「ここ・いま」

セラピストが「ここ・いま」を活用する際の基本的なステップは、以下のようになる:

気づく(recognize):セラピストは、今この瞬間に起きている感情、緊張、沈黙、言葉の裏にある微細な変化に注意を向ける。

言葉にする(voice it):気づいたことを率直に、温かく、非攻撃的にクライアントに伝える。「今、あなたが少し距離をとっているように感じます」「その話をするとき、声が急に小さくなりましたね」といった形で、観察された「現象」を共有する。

探求する(explore):それが何を意味しているのか、どう感じているのか、何が引き起こしているのかを、クライアントとともに探っていく。「今、この部屋で起きていること」を共同で理解しようとする態度が重要である。

こうしたプロセスを通じて、セラピストとクライアントの関係は単なる「問題を語る場」から、変容の場、実験の場、癒しの場へと進化していく。

「ここ・いま」の活用は、患者にとって強力な気づきの機会となる。多くの患者は、外の世界で繰り返している対人パターンを、セラピストとの関係の中でも無意識に再演する。それらのパターンが「ここ・いま」で現れたときにこそ、セラピストはそのパターンを明確にし、患者と共に探求することができる。

セラピスト自身が単なる「聴き手」ではなく、リアルに関係性の中に存在していることを示すものであり、患者にとっても安全に自己を探求できる場となる

「ここ・いま」は、クライアントが他者との関係において持ち込むパターンが、リアルタイムで再生される場である。それを観察し、共有し、再構築することが治療の核心である

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