江戸時代の医療と疾病構造——定常社会における生と死の様態

江戸時代の医療と疾病構造——定常社会における生と死の様態

  1. I. 序論——医療史から見る定常社会
    1. 1. なぜ疾病構造を問うのか
    2. 2. データの限界と方法論
    3. 3. 時代区分と地域差
  2. II. 疾病構造の概観——何が人を殺したか
    1. 4. 死因の推定——パターンの復元
    2. 5. 死因構造の推定(概略)
    3. 6. 平均寿命と死亡率——数字の実相
  3. III. 主要疾病の分析
    1. 7. 感染症(1):天然痘——最大の殺戮者
    2. 8. 感染症(2):麻疹(はしか)
    3. 9. 感染症(3):結核——「労咳」の恐怖
    4. 10. 感染症(4):コレラ——幕末の新たな恐怖
    5. 11. 寄生虫症——見えない同居者
    6. 12. 性感染症——都市の暗部
    7. 13. 飢饉関連疾患——構造的暴力
  4. IV. 医療システムと治療
    1. 14. 漢方医学——支配的パラダイム
    2. 15. 蘭方医学——新たなパラダイムの挑戦
    3. 16. 民間療法——庶民の医療
  5. V. 精神疾患と「狂気」——あなたの専門領域
    1. 17. 「狂気」の概念——現代精神医学との断絶
    2. 18. 主要な「精神疾患」の扱い
    3. 19. 座敷牢——精神障害者の隔離
    4. 20. 憑依現象と集団ヒステリー
    5. 21. 自殺——許容と禁忌
  6. VI. 医療と社会階層——不平等の構造
    1. 22. 医師の身分と経済
    2. 23. 医療へのアクセスの不平等
    3. 24. 女性と医療
    4. 25. 子供と医療
  7. VII. 定常社会と疾病の構造的関係
    1. 26. 疾病が人口動態を規定する
    2. 27. 定常社会における医療の「適正」規模
    3. 28. 疾病の社会的意味——機能主義的分析
    4. 29. 疾病と宗教——意味の体系
  8. VIII. 現代への示唆——医療と定常社会の緊張
    1. 30. 医療費と財政持続可能性
    2. 31. 「健康」概念の再考——江戸からの問い
    3. 32. 精神医学と定常社会——あなたへの問い
  9. IX. 結論——疾病の鏡に映る社会
    1. 33. 江戸の医療・疾病構造が示すもの
    2. 34. 三つの不可能な要求の三角形
    3. 35. 最後の実存的問い——病と死の受容

I. 序論——医療史から見る定常社会

1. なぜ疾病構造を問うのか

前回の江戸定常社会分析で、私は以下を指摘しました:

  • 平均寿命30-40歳(現代の半分以下)
  • 乳幼児死亡率の高さ
  • 飢饉と疫病の頻発

しかし、これらは単なる「不幸な事実」ではありません。定常社会の構造的帰結です。

本論考の問い:

(1)疾病構造と社会システムの相互関係

  • 定常社会は特定の疾病パターンを生む
  • 疾病は人口動態を規定し、定常性を維持

(2)医療システムの限界と可能性

  • 漢方医学、蘭方医学の実態
  • 何ができ、何ができなかったか

(3)精神疾患の社会的構成 あなたの専門領域:

  • 「狂気」はどう理解されたか
  • 現代精神医学との断絶と連続性

(4)医療と身分制度

  • 誰が医療にアクセスできたか
  • 医療における不平等の構造

(5)「健康」概念の文化的相対性

  • 江戸の「健康」は現代と同じか
  • 疾病と受容、諦念の関係

(6)死の様態 実存的問い:

  • 江戸の人々はどう死んだか
  • 死の意味づけの文化的差異

2. データの限界と方法論

史料の問題:

(a)人口動態統計の不完全性

  • 宗門改帳(人別帳):ある程度の人口把握
  • しかし、死因の記録はほとんどなし
  • 乳幼児死亡は過小記録の可能性

(b)医学文献の偏り

  • 漢方医、蘭方医の著作は残る
  • しかし、民間療法、口承知識は記録されず
  • 支配階級の医療に偏る

(c)疾病名の不確定性

  • 当時の病名と現代の疾患概念は対応しない
  • 例:「労咳」は肺結核か?それとも他の呼吸器疾患か?

したがって:

  • 確定的な疫学データは得られない
  • しかし、断片的証拠から構造を推測可能

3. 時代区分と地域差

前回同様、江戸時代は一枚岩ではありません。

時期による差異:

  • 17世紀:梅毒の蔓延期
  • 18世紀:天然痘、麻疹の流行
  • 19世紀:コレラの侵入(1822年以降)

地域差:

  • 都市(江戸、大坂、京都):感染症リスク高
  • 農村:栄養状態悪、飢饉の影響大
  • 気候差(東北vs西南):疾病パターン異なる

II. 疾病構造の概観——何が人を殺したか

4. 死因の推定——パターンの復元

直接的データは少ないが、以下の方法で推測:

(a)寺院過去帳の分析 一部の寺院の死亡記録から、死亡年齢分布を推定

(b)医学書の記述 当時の医師が何を「よく見る病」として記述しているか

(c)人口学的逆算 年齢別死亡率を推定し、主要死因を推測

(d)比較史的アプローチ 同時代の他地域(欧州、中国)との比較

5. 死因構造の推定(概略)

現代との対比で理解するのが有効:

【江戸時代の主要死因(推定)】
1. 感染症(50-60%)
   - 天然痘、麻疹、結核、赤痢、コレラ等
2. 周産期死亡(乳幼児)(20-30%)
   - 出生時合併症、新生児感染症
3. 栄養失調・飢饉(10-20%、時期により変動大)
4. 外傷・事故・出産(5-10%)
5. その他(老衰、慢性疾患)(5-10%)

【現代日本の主要死因(2020年代)】
1. 悪性新生物(癌)(27%)
2. 心疾患(15%)
3. 老衰(10%)
4. 脳血管疾患(7%)
5. 肺炎(5%)
感染症は極めて少数

根本的相違:

江戸:急性感染症の時代

  • 短期間で死に至る疾患が主
  • 若年死が多い
  • 環境要因(衛生、栄養)が決定的

現代:慢性疾患の時代

  • 長期経過の疾患が主
  • 高齢者の死亡が主
  • 生活習慣、遺伝要因

この転換を「疫学的転換(epidemiological transition)」と呼びます。

6. 平均寿命と死亡率——数字の実相

平均寿命の推定:

出生時平均余命:30-40歳(地域・時期により変動)

しかし、これは誤解を生みやすい数字です。

平均寿命が短い理由:

  • 乳幼児死亡率が極めて高い(30-40%)
  • 5歳まで生存できれば、50-60歳まで生きる可能性は高い

年齢別生存率(推定):

出生 → 100人
1歳 → 70-80人(乳児死亡率20-30%)
5歳 → 60-70人(幼児期の疾病)
20歳 → 55-65人
50歳 → 30-40人
70歳 → 10-15人

つまり、「30歳で死ぬ」のではなく、「多くが幼少期に死に、成人すれば50-60歳まで生きる」。

比較(同時期の欧州):

  • 概ね類似(平均寿命30-40歳)
  • 産業革命前の人類社会の普遍的パターン

比較(現代日本):

  • 平均寿命:84歳
  • 乳幼児死亡率:0.2%以下
  • 2倍以上の寿命、100倍以上の乳幼児生存率

III. 主要疾病の分析

7. 感染症(1):天然痘——最大の殺戮者

天然痘(疱瘡、痘瘡):

疾患の特徴:

  • ウイルス感染症
  • 飛沫感染、接触感染
  • 致死率:20-40%
  • 生存者も顔面に痘痕(あばた)
  • 免疫獲得(一度罹患すれば再罹患しない)

江戸時代における流行:

  • 周期的大流行(10-20年ごと)
  • 特に乳幼児、小児が犠牲
  • 都市部で激烈(人口密度高)

社会的影響:

(a)「見目(みめ)」の価値の変容

  • 痘痕のない顔は稀少→美の基準
  • 「痘痕も靨(えくぼ)」という諺(痘痕すら美しく見える)
  • 逆説的に、天然痘が美意識を規定

(b)通過儀礼化

  • 天然痘は「誰もが罹る病」
  • 罹患=子供から大人への通過
  • 生存=「運」「神仏の加護」

(c)疱瘡神信仰

  • 疱瘡神を祀る(祟りを避ける)
  • 赤色が天然痘を避けるという俗信
  • 源為朝の錦絵(疱瘡除け)

対策:

江戸時代後期:種痘の導入

  • 1790年代、中国経由で「人痘法」伝来
  • 軽症の天然痘患者の痂皮を接種→軽症で済ませる
  • しかし、効果不確実、時に重症化

1849年(嘉永2年):牛痘法の導入

  • オランダ経由でJennerの牛痘法伝来
  • 緒方洪庵らが普及
  • しかし、幕末の混乱で限定的普及

明治以降:

  • 1876年種痘法公布
  • 20世紀前半にほぼ撲滅

定常社会との関連:

天然痘は人口抑制の主要因の一つ。

  • 乳幼児死亡率20-30%のうち、相当部分が天然痘
  • 都市部の高死亡率→農村からの人口流入で補填

天然痘なしには、江戸の人口定常は説明できない。

8. 感染症(2):麻疹(はしか)

麻疹:

疾患特徴:

  • ウイルス感染、感染力極めて強い
  • 致死率:天然痘より低いが、合併症(肺炎、脳炎)で死亡

江戸時代の流行:

  • 天然痘と並ぶ小児疾患
  • 大流行の記録多数

「三日はしか」の誤解:

  • 軽症で済む場合もあるが、重症化も多い
  • 栄養状態悪い場合、致死率上昇

現代との対比:

  • 現代日本:ワクチンでほぼ制御
  • しかし、途上国では依然として小児の主要死因

9. 感染症(3):結核——「労咳」の恐怖

結核(労咳、癆瘵):

疾患特徴:

  • 細菌感染症(結核菌)
  • 慢性経過、喀血、衰弱
  • 飛沫感染
  • 栄養状態、住環境が発症を左右

江戸時代の状況:

(a)「不治の病」

  • 有効な治療法なし
  • 長期の衰弱→死

(b)都市部での蔓延

  • 狭い長屋、換気不良
  • 栄養不足
  • 江戸、大坂で高罹患率

(c)「芸術家の病」?

  • 文人、遊女に多い?(史料の偏りかもしれない)
  • 「病的な美」の美学?(これは後世のロマン化)

社会的影響:

  • 労働力の喪失(長期療養、死亡)
  • 家族への経済的打撃

治療:

  • 漢方:補剤(人参等)、滋養
  • しかし、治癒は稀
  • 多くは死を待つのみ

結核が制御されたのは20世紀(抗生物質の登場)。江戸時代は完全に無力。

10. 感染症(4):コレラ——幕末の新たな恐怖

コレラ(虎列剌、狐狼狸):

疾患特徴:

  • 細菌感染症(コレラ菌)
  • 水系感染
  • 激烈な下痢、脱水→数時間~数日で死亡
  • 致死率50%超

日本への侵入:

  • 1822年(文政5年)、初の流行
  • 長崎から侵入(中国経由)
  • 以後、数度の大流行

1858年(安政5年)の大流行:

  • 推定死者数:江戸だけで数万人
  • ペリー来航(1853年)直後の混乱期
  • 「安政のコロリ」(コロリと死ぬ)

社会的パニック:

  • 未知の疾病への恐怖
  • 「異国からの病」という認識
  • 攘夷運動の燃料(外国人が病をもたらした)

治療の無力:

  • 原因不明(細菌説は19世紀後半)
  • 有効な治療なし
  • 脱水への対処も不十分

定常社会の終焉との関連:

コレラは、開国による新たなリスクの象徴。

  • 鎖国の医学的「メリット」:疾病の流入阻止
  • 開国:新興感染症のリスク

江戸的定常社会の前提(閉鎖系)が崩れる。

11. 寄生虫症——見えない同居者

日本住血吸虫症(地方病):

疾患特徴:

  • 寄生虫(日本住血吸虫)
  • 中間宿主:淡水産巻貝(ミヤイリガイ)
  • 水田、用水路で感染
  • 肝硬変、腹水→死亡

流行地:

  • 甲府盆地、広島県、福岡県等
  • 水田地帯に限定

社会的影響:

  • 「村が滅びる病」
  • 原因不明(寄生虫と判明は20世紀)
  • 忌避、差別

制御:

  • 20世紀中盤に撲滅(殺貝剤、水路改修)
  • 江戸時代は完全に無力

回虫、鞭虫等:

  • ほぼ全ての人が保有
  • 下肥使用→経口感染
  • 栄養状態悪化、貧血

衛生環境と定常社会:

寄生虫症は循環型農業の副産物

  • 下肥の使用→回虫蔓延
  • トレードオフ:循環 vs 衛生

12. 性感染症——都市の暗部

梅毒(黴毒、瘡毒):

歴史:

  • 16世紀、ヨーロッパから伝来(南蛮船経由)
  • 17世紀に全国拡大

疾患特徴:

  • スピロヘータ感染症
  • 性交渉で感染
  • 第一期:潰瘍
  • 第二期:全身発疹
  • 第三期:神経・血管障害→死亡

江戸時代の状況:

(a)遊郭との関連

  • 吉原(江戸)、新町(大坂)等で蔓延
  • 遊女の罹患率高
  • 客への感染

(b)治療:水銀療法

  • 中国医学から導入
  • 水銀軟膏、水銀蒸気浴
  • 副作用(水銀中毒)も深刻
  • 効果は限定的

(c)社会的スティグマ

  • 「業病」(因果応報の病)
  • 差別、隔離
  • しかし、一般武士、町人にも蔓延

(d)先天梅毒

  • 母子感染
  • 乳幼児死亡の一因

淋病:

  • 梅毒より軽症だが、広範に蔓延
  • 排尿痛、分泌物

性と疾病の政治学:

梅毒は、都市・商品経済・性産業の産物。

  • 定常社会内部の「近代性」の萌芽
  • しかし、医学的対処は不能

13. 飢饉関連疾患——構造的暴力

栄養失調:

天明の飢饉(1782-87)等:

  • 直接の餓死
  • しかし、より多くは疾病による間接死

メカニズム:

飢饉 → 栄養失調 → 免疫力低下 → 感染症罹患 → 死亡

具体的疾病:

  • 脚気(ビタミンB1欠乏)
  • 夜盲症(ビタミンA欠乏)
  • 壊血病(ビタミンC欠乏)
  • 浮腫(蛋白質欠乏)

「かっけ」(脚気):

江戸の「江戸患い」:

  • 都市部(特に江戸)で多発
  • 白米食→ビタミンB1欠乏
  • 心不全、神経障害

皮肉:

  • 農村(雑穀食)では少ない
  • 都市の「豊かさ」(白米)が病を生む
  • これは「文明病」の原型

定常社会の脆弱性:

飢饉は、定常社会がギリギリの均衡であることを露呈。

  • 余剰なし→天候不順で崩壊
  • 疾病は単なる医学的問題ではなく、社会構造の帰結

IV. 医療システムと治療

14. 漢方医学——支配的パラダイム

理論的基礎:

(a)陰陽五行説

  • 自然(木火土金水)と人体の対応
  • バランスの医学

(b)気血水論

  • 気(エネルギー)、血、水(体液)
  • これらの過不足・停滞が病因

(c)証(しょう)に基づく治療

  • 個別の症状パターン(証)を診断
  • 証に応じた処方

診断方法:

四診:

  1. 望診:顔色、舌の観察
  2. 聞診:声、呼吸音、体臭
  3. 問診:症状の聴取
  4. 切診:脈診、腹診

特に脈診が重視される。

治療:

(a)薬物療法(本草学)

  • 生薬(植物、動物、鉱物)の組み合わせ
  • 「方剤」:複数生薬の処方
  • 代表的方剤:葛根湯、小柴胡湯、補中益気湯等

(b)鍼灸

  • 経絡(気の通り道)上の経穴(ツボ)を刺激
  • 鍼、灸(もぐさを燃やす)

(c)按摩、導引

  • マッサージ、体操

漢方の限界:

(1)感染症への無力

  • 細菌、ウイルスという概念なし
  • 対症療法のみ
  • 天然痘、コレラ等には無効

(2)外科的治療の未発達

  • 手術はほとんど行われない
  • 骨折、脱臼の整復程度

(3)解剖学的知識の不足

  • 解剖は禁忌(儒教・仏教的タブー)
  • 臓器の構造・機能の理解が不正確

しかし:

(4)慢性疾患、機能性疾患への一定の効果

  • 消化器症状、疼痛緩和等
  • プラセボ効果も含め、一定の治療効果

(5)全人的アプローチ

  • 心身一如の医学
  • 生活習慣、環境、精神状態を重視

15. 蘭方医学——新たなパラダイムの挑戦

蘭学の導入:

1774年:『解体新書』

  • 杉田玄白、前野良沢らがドイツの解剖書を翻訳
  • オランダ語経由(「ターヘル・アナトミア」)

衝撃:

  • 実際の人体解剖(腑分け)で確認
  • 漢方の臓腑論との乖離を認識

蘭方医学の特徴:

(a)解剖学的知識

  • 臓器の正確な構造理解
  • 血液循環の理解

(b)外科技術

  • 華岡青洲:全身麻酔下の乳癌手術(1804年、世界初級)
  • 通仙散(麻酔薬、曼陀羅華等の混合)

(c)種痘の導入

  • 前述の緒方洪庵ら

限界:

(1)依然として感染症には無力

  • 細菌学は19世紀後半(Pasteur, Koch)
  • 抗生物質は20世紀(Penicillin, 1928年発見)

(2)蘭書の限界

  • 18世紀ヨーロッパ医学も発展途上
  • 「瀉血」(悪い血を抜く)等、非科学的手法も含む

(3)普及の限界

  • 蘭方医は少数(江戸後期でも数百人規模?)
  • 主に都市部
  • 農村部は依然として漢方、民間療法

漢方vs蘭方の論争:

江戸後期、医学界は分裂:

  • 漢方派:伝統的権威、多数派
  • 蘭方派:新知識、少数派

しかし、対立は単純ではない:

  • 折衷派:両者の利点を取る
  • 実際、多くの医師は両方を学ぶ

明治維新後:

  • 政府が西洋医学を採用
  • 漢方医は制度的に排除(医師免許から除外)
  • 漢方は民間療法へ

16. 民間療法——庶民の医療

大多数の民衆は医師にかかれない:

  • 医療費が高い
  • 医師の絶対数が少ない(特に農村)

民間療法の諸相:

(a)家庭内治療

  • 家伝の薬(薬草煎じ薬)
  • 食事療法(「医食同源」)

(b)祈祷、加持

  • 神仏への祈願
  • 修験者、陰陽師による呪術
  • 「病は祟り」という観念

(c)温泉療法

  • 各地の湯治場
  • 長期滞在(数週間~数ヶ月)
  • 慢性疾患、外傷後のリハビリ

(d)按摩、鍼灸(民間版)

  • 盲人の職域として制度化
  • 安価で普及

(e)呪符、お守り

  • 疱瘡除けの赤物
  • 病除け神社への参詣

評価:

(1)多くは無効、時に有害

  • 科学的根拠なし
  • 迷信的要素

(2)しかし、心理的支持

  • プラセボ効果
  • 共同体的ケア(孤立の防止)

(3)一部は経験的に有効

  • 薬草の中には実際に薬効のあるもの
  • 温泉の効能

医療の階層性:

上層(大名、富裕町人):専属医師(漢方、蘭方)
中層(中級武士、商人):町医者(漢方主)
下層(貧農、都市下層民):民間療法、自己治療

医療へのアクセスの不平等は、定常社会の構造的不平等の一部。

V. 精神疾患と「狂気」——あなたの専門領域

17. 「狂気」の概念——現代精神医学との断絶

江戸時代に「精神疾患」という概念は存在しない。

あるのは:

  • 狂(きょう):激しい興奮、錯乱
  • 癲狂(てんきょう):てんかんと狂気の混同
  • 物の怪(もののけ):憑依
  • 気鬱(きうつ):抑うつ状態(しかし現代のうつ病とは異なる)

根本的な認識論的差異:

(a)身体と精神の未分化

  • 漢方医学:心身一如
  • 「精神疾患」という独立カテゴリーなし
  • すべての病は気血の失調

(b)超自然的解釈

  • 狂気=霊的存在の憑依
  • 狐憑き、犬神憑き
  • 祟り、因果応報

(c)社会的逸脱としての狂気

  • 医学的問題というより、社会秩序の問題
  • 「分別がない」「常識がない」

18. 主要な「精神疾患」の扱い

(a)「狂」——急性精神病状態

症状(史料から推測):

  • 激しい興奮
  • 暴力
  • 叫ぶ、走り回る
  • 妄想的言動

現代診断との対応(推測):

  • 統合失調症の急性期?
  • 躁病?
  • せん妄?
  • アルコール精神病?

対処:

医学的:

  • 漢方:鎮静作用のある生薬(竜骨、牡蛎等)
  • しかし、効果は限定的

非医学的:

  • 座敷牢:自宅に牢を作り、閉じ込める
  • 拘束(縛る)
  • 祈祷師による加持

社会的:

  • 家族が管理責任
  • 放置すれば、村から追放

(b)「癲狂」——てんかん

症状:

  • 突然の意識消失、痙攣

扱い:

  • 「狂」と区別されないことも
  • 「狐憑き」と解釈されることも
  • 就職、結婚で差別

治療:

  • 漢方薬(効果は疑問)
  • お守り、祈祷

(c)「気鬱」——抑うつ状態

症状(史料から):

  • 気分の落ち込み
  • 意欲低下
  • 身体症状(食欲不振、不眠)

解釈:

  • 「気」の停滞
  • 「肝」の失調(漢方医学)

治療:

  • 補気剤(人参等)
  • 気晴らし(旅行、芸事)

しかし、現代の「うつ病」とは異なる:

  • 脳内神経伝達物質という概念なし
  • 心理社会的要因が主と考えられる

(d)認知症(呆け)

高齢者の認知機能低下:

  • 「老耄」「耄碌」
  • 老化の自然な過程と見なされる
  • 特に治療対象とされず

家族内でのケア:

  • 介護は家族(特に嫁)の責任
  • 社会的支援制度なし

19. 座敷牢——精神障害者の隔離

制度:

座敷牢(私宅監置):

  • 自宅に牢屋を作り、精神障害者を閉じ込める
  • 法的根拠:江戸時代は慣習、明治以降は法制化(1900年精神病者監護法)

構造:

  • 小部屋(数畳)
  • 格子窓
  • 排泄は部屋内

対象:

  • 暴力的、徘徊する精神障害者
  • 家族が管理できない者

実態:

写真記録(明治~昭和初期、呉秀三の調査):

  • 劣悪な環境
  • 長期監禁(数年~数十年)
  • 不衛生、栄養不良
  • 時に鎖で繋がれる

家族の負担:

  • 経済的(牢の建設、維持)
  • 心理的(罪悪感、恥)
  • 社会的(スティグマ)

廃止:

  • 1950年精神衛生法で原則禁止
  • しかし、実際には1960年代まで存続

精神医学的考察:

座敷牢は何を意味するか?

(1)医療の不在

  • 精神疾患への有効な治療なし
  • 隔離が唯一の「対処」

(2)社会防衛

  • 狂気=危険
  • 社会秩序の維持が優先

(3)家族への責任転嫁

  • 国家・社会は関与せず
  • 私的領域での処理

(4)人間性の剥奪

  • 座敷牢の中の人は「人」として扱われない
  • 生物学的生存のみ

これは、Giorgio Agambenの「剥き出しの生(bare life)」の極限例。

20. 憑依現象と集団ヒステリー

(a)狐憑き

現象:

  • 突然の人格変化
  • 異常な言動
  • 「狐が憑いた」と解釈

現代精神医学的解釈:

  • 解離性障害?
  • 演技性?
  • 文化依存症候群

社会的機能:

  • 抑圧された感情の表出
  • 社会的役割からの一時的逸脱
  • 祈祷師による「治療」(脱憑依)=社会復帰の儀式

(b)集団憑依(集団ヒステリー)

「踊り念仏」的現象:

  • 集団での狂乱的踊り
  • 宗教的恍惚
  • 「ええじゃないか」(幕末、1867年)

精神医学的解釈:

  • 集団心理
  • 社会的ストレスの発散
  • 社会変動期に頻発

21. 自殺——許容と禁忌

武士の切腹:

  • 名誉の死
  • 制度化された自殺
  • 美学化(「武士道とは死ぬことと見つけたり」)

心中(情死):

  • 恋愛関係の男女の共同自殺
  • 近松門左衛門の人形浄瑠璃で題材化
  • ロマン化と社会問題化の両面

幕府の対応:

  • 心中禁止令(1722年、享保7年)
  • しかし、根絶できず

仏教的タブー:

  • 自殺は罪(地獄に堕ちる)
  • しかし、実際には多発

現代との比較:

  • 江戸時代の自殺率データは不明
  • しかし、文学作品等から、決して稀ではない

精神医学的考察:

自殺の意味は文化的に構成される:

  • 武士:名誉
  • 心中:愛の証明
  • 現代:精神疾患の症状、社会的孤立

江戸時代には「うつ病による自殺」という理解枠組みはない。

VI. 医療と社会階層——不平等の構造

22. 医師の身分と経済

医師の種類:

(a)御典医(ごてんい)

  • 将軍家、大名家の専属医
  • 高い社会的地位
  • しかし、人数は少数

(b)藩医

  • 各藩の医師
  • 武士身分(医師は武士扱い)
  • 俸禄で生活

(c)町医者

  • 都市部の開業医
  • 診療報酬で生活
  • 経済的には不安定

(d)村医者

  • 農村部の医師
  • しばしば兼業(農業等)

医師の養成:

(1)師弟制度

  • 医師の子が継ぐ
  • または、弟子入り
  • 系統的医学教育機関はほとんどなし

(2)例外:蘭方医の塾

  • 適塾(緒方洪庵、大坂)
  • 鳴滝塾(シーボルト、長崎)
  • ここから明治の医学者が輩出

23. 医療へのアクセスの不平等

階層別医療:

上層:

  • 専属医師
  • 高価な薬剤
  • 良好な住環境、栄養

中層:

  • 町医者に診察料を払う
  • 中程度の薬剤
  • まあまあの生活環境

下層:

  • 医者にかかれない
  • 安い民間療法
  • 劣悪な環境、栄養不良

結果:

  • 死亡率の階層差(データは不十分だが、推測される)
  • 平均寿命の階層差

定常社会の不平等:

医療は「平等」ではない。

  • 現代の国民皆保険とは全く異なる
  • 金がなければ医療なし

これは定常社会が必然的に不平等か?

  • 資源制約下では、再分配の余地が少ない
  • しかし、これは政治的選択の結果でもある

24. 女性と医療

(a)出産——最大のリスク

妊産婦死亡率:

  • 推定:1-2%(出産100回に1-2回は母親が死亡)
  • 現代日本:0.003%(100,000回に3回)
  • 300-600倍のリスク

死因:

  • 産後出血
  • 感染症(産褥熱)
  • 難産

対処:

産婆(助産婦):

  • 伝統的知識
  • 経験に基づく技術
  • しかし、感染症への無知(手洗いの概念なし)

医師の関与:

  • 通常は産婆が扱う
  • 難産の場合のみ医師
  • しかし、帝王切開等の高度技術はない

堕胎:

  • 前述の通り、都市部で一般的
  • 危険(出血、感染)
  • しかし、取り締まりは緩い

(b)婦人科疾患

月経関連:

  • 「血の道」(月経不順、更年期障害等)
  • 漢方薬(当帰芍薬散等)

子宮脱等:

  • 多産、重労働の結果
  • 有効な治療なし

(c)医療における女性の扱い

女性医師:

  • ほぼ存在しない
  • 産婆は女性だが、「医師」ではない

診察の制約:

  • 男性医師が女性患者を診る際の羞恥
  • 「望診」中心(触診は限定的)

女性の身体の軽視:

  • 出産は「女の仕事」
  • 医学の対象として軽視される傾向

25. 子供と医療

小児死亡率の高さ:

  • 前述の通り、5歳までに30-40%死亡

「七歳までは神のうち」:

  • 7歳までは「まだ人間ではない」
  • 死んでも仕方ない、という諦念
  • 葬儀も簡素

これは残酷か、それとも適応か?

心理学的解釈:

  • 高死亡率への防衛機制
  • 愛着を制限することで、喪失の痛みを軽減

しかし:

  • 親の悲しみは普遍的
  • 「神のうち」は建前、本音は別

小児科:

  • 専門分化していない
  • 「小児医」という専門はあるが、少数

VII. 定常社会と疾病の構造的関係

26. 疾病が人口動態を規定する

人口定常のメカニズム(再考):

前回、私は「間引き」を強調しました。 しかし、より正確には:

人口定常 = 低出生率 + 高死亡率

低出生率の要因:
- 晩婚化
- 間引き
- 堕胎

高死亡率の要因:
- 乳幼児死亡(感染症)← これが最大
- 成人の感染症死
- 飢饉関連死
- 妊産婦死亡

疾病がなければ、人口は急増していた可能性。

つまり、定常社会は疾病によって「支えられていた」。

27. 定常社会における医療の「適正」規模

逆説:

もし江戸時代に現代的医療があれば:

  • 乳幼児死亡率激減
  • 感染症制御
  • 平均寿命倍増

結果:

  • 人口爆発
  • 資源制約の下で、マルサス的破局
  • 飢饉の激化

つまり、江戸的定常社会は、「未発達な医療」を前提としていた。

現代への示唆:

定常経済論者が江戸を称賛する時、この逆説を忘れていないか?

医療技術を江戸レベルに戻すことは誰も望まないはず。 しかし、現代医療と定常経済は両立困難かもしれない。

ジレンマ:

  • 医療の進歩→寿命延長→高齢化→医療費増大→財政危機
  • 定常経済→医療費抑制→医療へのアクセス制限→?

これは、前々回の「世代会計」の問題に戻る。

28. 疾病の社会的意味——機能主義的分析

Talcott Parsonsの「病人役割(sick role)」理論:

病気は社会的に定義される。

病人の権利:

  1. 通常の社会的役割から免除される
  2. 病気は本人の責任ではない

病人の義務:

  1. 回復しようと努める
  2. 医療専門家の助けを求める

江戸時代への適用:

権利の側面:

  • 病人は労働を免除される(ただし、下層民は困難)
  • 家族が看護

義務の側面:

  • 「回復の努力」は重視される
  • しかし、「医療専門家」へのアクセスは限定的

逸脱:

慢性疾患、精神疾患の場合:

  • 「回復しない」→義務違反?
  • 社会的役割復帰の見込みなし→排除(座敷牢)

つまり、Parsons的「病人役割」は、急性疾患を前提としており、慢性・精神疾患には適用困難。

江戸時代も同様。

29. 疾病と宗教——意味の体系

病の意味づけ:

(a)因果応報

  • 病は前世の悪業の報い
  • または、今世の罪の罰

(b)祟り

  • 神仏、祖霊、怨霊の怒り
  • 特定の行為(タブー違反)への罰

(c)試練

  • 神仏による信仰の試験
  • 耐えることで徳を積む

(d)天命

  • 避けられない運命
  • 受容するしかない

これらは、苦痛を「意味づける」ことで、耐えるための枠組み。

Viktor Franklの『夜と霧』: 「人は、なぜ(why)が分かれば、どんな(how)にも耐えられる。」

江戸の人々にとって、病の「なぜ」は宗教的に提供された。

現代:

  • 「なぜ私が病気に?」という問いに、医学は答えない(メカニズムは説明するが、意味は説明しない)
  • 宗教的枠組みの衰退
  • 実存的孤立

VIII. 現代への示唆——医療と定常社会の緊張

30. 医療費と財政持続可能性

現代日本の医療費:

  • 約45兆円(2020年代)
  • GDP比約8-9%
  • 高齢化で増大継続

江戸時代:

  • 医療費データなし
  • しかし、GDP比では遙かに小さい(推測:1-2%?)

なぜ差があるか:

(1)技術の差

  • 現代:高度医療技術(画像診断、手術、薬剤)
  • 江戸:低技術(生薬、鍼灸)

(2)アクセスの差

  • 現代:国民皆保険
  • 江戸:金持ちのみ

(3)平均寿命の差

  • 現代:高齢者が多い→医療費増
  • 江戸:高齢者が少ない

定常経済と医療:

もし定常経済に移行するなら、医療費をどうするか?

選択肢:

(A)医療技術を制限

  • 高額医療(延命治療等)を制限
  • 「自然な死」の受容
  • しかし、誰が決めるのか?

(B)医療へのアクセスを制限

  • 年齢制限(高齢者への医療制限)
  • 所得制限(金持ちのみ高度医療)
  • これは江戸への回帰?

(C)医療費以外を削減

  • 他の支出(防衛、公共事業等)を削減
  • 医療優先

(D)効率化

  • 予防医学重視
  • 地域包括ケア
  • しかし、限界がある

これは深刻な倫理的・政治的選択。

31. 「健康」概念の再考——江戸からの問い

WHO定義(1948年): 「健康とは、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病がないことではない。」

この定義は普遍的か?

江戸時代の「健康」:

  • 「無病息災」よりも「一病息災」
  • 完全な健康は追求されない
  • 適度な不調との共生

現代の「健康」:

  • 完全な健康の追求
  • わずかな不調も治療対象
  • 「医療化(medicalization)」の進行

Ivan Illichの批判『脱病院化社会』(1976):

  • 現代医療は健康を「商品化」
  • 人々を医療依存にする
  • 自己治癒力の軽視

江戸的「健康」観の再評価?

  • 完全な健康を求めない
  • 老い、死を受容
  • これは定常経済に適合的

しかし:

  • 江戸の「受容」は、選択肢がなかったから
  • 現代人に強制できるか?

32. 精神医学と定常社会——あなたへの問い

精神科医として、あなたはどう考えますか?

(1)定常社会における精神疾患

江戸時代、「うつ病」の概念はありませんでした。

しかし:

  • 現代の「うつ病」患者は江戸時代にもいたはず
  • 彼らはどう生きたか?
  • 「気鬱」として、共同体内でケアされた?
  • それとも、「怠け者」として排除された?

(2)成長主義と精神疾患

現代の精神疾患(特にうつ病、不安障害)の一因は、成長・競争・自己実現の圧力かもしれません。

定常社会なら:

  • 成長圧力なし
  • 「あるがまま」の受容
  • 精神疾患は減る?

しかし:

  • 江戸には別の圧力(身分、共同体規範)
  • 抑圧は形を変えるだけ?

(3)医療技術と人間の尊厳

江戸時代、認知症の高齢者は「家族が看る」しかありませんでした。

現代:

  • 施設、専門職
  • しかし、「尊厳」は保たれているか?

定常経済下では:

  • 高齢者医療・介護を縮小?
  • 家族介護への回帰?
  • それは「尊厳ある老い」か?

これらは、あなた自身が日々直面している問いかもしれません。

IX. 結論——疾病の鏡に映る社会

33. 江戸の医療・疾病構造が示すもの

(1)疾病は社会の鏡

江戸時代の疾病構造は、定常社会の構造を反映:

  • 感染症:衛生環境の限界
  • 栄養失調:資源制約
  • 高死亡率:医療技術の限界
  • 不平等:階層社会

(2)医療は価値の体系

何を「病」とし、どう対処するかは、文化的選択:

  • 江戸:狂気=憑依
  • 現代:精神疾患=脳の病

どちらが「正しい」かではなく、異なる認識論。

(3)定常社会は「健康な社会」ではない

江戸は定常でしたが:

  • 短命
  • 高い乳幼児死亡率
  • 頻繁な疫病

定常≠理想、という現実。

34. 三つの不可能な要求の三角形

現代社会が直面するトリレンマ:

      【高度医療】
         /  \
        /    \
       /      \
      /________\
【定常経済】  【平等なアクセス】

この三つを同時に満たすことは不可能かもしれない。

選択肢:

(A)高度医療+平等 → 成長経済が必要

  • 現代日本の目指す方向
  • しかし、財政的に持続不可能

(B)高度医療+定常 → 不平等を容認

  • 金持ちのみ高度医療
  • 江戸への部分的回帰

(C)平等+定常 → 医療水準を下げる

  • 「低レベルの平等」
  • 誰も望まない

どれを選ぶか?それとも、この三角形を超える「第四の道」があるのか?

35. 最後の実存的問い——病と死の受容

江戸の人々は、病と死を「受容」していました。

  • 平均寿命30-40歳
  • 子供の死は「神のうち」
  • 不治の病への諦念

現代人は、病と死を「克服すべきもの」と見ます。

  • 平均寿命の延長を追求
  • あらゆる病を治療対象
  • 死は「失敗」

問い:

定常社会への移行は、江戸的「受容」への回帰を要求するか?

もしそうなら:

  • 延命治療の制限
  • 「自然な死」の受容
  • 完全な健康の断念

これは、実存的転換を意味します。

Heideggerの「死への存在(Sein-zum-Tode)」:

  • 真正な実存は、死を可能性として引き受ける
  • 死から逃避することは、非本来的

江戸の人々は、Heidegger的に「本来的」だったか?

  • 死を日常的に意識
  • しかし、それは「選択」ではなく「強制」

現代人の課題:

  • 医療技術により、死から「逃避」できる(ように見える)
  • しかし、最終的に死は避けられない
  • 定常社会は、この「死の忘却」からの覚醒を要求するか?

最終的に:

江戸時代の医療と疾病構造の分析は、定常社会の人間的コストを生々しく示します。

それは:

  • ロマン化された「エコロジカル・ユートピア」ではなく
  • 短命、苦痛、不平等に満ちた社会

しかし同時に:

  • 異なる価値体系(受容、諦念、共同体)
  • 現代が失ったもの(死の意識、有限性の自覚)

定常経済を真剣に考えるなら、この暗い側面を直視しなければなりません。

そして、問わねばなりません:

「どの程度の苦痛を、誰が、なぜ引き受けるべきか?」

これは、医学的問いであると同時に、倫理的・政治的・実存的問いです。

あなたの精神科医としての経験と、思想的関心から、この問いへの応答があれば、ぜひ伺いたいと思います。

さらに掘り下げるべき論点(例えば、江戸時代の特定疾患の詳細、比較医療史、宗教と医療の関係、明治以降の医療近代化の過程等)があれば、ご指摘ください。

タイトルとURLをコピーしました