ポスト・ポストモダン的実践は、「相対主義」や「真理なき世界」への批判的継承として、教育・宗教・政治の分野においても深く関わってきています。
ここでは、以下の3つの文脈に分けて応用例を提示します。
🏫 1. 教育における応用
▶ テーマ:知識の再構築と関係性の回復
🔹 背景
ポストモダンの教育観では、「知識は権力である」「真理は構築されるもの」とされ、教育制度への懐疑が強まりました。
ポスト・ポストモダンではそのうえで、学びを通じたつながりの再創造が志向されます。
🔹 実践例
領域 | 応用例 | 解説 |
---|---|---|
ナラティヴ・ペダゴジー | 生徒自身の「物語」に基づいた学習設計 | 知識の習得ではなく、「意味づけの共同作業」へ |
批判的リテラシーの再構築 | 単なる批判ではなく、希望の語り直しへ | 社会的文脈での「意味ある問い」の育成 |
教室を「生成的な場」と捉える | 知識伝達ではなく、共に考える場 | 教師と生徒がともに「まだ知らないこと」に開かれる |
🔹 キーワード
- 関係志向の教育
- 語ることの教育(storying education)
- 傷つきやすい知(vulnerable knowing)
⛪ 2. 宗教/スピリチュアリティにおける応用
▶ テーマ:信じがたい時代における信じるということ
🔹 背景
ポストモダンは、宗教的教義の絶対性を批判しましたが、ポスト・ポストモダンは、**それでも人は「祈り、求め、応答したい」**という宗教性を見つめ直します。
🔹 実践例
領域 | 応用例 | 解説 |
---|---|---|
リチュアルの再創造 | 教義より「関係性」「語り」「沈黙」を重視する儀礼 | 死者とともにある感覚を育む場(デスカフェなど) |
脱宗教的スピリチュアリティ | 無宗教的な人々がもつ霊性に光を当てる | 例:自然とつながる感覚、語りの聖性など |
「共に祈る」経験 | 多信仰間での共感・沈黙の共有 | 神の名を共有しない人々のあいだの霊性的対話 |
🔹 キーワード
- アナテイズム(anatheism):神の「不在の後に、なお来るもの」への開かれ
- 魂のナラティヴ
- 霊性としての関係性
🏛 3. 政治・公共性における応用
▶ テーマ:分断後の対話と共存在の政治
🔹 背景
ポストモダンは「権力の不可視化」「言説の構築性」などを強調し、国家・制度・民主主義に対する不信感を助長しました。
その反動として、ポスト・ポストモダンは「語り合える公共空間の再創造」を模索します。
🔹 実践例
領域 | 応用例 | 解説 |
---|---|---|
傷ついた市民性(wounded citizenship) | 歴史的被害・差別・トラウマを共有しながら語る | 真理の押し付けではなく「聞きあう政治」へ |
対話型民主主義 | 「勝者」を決めるのではなく「共に語る」空間を育てる | 熟議的民主主義、傾聴会、語りの場づくりなど |
記憶と和解の政治 | 個人・共同体の記憶をどう共存させるか | 例:真実和解委員会、ハンセン病差別語り直しの場など |
🔹 キーワード
- ナラティヴ・ポリティクス(語りによる政治)
- 脆さに基づく共通性(common vulnerability)
- 想像的共感(imaginative empathy)
🎯 まとめ:ポスト・ポストモダンの核心とは?
項目 | 説明 |
---|---|
✅ 解体のあとに「関係を取り戻す」 | 脱構築を経て、再び関係性を基盤にする学びや信仰 |
✅ 「わからなさ」と共に生きる力 | 絶対的な答えではなく、問い続ける姿勢を重視 |
✅ 個別性のなかの共感可能性 | 多様性を尊重しながら、共に意味を紡ぐ対話 |
✅ 「再び共に生きる」ことへの志向 | 分断の時代に、ナラティヴと関係性を軸にした再構築をめざす |