Ⅰ 進化論と責任概念の再構築
進化論的に見ると、
- 行動は遺伝子×環境×発達史の産物
- 意志は脳内計算の出力
- 性格も気質も確率的分布
このとき、
「本当に責任はあるのか?」
という問題が生じる。
1. 古典的責任モデル
- 自由意志
- 自律的主体
- 意図の統御可能性
これは近代哲学の枠組みであり、
進化論はこれを揺さぶる。
2. 進化論的再構成
責任は
形而上学的事実ではなく
社会的安定のための進化的制度
と考えることができる。
責任概念は:
- 協力を維持する
- 逸脱を抑止する
- 予測可能性を高める
つまり責任は
適応的社会装置。
ここで
ダニエル・デネット
の立場が重要になる。
彼は:
自由意志は幻想ではなく、
高次の予測制御能力である
とする。
責任は、
「絶対的自由」ではなく
将来行動を修正可能な存在であること
に基づく。
3. 精神医学との接点
統合失調症や衝動障害では:
- 予測誤差の調整失敗
- 衝動制御の低下
が起きる。
すると責任能力は
連続体として再定義される。
ここで責任は:
本質ではなく、機能的閾値
になる。
Ⅱ 進化論と時間的自己
進化は「瞬間」ではなく
「時間」の中で起こる。
同様に自己も:
- 記憶の束
- 予測モデル
- ナラティブ
で構成される。
固定的自己は存在しない。
1. 進化的視点
脳の主機能は:
- 未来予測
- 危険回避
- 報酬最大化
つまり自己とは
未来をシミュレートする装置
時間的連続性は
神経学的構成物。
2. 哲学的接点
デイヴィッド・ヒューム
は自己を「知覚の束」と呼んだ。
仏教の無我と同様、
実体的自己はない。
進化論はこれを神経生物学的に支持する。
3. 責任との接続
もし自己がプロセスなら:
- 過去の自分と現在の自分は同一か?
- 将来の自分に責任はあるか?
責任は「時間を横断する物語」の上に成り立つ。
Ⅲ 進化論と宗教の進化
宗教はなぜ普遍的か?
進化論的仮説:
1. ハイパーエージェンシー検出
- 物音 → 捕食者と誤認した方が生存率が高い
- これが神概念の基礎
2. 群選択仮説
- 宗教は協力を強化
- 罰する神は秩序を維持
関連研究者:
パスカル・ボイヤー
デイヴィッド・スローン・ウィルソン
宗教は
超自然的信念というより
集団安定化装置
として進化した可能性。
しかし
宗教体験の深さは
単なる適応で説明しきれるか?
ここで再び
実存の問題が戻る。
Ⅳ 進化論とAI(人工主体)
もし:
- 自己は情報処理構造
- 意志は予測制御
- 責任は社会的制度
ならば、
AIにも責任を問えるか?
1. 進化と人工設計の違い
生物:
- 自然淘汰
AI:
- 人間設計
しかし両者とも:
- 環境適応
- 強化学習
- 自己更新
を行う。
2. 人工主体の条件
責任を問うには:
- 未来行動を予測できる
- 規範を内部化できる
- 行動を修正可能
この条件を満たせば、
AIは「機械」ではなく
「準主体」になる。
3. 最終的な転回
進化論が示したこと:
- 人間は特別に設計された存在ではない
- 自己はプロセス
- 意味は構成物
AIはその延長線上にある。
問いはここに集約する:
主体とは何か?
責任とは何か?
自己とは時間を越える幻想か?
統合構造
| テーマ | 進化論の帰結 |
|---|---|
| 責任 | 社会的安定装置 |
| 時間的自己 | 予測ナラティブ構造 |
| 宗教 | 協力強化メカニズム |
| AI | 主体性の人工化 |
