか
で評価します。
その結果、
- 高齢者
- 障害者
- 慢性疾患
- 貧困層
は「非生産的」とみなされます。
「自己責任」「自立支援」「選択の自由」という言葉は、
排除を道徳化するイデオロギーです。
7. 医療費削減:生命をコストに換算する地点
医療はマルクス的に見ると、
- 労働力を回復・維持する部門
ですが、新自由主義下では、
- 即時的利益を生まない
- 高齢者に多く使われる
という理由で「非効率」とされます。
その結果、
- 診療報酬削減
- 予防より自己管理
- 治療より選別
が進みます。
これは
生命の価値が市場価値に従属した瞬間です。
8. 総括:日本社会は「末期資本主義の安定期」にある
マルクス的に総括すれば、現代日本は、
- 革命前夜ではない
- しかし健全でもない
静かに消耗する段階にあります。
- 反乱は起きない
- だが再生産もできない
- 不満は内面化され、医療化される
ここで重要なのは、
これは「国民の未熟さ」でも
「政治家の無能さ」でもなく
資本主義の成熟した姿である
という点です。
