「The dopamine hypothesis of bipolar affective disorder: the state of the art and implications for treatment(双極性感情障害のドーパミン仮説:最新知見と治療への示唆)」2017

「The dopamine hypothesis of bipolar affective disorder: the state of the art and implications for treatment(双極性感情障害のドーパミン仮説:最新知見と治療への示唆)」2017の要約です。

この論文は、40年以上にわたり提唱されてきた「ドーパミン仮説」に基づき、双極性障害(BD)の躁状態と鬱状態のメカニズムを、動物実験、死後脳調査、および最新の脳画像診断(PETなど)から統合的にレビューしたものです。


論文の要約

1. 基本的な仮説:ドーパミンによる「極性の変化」

双極性障害の病態は、脳内のドーパミン系の恒常性(ホメオスタシス)の調節不全によって説明できると提案しています。

  • 躁状態: ドーパミン機能が過剰な状態(ハイパードーパミネルジア)。
  • 鬱状態: ドーパミン機能が低下した状態(ハイポドーパミネルジア)。

2. 躁状態(Mania)に関する知見

  • メカニズム: 脳内の「線条体」におけるD2/3受容体の密度(利用可能性)の上昇が、躁症状(特に精神病症状を伴う躁病)と強く関連していることが画像統計で示されました。
  • 証拠: アンフェタミン(ドーパミンを増やす薬)が躁状態を誘発することや、D2受容体遮断薬(抗精神病薬)が躁状態を鎮めるという臨床的事実と一致します。
  • 報酬系: 報酬処理ネットワークが過活動になっており、これが多幸感や活動性の向上につながります。

3. 鬱状態(Depression)に関する知見

  • メカニズム: 鬱状態では逆に、ドーパミントランスポーター(DAT)のレベルが上昇していることが示唆されました。DATは放出したドーパミンを回収するポンプのような役割を持つため、これが増えることで脳内のドーパミン機能が低下し、鬱状態を招くと考えられます。
  • 矛盾点: 興味深いことに、ドーパミン作動薬(増やす薬)だけでなく、一部の抗ドーパミン薬(オランザピンやクエチアピンなど)も双極性鬱病を改善することが知られており、他の受容体への作用を含めた複雑なメカニズムが示唆されています。

4. 治療への示唆と今後の展望

  • 既存治療の裏付け: リチウムやバルプロ酸などの気分安定薬、および非定型抗精神病薬が、ドーパミン経路を調整することで効果を発揮していることを裏付けています。
  • 新しい戦略:
    • 躁病に対して: ドーパミンの合成や放出そのものを減少させるアプローチ。
    • 鬱病に対して: DAT(トランスポーター)をブロックし、脳内のドーパミン濃度を維持する治療法。
  • 限界: 現在のモデルは薬理学的な証拠に依存しており、他の神経伝達物質(セロトニンなど)との相互作用や、さらなる画像診断による検証が必要であるとしています。

結論を一言でいうと

双極性障害は、「脳内のドーパミン濃度を一定に保つサーモスタット(恒常性)」が故障した状態であり、その針がプラスに振り切れると「躁」、マイナスに振り切れると「鬱」になるというモデルを、最新の科学的データが支持している、という内容です。

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