重要なのは、男性性=攻撃性=DVではない、という峻別から始めることです。
しかし同時に、男性性のある型が攻撃や支配と結びつきやすいのも事実です。
Ⅰ.男性性と攻撃性の関係
攻撃性そのものは人間の基本的衝動です。
ジークムント・フロイトはそれを死の欲動と結びつけ、
コンラート・ローレンツは進化的本能として論じました。
攻撃性は
- 境界を守る
- 競争する
- 危険に対処する
という機能を持ちます。
問題は、それがどう統合されるかです。
多くの文化で男性性は
- 強さ
- 勝利
- 支配
- 感情の抑制
と結びつけられてきました。
そのため、
攻撃性を「自己肯定の源」として学習する男性性
が形成されやすい。
Ⅱ.支配性との接続
支配とは、
他者の自由を制限して自己の安定を得ること
です。
未成熟な男性性では、
- 弱さを認められない
- 恥や不安を言語化できない
- コントロール感を失うことが耐えられない
という構造が生まれやすい。
その結果、
- 言語的威圧
- 経済的支配
- 身体的暴力
へと移行する場合があります。
DVはしばしば、
攻撃衝動そのものよりも「支配の回復欲求」
から生じます。
Ⅲ.DVの心理構造
DVの多くは以下の循環を持ちます。
- 自尊心の脆弱さ
- 不安・嫉妬・見捨てられ不安
- コントロール行動
- 暴力
- 罪悪感と謝罪
- 再発
ここでは「強い男性性」よりも、
脆弱で未統合な男性性
が問題になります。
外側は支配的、内側は崩れやすい。
Ⅳ.父性との違い
父性は境界を作りますが、
DVは境界を侵します。
父性は法を導入しますが、
DVは恣意的な力で相手を支配します。
つまりDVは、
父性の欠如と、未統合な男性性の暴走
と理解できます。
Ⅴ.現代日本的文脈
日本では男性に対して
- 弱音を吐くな
- 稼げ
- 感情を抑えろ
という文化的圧力が長く存在しました。
その結果、
- 感情語彙が乏しい
- 不安を怒りで表現する
- 親密関係でのみ支配的になる
という構図が生まれやすい。
社会的に無力感が強まる時代ほど、
家庭内での支配衝動が増幅することがあります。
Ⅵ.ではどう統合するか
鍵は三つです。
1.攻撃性の言語化
怒りを「怒り」として扱えること。
2.男性性の再定義
強さ=支配ではなく、
強さ=感情を保持できる容量、と再定義する。
3.父性的機能の回復
恣意的支配ではなく、
予測可能で一貫した境界を学習する。
Ⅶ.本質的な問い
DVは単なる暴力問題ではなく、
「弱さをどう扱うか」という男性性の問題
でもあります。
攻撃性は悪ではない。
しかし統合されなければ破壊になる。
