コンパッション-6

以下に、「コンパッション(慈悲)」をめぐる誤解されやすい用語を中心に整理した対比表を示します。心理臨床・仏教・一般語の混用によって生じる混乱や誤用を防ぐための参照表としてご活用ください。


🔷 コンパッション関連の誤解されやすい用語 対比整理表

用語誤解されやすい意味正確な意味・定義(文脈別)備考・補足
コンパッション(compassion)優しさ・思いやり一般/弱さ/甘やかし他者または自己の苦しみに気づき、それを和らげたいという動機(CFT、仏教共通)感情というより「行動を導く動機」
同情(sympathy)共感・理解と同義とされがち他者の苦しみに対し「気の毒に」と感じること。共感の深さは伴わないコンパッションとは異なり、距離を置いた感情
哀れみ(pity)親切で優しい気持ち「上から目線」のニュアンスを含む、コンパッションとは区別されるべき英語でも軽蔑的に使われることがある
共感(empathy)相手の感情と同一化すること相手の感情や視点を理解・共有しようとする能力(感情的・認知的側面がある)コンパッションとはしばしば共存するが、感情の反応でとどまる
優しさ(kindness)誰にでも穏やかに接する性格行動や態度としての穏やかさ。苦しみを対象とするか否かは問わないコンパッションの表現の一部になり得るが、同義ではない
慈悲(仏教)優しい気持ち・情け**「慈=幸福を願う」「悲=苦しみを取り除く」**という積極的な心の方向性「喜・捨」とあわせて「四無量心」を成す
自己コンパッション(self-compassion)自己中心的/甘え苦しむ自己に対して、非批判的に優しさ・理解を向けること(Neffの定義)自己批判傾向の強い人への心理的介入として有効
慈善(charity)慈悲と同じ社会的援助・寄付など外的行為を意味することが多く、内的な動機・態度とは異なる「慈善」は慈悲的動機のひとつの表現形ではある
**感情(emotion)**としてのコンパッション一時的な気持ち・涙もろさCFTでは、コンパッションは感情よりも動機・意図として持続的に定義される「感じる」より「選びとる」側面が重要

🔶 注意すべき混同例

誤用の例誤りの背景適切な理解
「コンパッション=甘やかし」苦しみに優しく接する=厳しさが足りないと誤認本来は苦しみに向き合い、必要な行動をとる勇気ある姿勢
「同情するのがコンパッション」外から見て哀れむだけでも慈悲と思われがちコンパッションは関与と行動を伴うもので、観客的同情ではない
「自己コンパッションは自己中心」自分に優しくすることは他者を無視するという誤解他者に優しくするためにも、まず自己批判の暴力性から解放される必要がある

🔚 補足

  • 英語での文脈でも、“compassion is not pity”(コンパッションは哀れみではない)という強調が頻繁に見られます。
  • 特に医療・心理の現場では、共感(empathy)とコンパッションの違いを理解しておくことが、バーンアウトの予防や援助職の持続可能性に直結します。

さらに、「教育現場」「医療者向け研修」など特定の文脈で用いられる際の注意点や用語解説も作成可能です。ご希望があればお申し付けください。

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