躁うつ病(双極性障害)「人間学的な類型(生き方のスタイル)」

躁うつ病(双極性障害)を単なる生物学的な疾患としてではなく、「人間学的な類型(生き方のスタイル)」として捉え直します。

これまでの「選挙=軽躁状態」「多数派・少数派/孤独者」という論旨を支える、精神医学的な基礎理論です。とは言っても、昔々の話なんですが。昔はこんなのもあったということです。躁うつを+と-で単純化していた時代のものです。


1. 躁うつの本質:「上昇」と「下降」のダイナミズム

最も重要な概念は、人間には「上昇への希求」と「落下への恐怖」という二つのベクトルが内在しているという点です。

  • 正常な状態: この上昇と下降は流動的で、バランスが取れています。
  • 躁うつ状態: この流動性が失われ、どちらかの極に「硬化」してしまった状態です。
  • 上昇(躁): 天上高く舞い上がろうとする。創造的、非常識、熱狂的。
  • 下降(うつ): 深淵へと沈み込む。絶望、保守的、世俗の秩序(凡帳面)への執着。

これは、選挙において「理想を掲げて熱狂する(上昇)」姿と、負けた瞬間に「全てが終わったと絶望する(下降)」姿が、実は同じコインの裏表であることを示唆しています。

2. 「二つの霊(こころ)」:凡帳面さと熱中性の相克

ゲーテの『ファウスト』を見ると、躁うつ系の人間の内面には「二つの霊」が棲んでいると思われます。

  1. 凡帳面(メランコリー親和型):
    • 社会の秩序や世間にしがみつき、落下を怖れる。
    • 保守的、常識的、義務感が強い。
    • 「多数派」の中に留まり、ルールを守ることで安心を得ようとする心理に対応します。
  2. 熱中性(マニー型):
    • 世俗を嫌悪し、理想や自己のエネルギーを爆発させて上昇しようとする。
    • 創造的、攻撃的、非常識。
    • 「少数派」として異を唱える、あるいは集団を扇動してのし上がるエネルギーに対応します。

この二つが内面で激しく葛藤しているのが「躁うつ系」の特徴です。

3. 「混合状態」こそが原初である

興味深いのは、躁とうつを別個のものとせず、「混合状態(相克状態)」こそが基本であるとする考え方です。

  • 劣等型不調: 「自分は皆から切り離された(敗北した)」という孤独感と劣等感に苛まれながら、内心では焦燥している状態。
  • 優越型不調: 「皆が阿呆に見える」「自分は天才だ」という万能感の裏に、実は激しい不安や攻撃性が潜んでいる状態。

選挙という場では、この「優越感」と「劣等感」が激しく入れ替わります。多数派を「阿呆」と見下す少数派の攻撃性は、実は「見捨てられることへの恐怖」の裏返し(躁的防衛)であると解釈できます。

4. 状況論:躁を引き起こす「緊迫」とうつを引き起こす「重荷」

発病に至る状況は以下のように分類できます。

  • 重荷状況(Belastung): 自分の手に負えない過重な責任や仕事(うつの誘因)。
  • 緊迫状況(Spannung): 葛藤の中にのめり込み、緊張が極限まで高まる状態。これが極限に達すると「熱狂状況(Fanatismus)」、つまり躁状態へと突入します。

選挙戦が「軽躁状態」になるのは、まさにこの「緊迫状況」が極限まで高められ、集団が「世直し(躁的妄想)」という熱狂に身を投じるからです。

5. シゾフレニー(統合失調症)との対比:幻想の構造

  • 躁うつ病(双極性):自己幻想(自己へのこだわり)の病。
  • シゾフレニー(統合失調症):共同幻想(社会や他者とのつながり)の病。

ここから:

  • 躁うつ系: 「自分はどう見られているか」「自分は勝者か敗者か」という自己の肥大化・縮小化の物語(自己幻想)の中で生きています。だからこそ、集団の中での立ち位置に敏感です。
  • シゾフレニー系(孤独者): そもそも「社会という共通の幻想(共同幻想)」そのものとの距離感に問題を抱えています。だからこそ、立食パーティーの壁の花になり、独自の「神(絶対的な自己基準)」と対話することになります。

まとめ:「選挙」の正体

選挙とは「上昇したい欲望(熱中性)」と「落下への恐怖(凡帳面)」が入り混じった躁うつ系の人々が、社会的な『緊迫状況』によって強制的に『熱狂(躁状態)』へと駆り立てられる装置であると言えます。

マイクロターゲティング(ハッキング)は、この人間の内面にある「落下への恐怖(不安)」や「上昇への希求(万能感)」という二つの霊のスイッチを、データによって外部から自在に操作する行為に他なりません。

「孤独者(シゾフレニー系)」がこの熱狂から自由でいられるのは、彼らがそもそも「上昇・落下」という世俗的な垂直軸のゲーム(自己幻想のゲーム)に参加していないからである、という論理的補強が可能になります。

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