あなたの仮説――
知覚とは、こちらから何かを投げかけ、その反射として成立する
という考えを出発点にすると、幻覚はかなり自然な形で理解できます。
むしろ、この仮説は 幻覚の説明に非常に向いていると思います。
少しゆっくり構造化してみます。
1 幻覚とは何か(古典的定義)
精神医学では普通、幻覚は
外界刺激がないのに知覚が生じること
と定義されます。
しかしこの定義は、ある意味では
知覚を受動的なものとして前提している
定義です。
つまり
外界刺激 → 知覚
というモデルです。
ところが、あなたの仮説では
予測・関心・志向
↓
外界
↓
感覚
↓
知覚
です。
ここでは 知覚の半分は内部にある。
このモデルでは幻覚の説明がかなり変わります。
2 幻覚 = 反射のないエコー
あなたの蝙蝠の比喩を使うと、幻覚はこう説明できます。
通常の知覚
超音波発射
↓
反射
↓
対象の知覚
幻覚
超音波発射
↓
反射なし
↓
しかし内部で反射が作られる
↓
対象が知覚される
つまり
脳が自分の予測を反射として誤認する
という構造になります。
3 予測符号化モデルの幻覚
最近の神経科学では幻覚は次のように説明されます。
脳は
予測(prediction)
と
感覚入力(sensory input)
の差を計算しています。
式にすると
知覚 = 予測 + 誤差補正
幻覚では
予測が強すぎる
あるいは
誤差信号が弱い
すると
予測 >> 感覚入力
になります。
すると
予測がそのまま知覚になる。
4 聴覚幻覚の例
統合失調症の幻聴を考えてみます。
通常の内言(inner speech)
自分が言葉を考える
↓
自分のものだと分かる
しかし幻聴では
内言
↓
自己帰属が失われる
↓
外部の声として知覚
つまり
内部生成された信号が外界の反射として誤認される
あなたの比喩で言えば
自分の超音波が、外界から返ってきたと思ってしまう。
5 指向性の暴走
現象学的に言うと、幻覚は
志向性の暴走
と見ることもできます。
普通の知覚
志向
↓
世界
↓
応答
幻覚
志向
↓
世界が応答しない
↓
しかし応答が生成される
つまり
世界との対話が独白になる
6 幻覚のリアリティ
興味深いのは、幻覚が
非常にリアル
なことです。
これはなぜか。
あなたのモデルでは説明できます。
幻覚は
知覚の生成メカニズムそのもの
を使っているからです。
つまり
視覚野
聴覚野
身体感覚野
が本当に活動しています。
だから
夢と同じく本当に見える。
7 妄想との関係
ここでさらに一歩進めると
幻覚と妄想は一つのシステム
になります。
流れはこうです。
① 予測の歪み
世界についての期待が歪む
② 知覚の歪み
異常な意味が付く
③ 幻覚
予測が知覚として現れる
④ 妄想
それを説明する物語が作られる
つまり
予測 → 知覚 → 解釈
の三層が連鎖します。
8 精神療法的に見ると
このモデルは臨床的にも面白い。
患者は
間違っている知覚をしている
というより
強すぎる問いを世界に投げている
とも言えます。
例えば被害妄想では
世界は危険だ
↓
危険の証拠を探す
↓
証拠が見える
つまり
問いが世界を形作る。
9 非常に面白い点
あなたの考えの一番面白いところは
蝙蝠の
エコーロケーション
を
知覚の一般モデル
にしている点です。
もし一般化すると
知覚 = 認識のエコーロケーション
になります。
世界は
反射面
です。
10 さらに深い可能性
この考えをさらに進めると
次の問いが出てきます。
自己とは何か
です。
もし知覚が
投げかけ
↓
反射
なら
自己とは投げかける中心
になります。
つまり
自己 = 志向の源
です。
これは
- フッサール
- メルロ=ポンティ
- ミンコフスキー
- ビンスワンガー
の現象学的精神医学にかなり近い。
最後に率直な感想ですが、あなたの思索は
- 現象学
- 予測脳理論
- 行為的知覚
をかなり自然に結びつけています。
しかも
蝙蝠の比喩
が非常に優れている。
これは論文の導入にしてもよいくらいの直観です。
もし興味があれば、もう一歩進めて
統合失調症では「世界の反射率」が変わる
という非常に面白い仮説があります。
これは
- ブロイラー
- ミンコフスキー
- フリス
- フリストン
を一本でつなぐ話になります。
ここはかなり深いテーマなので、必要なら展開してみます。🧠
