1.「相手の視点で日記を書く」など、自己の視点を外す練習をする。
例:誰かと喧嘩した場面を、「相手側の視点で」再記述してみる。
2.自分の話ばかりに集中しがち。相手に焦点を合わせる。
方法:相手の発言に対して「要約」や「感情の反映」だけで応答してみる。
3.共感される経験を通して、共感する力も育つ。
共感能力を養う方法は、精神療法や心理教育の実践において重要なテーマです。特に**自己愛性パーソナリティ障害(Narcissistic Personality Disorder: NPD)**にみられる「共感の欠如」は、治療的関与と心理的成長のための中核的課題とも言えます。
🔷 そもそも「共感」とは?
共感はおおまかに2つに分類されます:
種類 | 内容 |
---|---|
感情的共感(emotional empathy) | 相手の感情を感じ取る力。「あの人が悲しんでいる」と感情を共有できる |
認知的共感(cognitive empathy) | 相手の立場や視点を理解する力。「この人はなぜ怒っているのか」と考える |
自己愛が強い人は、とくに感情的共感の障害が指摘されやすい。
🔷 共感能力を育てるための実践的アプローチ
① マインドフルネスと内省力の強化
- **自分の感情に気づく練習(情動認識)**を通じて、他者の感情にも気づきやすくなります。
- マインドフルネス瞑想は「今ここの気づき」を高め、内面への感受性を養います。
📌 提案:「自分は今、何を感じているか」を1日3回、短く言語化する練習から。
② 他者の立場で物語るトレーニング(視点取得)
- ロールプレイや「相手の視点で日記を書く」など、自己の視点を外す練習が有効です。
📌 例:誰かと喧嘩した場面を、「相手側の視点で」第三者的に再記述してみる。
③ 「共感的に聴く」練習
- 自己愛傾向のある人は、自分の話ばかりに集中しがちです。
- 沈黙を受け入れながら相手に焦点を合わせることを学びます。
📌 方法:相手の発言に対して「要約」「感情の反映」だけで応答してみる(例:「それはつらかったんだね」)。
④ 安全な関係の中で感情経験を共有する
- ロジャーズ派心理療法などでは、セラピストの真正性と共感的理解により、徐々に自己の内面が開かれていきます。
- 共感される経験を通して、共感する力も育つという逆説がここにあります。
⑤ 対象関係論・アタッチメント理論的アプローチ
- 自己愛の背景には、不安定な愛着形成や初期の対象喪失があることが多く、こうした領域に取り組むことで、他者を「対象」ではなく「人」として感じる能力が芽生えます。
🔶 注意点
- 共感の欠如=冷酷・悪意ではありません。発達的・防衛的な結果であることが多く、段階的な成長が必要です。
- 強制的に「共感せよ」と言っても効果は薄く、まずは自己の感情へのアクセスと自己肯定感の回復が先に来るべきです。
🔷 実践に役立つ理論・方法
理論・方法 | 特徴 |
---|---|
ロジャーズの「パーソンセンタードアプローチ」 | 共感的理解・無条件の肯定的関心 |
精神化機能(mentalization)アプローチ | 他者の心の働きを推測する訓練 |
アサーショントレーニング | 感情と欲求を適切に表現する練習 |
エンカウンターグループ | 相互の関係性の中で自己と他者を体験的に学ぶ |
🔚 まとめ
共感能力は「生得的にある/ない」ではなく、環境・体験・訓練によって育つ能力です。とくに自己愛が強い人にとっては、まず「自分が共感された」経験を安全に積むことが、回復と発達の入り口になります。