本書(『アクセプタンス&コミットメント・セラピー 第2版』)で紹介されている、メタファー(たとえ話)以外の具体的な**技法(エクササイズ、ワーク、言語的介入、アセスメントツール)**を、ACTのプロセスごとに整理して示します。
1. マインドフルネス・今、この瞬間との接触
- マインドフルな呼吸・ボディスキャン: セッションの冒頭などで1〜2分間、自分の呼吸や体の感覚に注意を向ける基本的な練習です。
- 「夕日の心のモード (Sunset mode of mind)」: 物事を分析・評価して解決しようとする「問題解決のモード」に対し、ただそこにあるものを観察し、感謝する心の状態を育む練習です。
- 注意のトレーニング: 特定の音や視覚情報に注意を向け、その焦点を広げたり絞ったりするスキルを高める訓練です。
2. 脱フュージョン(思考の無力化)
- 「心の名前付け (Naming the Mind)」: 自分の思考プロセスを「私の心(マインド)」や「ボブ」など特定の名前で呼び、自分自身と切り離して扱う手法です。
- 「『しかし (But)』を『そして (And)』に変える」: 「行きたい、しかし不安だ」を「行きたい、そして不安だ」と言い換えることで、思考の対立を解消し、行動を制限させないようにする言語的介入です。
- 単語の反復(「ミルク、ミルク、ミルク」エクササイズ): 不快な思考(例:「私はダメだ」)を非常に速く何度も繰り返すことで、その言葉の意味的な支配力を弱め、単なる「音」として体験する技法です。
- カビーホーリング (Cubbyholing): 思考や感情が出てきたときに、その内容に反応するのではなく、「あ、これは評価だ」「これは感情だ」といった具合に分類(ラベリング)する手法です。
3. 受容(アクセプタンス)と心理的準備
- フィジカライジング (Physicalizing): 自分の不快な感覚(例:抑うつ、不安)を、体の外にある特定の形、色、重さ、質感を持った「物体」として想像し、観察するゲシュタルト療法の技法を応用したワークです。
- クリーンな痛みと汚れた痛みの区別: 人生で避けられない本来の苦痛(クリーンな痛み)と、それを避けようとして生じる余計な苦しみ(汚れた痛み)を視覚化し、区別する介入です。
- 「受容・苦痛・活力の記録 (Willingness–Suffering–Vitality exercise)」: 日々の「(不快な体験を引き受ける)受容の度合い」「苦痛の度合い」「活力の度合い」を数値化して記録する宿題です。
4. 文脈としての自己(観察する自己)
- ストーリーラインの執筆 (Storyline written exercise): 自分の人生の歴史を書き、その中の「客観的事実」と、自分の心が付け加えた「心理的反応や評価」を色分けして、自分の物語と自分自身を切り離すワークです。
- 「完全で完璧 (Whole, Complete, Perfect)」: 肯定的な評価の言葉(私は完璧だ、など)を自分にかけてみて、それに対して心がどのように反論や評価を自動的に生成するかを観察する練習です。
5. 価値の明確化とコミットメント
- 「自分のお葬式 (What Do You Want Your Life to Stand For?)」: 自分が死んだ後、大切な人たちにどのような人間として思い出されたいかを想像し、自分の深い価値観に接触するワークです。
- 「墓碑銘 (Tombstone)」: 自分の墓石に刻みたい言葉を考えることで、人生で何を大切にしたいかを明確にする技法です。
- ブルズ・アイ (Bull’s Eye): ダーツの的のような図を使い、各領域(仕事、人間関係、健康など)で、自分がどれだけ価値に沿った生活を送れているかを自己評価する視覚的なツールです。
- 目標・行動・障壁の記録 (Goals, Actions, and Barriers Form): 価値に基づいた具体的な目標を立て、その実行を妨げる心理的・外的な障壁を特定し、対策を練るためのシートです。
6. アセスメント・概念化ツール
- ヘキサフレックス・ケース・モニタリング (Hexaflex Case Monitoring Tool): 心理的柔軟性の6つのプロセスを10点満点で評価し、クライエントの強みと弱みをレーダーチャートのように可視化するツールです。
- サイフレックス (Psy-Flex Planning Tool): 「オープン、センター、エンゲージ」の3つのスタイルに基づいて介入計画を立てるための計画用紙です。
- ACTアドバイザー (ACT Advisor): セッションごとに6つのプロセスをクイックに評価し、治療の進捗を記録するためのツールです。
