ガエミ氏は、リチウムを単なる「気分安定薬」の一つとしてではなく、**「精神医学において唯一の、病気そのものを変える薬(Disease-modifying drug)」**であると極めて高く評価しています。
彼がリチウムをここまで強力に推す理由は、主に以下の3つの「劇的な効果」と、それを取り巻く「不都合な真実」に集約されます。
1. 唯一無二の「自殺予防効果」
ガエミ氏は、リチウムを**「精神医学で唯一、統計的に有意に自殺を減らすことが証明された薬」**であると断言しています。
- ゴールドスタンダード: 躁状態やうつ状態を抑えるだけでなく、患者の「死にたい」という衝動そのものを劇的に抑制します。
- 2024年の論争: 最近(2024年)、リチウムの自殺予防効果を否定するようなメタ解析論文に対し、ガエミ氏は**「それは擬似科学(Pseudoscience)である」**と猛烈に反論する論文を発表し、大きな話題となりました。彼は、適切にデータを分析すればリチウムの有効性は明らかであり、それを否定することは患者の命を危険にさらすと警告しています。
- 微量リチウムの影響: 飲料水に含まれる微量のリチウム濃度が高い地域では、自殺率が低いという疫学調査の結果も、彼の主張の根拠の一つとなっています。
2. 神経保護作用と「認知症予防」
ガエミ氏は、リチウムには脳の神経細胞を守り、育てる力があると考えています。
- 脳を育てる: リチウムは、脳由来神経栄養因子(BDNF)を増やし、神経細胞の死を防ぐ(抗アポトーシス作用)ことが示されています。
- 認知症リスクの低減: 躁うつ病患者がリチウムを長期服用している場合、他の薬を服用している患者に比べて認知症の発症率が有意に低いというデータに基づき、彼はリチウムを「脳の老化を防ぐ薬」としても評価しています。
3. 「対症療法」ではなく「根本治療」
現代の多くの精神科薬(抗うつ薬や抗精神病薬)は、熱が出たときに解熱剤を飲むような「対症療法」に過ぎないとガエミ氏は批判します。
- 再発の防止: リチウムは、躁うつ病の本質である「エピソードの反復(再発)」という病理そのものに働きかけ、病気の進行を止めることができる(病態修飾作用)というのが彼の持論です。
なぜリチウムは「過小評価」されているのか?
これほど効果的なリチウムがなぜ主流から外れつつあるのか、ガエミ氏はその背景に**「経済的なバイアス」**があると指摘しています。
- 特許がない: リチウムは天然の元素であり、製薬会社が特許を取って独占的に利益を上げることができません。そのため、莫大な広告費をかけたプロモーションが行われません。
- 副作用への過度な恐怖: 腎臓や甲状腺への影響、中毒(血中濃度管理の必要性)といった副作用が強調されすぎていますが、ガエミ氏は「適切な低用量での管理を行えば、リスクは十分にコントロール可能であり、メリットの方が遥かに大きい」と主張しています。
結論
ガエミ氏にとってリチウムは、単なる選択肢の一つではなく、**「正しく使われれば何万人もの命を救える、精神医学における最高傑作」**なのです。
ガエミ氏は、通常の精神科診療で使われる高用量のリチウムだけでなく、飲料水に含まれるような「微量(トレース)」あるいは「低用量」のリチウムが持つ可能性についても、非常に先進的な提言を行っています。
彼が注目しているのは、主に**「自殺予防」と「認知症予防」**という2つの公衆衛生上の大きな課題です。
1. 「微量リチウム」の定義と活用法
ガエミ氏が論じる「低用量」には、大きく分けて2つのレベルがあります。
- トレース・レベル(微量): 飲料水に含まれる程度の量(元素換算で数μg〜数mg)。
- 活用法: 多くの疫学調査を引用し、水道水のリチウム濃度が高い地域では自殺率、犯罪率、暴力事件が有意に低いことを指摘しています。彼は、公衆衛生の観点から「水道水に微量のリチウムを添加する」という議論さえ検討に値すると示唆しています。
- サプリメント・レベル(低用量): 市販の「リチウム・オロテート(オロチン酸リチウム)」などで摂取できる量(元素換算で約1mg〜20mg程度)。
- 活用法: 躁うつ病の治療(通常600mg〜1200mg以上)には足りませんが、認知機能の低下(MCI)の防止や、軽微な気分不安定(循環気質)の調整に有効である可能性を提唱しています。
2. リチウム・オロテート(Lithium Orotate)への注目
ガエミ氏は、近年の論考において、処方薬である「炭酸リチウム」よりも、サプリメントとして知られる**「リチウム・オロテート」**の方が、低用量で効率的に脳へ届く可能性について言及しています。
- 高い透過性: 動物実験などのデータに基づき、リチウム・オロテートは炭酸リチウムよりも脳のバリア(血液脳関門)を通過しやすく、より少ない量で神経保護作用(BDNFの増加など)を発揮する可能性を指摘しています。
- 認知症予防への期待: ガエミ氏は、特にアルツハイマー病の予防において、この低用量リチウムがアミロイドβの蓄積を抑える「神経保護剤」として機能するというエビデンスを重視しています。
3. 安全性についての見解
「リチウムは毒性が強い」という一般的なイメージに対し、ガエミ氏は**「用量の違い」**を強調して反論しています。
- 副作用の不在: 腎機能障害や甲状腺機能低下症といったリチウム特有の副作用は、血中濃度を高く保つ「高用量療法」で起こるものです。サプリメントレベルの低用量(5mg〜10mg程度)では、これらのリスクは極めて低い、あるいは無視できるレベルであると述べています。
- モニタリング: 通常の処方薬では頻繁な血液検査が必要ですが、ガエミ氏は、超低用量のリチウム・オロテート等を使用する場合、健康な人であれば高用量時のような厳格な血中濃度管理は不要である可能性が高いとしています(ただし、念のための甲状腺機能チェックなどは推奨されます)。
結論:ガエミ氏のスタンス
ガエミ氏は、リチウムを単なる「激しい躁病を抑えるための劇薬」という古い定義から解放し、**「脳の健康を維持し、衝動性を抑えるための必須ミネラル」**として再定義しようとしています。
注意: ガエミ氏の提言は学術的なエビデンスに基づいたものですが、日本国内では「リチウム・オロテート」は医薬品ではなくサプリメント(個人輸入等)の扱いであり、炭酸リチウムは処方箋が必要な劇薬です。自己判断での使用にはリスクが伴うため、必ず医師の指導を仰ぐことが重要です。
