レストレスレッグス症候群(RLS)の治療

レストレスレッグス症候群(RLS)の治療

  • 病態:夜間の下肢不快感・運動衝動。鉄欠乏・妊娠・透析が誘因。ドパミン系・鉄代謝の異常が主体。
  • 診断:ICSD-3-TRの基準に従い、RLS mimics(こむらがえり、末梢神経障害など)との鑑別が重要。IRLS重症度スケールを使用。
  • 治療の流れ
    • 貯蔵鉄欠乏あり → まず鉄補充(フェロミア®等)
    • 貯蔵鉄欠乏なし → ドパミンアゴニスト(プラミペキソール・ロチゴチン)またはα2δリガンド(ガバペンチン エナカルビル)が第一選択
    • augmentation出現時や不眠が残る場合 → ガバペンチン エナカルビルへ切替・併用
  • 非薬物療法:就寝前の運動・マッサージ・シャワー、アルコール・カフェイン制限。
  • 専門家コンサルト:鑑別困難例、重症例、多剤併用例、OSA・パーキンソン病等の合併例。



レストレスレッグス症候群

疾患メモ レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)は、夜間に下肢を動かしたいという衝動が、不快な感覚を伴って起こることを主徴とする神経疾患である。運動の衝動や異常感覚が安静時に悪化し、脚の運動によって改善がみられることが特徴的である。これが原因で不眠と日中の生活の質(QOL)の障害をきたす睡眠関連運動障害としても定義される。周期性下(四)肢運動(periodic leg (limb) movement:PLM)を高率に合併する。患者は、異常感覚を「むずむずする」「むずがゆい」「脚がだるい」「脚が熱い」「脚を動かしたい」など様々な表現で訴えるが、客観的に所見をとらえることが困難であるため、丁寧な問診が必要である。また、RLSの類似病態(RLS mimics)との鑑別診断が重要である。

RLSの誘因には、妊娠、鉄欠乏、末期腎不全(透析)などがある。RLS症状を誘発・増悪させうる薬物には抗ヒスタミン薬、ドパミン受容体拮抗薬、抗うつ薬などがある。RLSの主たる病態は、脳内の鉄欠乏と動態の異常が上位に存在し、ドパミン作動性神経系の異常、アデノシン作動性神経系の低下、グルタミン酸作動性神経系の過剰興奮など、複数の神経化学物質の関与による皮質-線条体-視床-皮質回路の障害が示されている。遺伝的素因については、RLSの最も強いgenetic risk factorとしてMEIS1 polymorphismが確立されていることと、BTBD9 variantがRLSでPLMの増加と関連することが報告されている。


▶診断のポイント

睡眠障害国際分類 第3版改訂版(ICSD-3-TR)の診断基準¹⁾により、RLSに特徴的な脚の感覚症状をとらえることと、RLS mimicsとの鑑別が重要である。RLS mimicsには、下肢こむらがえり、体位不快感、関節痛・関節炎、筋痛、下肢浮腫、末梢神経障害、神経根障害、習慣性貧乏ゆすりがあり、鑑別すべき病態には、神経遮断薬誘発性アカシジア、脊髄症、症候性静脈不全、末梢動脈疾患、湿疹、整形外科的問題、痛む脚動く足趾(painful legs and moving toes)、不安誘発性の落ちつきのなさがある。

RLSの重症度評価には、IRLS重症度スケールが用いられる。治療効果の判定や経過フォローにも有用である。


▶私の治療方針・処方の組み立て方

RLSの治療には非薬物療法と薬物療法がある²⁾。

治療の目標は、RLS症状とこれに伴う不眠の改善とともに日中の活動やQOLを向上させることである。治療の原則は、RLS症状の増悪因子の除去と症状を軽減させるための生活習慣への介入である。

具体的には、可能であれば、原因薬物(ドパミン拮抗薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬)を中止する。悪化させる可能性のある嗜好品(アルコール、ニコチン、カフェイン)の就寝前の摂取を制限する。非薬物療法として、就寝前の適度な歩行や運動、シャワー浴、マッサージ、RLS症状から注意をそらす工夫(例:ゲームに意識を集中する)を行う。

薬物療法は原則として単剤、最小用量から開始し、症状を抑える最小有効量で維持すべきである。副作用の出現時は薬物を漸減あるいは中止して他の薬物に変更する。薬物療法は長期にわたるため、薬物の副作用、RLS症状の進行、ドパミンアゴニスト(プラミペキソール、ロチゴチン)を投与時にはRLS症状の増強(augmentation)に注意する。

貯蔵鉄の欠乏がある例(%TSAT 45%未満、血清フェリチン値75ng/mL未満)では、まず経口または経静脈的に鉄剤を投与する(保険適用外)。

貯蔵鉄の欠乏がない例(%TSAT 45%以上、血清フェリチン値75ng/mL以上)では、ドパミンアゴニスト、またはα2δリガンド(ガバペンチン エナカルビル)を第一選択とする。いずれかの薬物を選択する際には患者背景も考慮する。安定性を考慮する必要がある例では、ロチゴチン(貼付薬)を選択する。RLSによる不眠に対する睡眠薬の単独投与は、催眠効果が得られるものの下肢の異常感覚は残り、むしろ苦痛となるため避けるべきである。


▶治療の実際

薬物療法を施行の際は、貯蔵鉄欠乏の有無を確認する。

【貯蔵鉄欠乏例】

一手目 フェロミア®錠・顆粒(クエン酸第一鉄ナトリウム)1日100〜200mg 分1〜2(食後)、またはフェロ・グラデュメット®105mg錠(乾燥硫酸鉄)1日1〜2錠 分1〜2(空腹時)

二手目〈経口で効果が不十分の場合、処方変更〉フェインジェクト®注(カルボキシマルトース第二鉄)1回500mg週1回(緩徐に点滴静注)

【貯蔵鉄欠乏がない例】

非常に症状の重い例、うつ病の合併例、重度の睡眠中のPLM併存例では、プラミペキソールまたはロチゴチンを試みる。

一手目 プラミペキソール塩酸塩0.125mg錠(プラミペキソール塩酸塩水和物)1回1錠1日1回(夕食後または症状が出現する2〜3時間前。効果発現まで通常、数時間を要する)、2〜4週間経過をみて効果が不十分な場合は1回2錠に増量、吐き気がみられたときはドンペリドン10mg錠(ドンペリドン)1回1錠1日1回、併用

増量するときは2〜4週間かけて漸増する。最大6錠(0.75mg)まで可能であるが、augmentationの出現を避けるため、RLS症状が軽減する最小有効量にとどめることが重要である。自動車運転時などでの突発的な眠気の出現には注意する。

一手目 ニュープロ®パッチ2.25mg(ロチゴチン)1回1枚1日1回(肩、上腕部、腹部等の正常な皮膚に貼付)、効果が不十分な場合は2〜4週間かけて漸増(最大3枚(6.75mg)まで可能)

ドパミンアゴニストは、腎機能低下例や薬物血中濃度の安定性を保ちたい例に処方する。自動車運転時などでの突発的な眠気の出現には注意する。

二手目〈一手目に追加、または処方変更〉レグナイト®300mg錠(ガバペンチン エナカルビル)1回1〜2錠1日1回(就寝前)

ドパミンアゴニストの使用でRLS症状が改善したにもかかわらず不眠の訴えがある場合や、ドパミンアゴニストを最大許容量まで増量してもRLS症状の改善が不十分な場合はドパミンアゴニスト投与によるaugmentationでないことを確認の上、本剤を併用または本剤に切り替える。

三手目〈ドパミンアゴニストが使用できない場合、処方変更〉レグナイト®300mg錠(ガバペンチン エナカルビル)1回1〜2錠1日1回(就寝前)、高齢者や腎機能低下例では1錠から開始

疼痛が強い例、不眠が強い例、不安障害の併存例、衝動制御障害(ICD)の既往例など、ドパミンアゴニストの使用が困難な例に処方する。


▶専門家へのコンサルト

・RLS mimicsとの鑑別が難しいとき

・RLSと診断し、第一選択薬を標準用量で投与しても効果に乏しいとき(特に重症例)

・既に他医で治療を受けているが、薬物の変更が必要と判断されるとき

・多剤併用例で症状のコントロールが困難なとき


・RLS variant(脚の症状に乏しく、脚以外に腕や背部など他の身体部位に症状が出ることがある)の症例

・閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)や不眠症など他の睡眠関連疾患の併存、パーキンソン病、片頭痛など神経疾患の併存、精神疾患(身体表現性障害など)を除外できないとき

・高齢の鉄欠乏症例で、悪性腫瘍のスクリーニングが必要なとき


▶患者への説明のポイント

①規則正しい睡眠習慣を心がける。

②就寝前の嗜好品(アルコール、ニコチン、カフェイン)の摂取を控える。

③日中やじっとせざるをえないときは読書、ゲーム、裁縫など集中できることを見つけ、RLS症状に対して注意が向かないようにする。

④夕方から夜に身体に負担にならない程度の運動をする。

⑤(患者に応じて)就寝前に入浴したり温かい(または冷たい)シャワーを浴びたりする。

⑥経口薬のドパミンアゴニストは効果の発現に数時間を要するため、症状が出現する時間帯に合わせて前もって内服し、また、最小用量にとどめる。

【文献】

  1. American Academy of Sleep Medicine:Restless Legs Syndrome. International Classification of Sleep Disorders. 3rd ed Text Revision. American Academy of Sleep Medicine, 2023, p346-56.
  2. Restless legs症候群診療ガイドライン作成委員会、編:神経治療.2024;41(2):129-76.


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