短期支持的心理療法(Brief Supportive Psychotherapy: BSP)について

  1. 支持的心理療法:
  2. なぜ効くの?心理療法の心臓部「共通因子」を学ぼう
  3. 支持的心理療法とは?感情に寄り添うセラピーの基本
  4. 支持的心理療法に関する学習ガイド 理解度確認クイズ
  5. 短期支持的心理療法(BSP)の再定義
    1. 1. 序論:短期支持的心理療法(BSP)の再定義
      1. 1.1. 「支持的」という用語の再評価
      2. 1.2. BSPの起源と科学的妥当性
    2. 2. BSPの理論的基礎:「共通因子」の活用
      1. 2.1. 心理療法の巨人の肩の上に立つ
      2. 2.2. 効果的な心理療法を構成する7つの共通因子
    3. 3. BSPの中核的要素:感情への焦点
      1. 3.1. 感情的覚醒(Affective Arousal)の治療的意義
      2. 3.2. 感情焦点療法と曝露ベース療法の峻別
    4. 4. 臨床実践におけるBSPの位置づけ:他療法との比較分析
      1. 4.1. BSPと他の主要な心理療法との比較
    5. 5. BSPセッションの実際:セラピストの役割と技法
      1. 5.1. BSPにおけるセラピストの中心的課題
    6. 6. 結論:BSPを臨床実践に統合する意義
      1. 6.1. BSPがもたらす臨床的価値
    7. 1. 支持的心理療法の定義と歴史的背景
      1. 曖昧な包括的用語としてのSP
      2. 軽蔑的な起源
      3. 精神医学教育における位置づけ
    8. 2. 短期支援的心理療法(Brief Supportive Psychotherapy: BSP)
      1. 研究における役割
      2. BSPの適用
    9. 3. BSPと心理療法の共通因子
      1. 感情的焦点の重要性
    10. 4. 他の治療法との比較
      1. 精神力動的治療法
      2. 対人関係療法(IPT)
      3. 認知行動療法(CBT)
  6. 共通因子の起源と定義
  7. 共通因子と支持的心理療法(BSP)
  8. 感情的覚醒の重要性
    1. 感情的覚醒の定義と重要性
    2. 患者による感情の回避
    3. 感情の機能と治療の焦点
    4. Brief Supportive Psychotherapy (BSP) における感情的覚醒
    5. 感情的覚醒と他の治療法との比較
    6. 1. BSPの定義、起源、および目的
      1. 開発と構造
      2. 支持的心理療法との区別
    7. 2. BSPの核となる原則と焦点
      1. 感情的焦点(Affective Arousal)
      2. 共通因子の採用
    8. 3. 他の治療法との比較
      1. 対人関係療法(IPT)との比較
      2. 精神力動的治療法との比較
      3. 認知行動療法(CBT)との比較
    9. 4. 研究と臨床的有効性
    10. 1. 心理療法アウトカム研究の比較対照の課題
      1. 待機リストの問題点
      2. アクティブな対照条件の必要性
    11. 2. 短期支援的心理療法(BSP)の誕生と研究における役割
      1. アクティブな対照条件としてのBSP
    12. 3. BSPが使用された具体的な治療試験
      1. HIV/AIDS関連うつ病試験 (Markowitz et al., 1998)
      2. 慢性抑うつ病の多施設研究
      3. その他の研究

支持的心理療法:

要旨
「支持的心理療法」という用語は、臨床現場で最も広く実践されている心理療法の一つとされながらも、その定義は曖昧で、しばしば軽蔑的な意味合いで誤用されてきた。歴史的には、精神分析に適さないとされた重篤な患者を「支える」ための二流の治療法と見なされてきた。 本資料で詳述する**短期支持的心理療法(Brief Supportive Psychotherapy: BSP)は、こうした曖昧な概念とは一線を画す、明確に定義され、マニュアル化された治療法である。30年以上前に心理療法研究の厳密な「アクティブな対照条件」として開発されたBSPは、単なるプラセボではなく、それ自体が強力な治療効果を持つことが数多くの無作為化対照試験で証明されている。 BSPの核心は、感情への集中的な焦点と、カール・ロジャーズやジェローム・フランクによって提唱された「共通因子」の活用にある。特に「感情的覚醒(Affective Arousal)」**を治療の中心に据え、患者が自らの感情を安全に体験し、理解し、許容できるよう支援する。このアプローチは、チャートや宿題を用いず、治療関係と感情的プロセスそのものを重視する。 BSPは、うつ病をはじめとする気分障害や不安障害に対して高い有効性を示しており、その累積的な研究成果は治療ガイドラインへの採用を正当化するものである。さらに、BSPは特定の治療法であると同時に、認知行動療法(CBT)など他のアプローチを実践するセラピストが、治療における感情の決定的な役割を再認識し、自らの臨床スキルを向上させるための基盤的モデルとしても極めて重要な示唆を与える。

  1. 支持的心理療法の再定義

    1.1. 従来の認識と問題点
    支持的心理療法は、長らく誤解と過小評価に晒されてきた。その主な問題点は以下の通りである。 • 定義の曖昧さ: この用語は包括的すぎて、「治療的アライアンスの強化」から「豊かな賞賛」まで、ほとんどあらゆる介入を指し示すことができ、明確な定義が欠如している。 • 軽蔑的な含意: 歴史的に、精神分析が支配的だった時代に、分析に適さない(より重症で不安定な)患者に対する「二流の治療法」として位置づけられた。その目的は、根本的な変容よりも、既存の精神的防御を強化し、患者を安定させることにあった。 • 受動的なイメージ: しばしば「手を取るだけ」のような、焦点が定まらない良性の介入と見なされ、構造化された他の治療法に反応しない患者への最終手段と考えられてきた。

    1.2. 短期支持的心理療法(BSP)の登場
    こうした曖昧な状況に対し、著者(John C. Markowitz)と彼の同僚たち(Dr. Michael Sacks他)は、30年以上前にコーネル大学医学部で**短期支持的心理療法(BSP)**を開発した。 • 開発の経緯: 当初、心理療法研究における待機リスト(倫理的問題やノセボ効果が懸念される)に代わる、倫理的かつ有効な「アクティブな対照条件」として考案された。 • マニュアル化: 16セッションの週1回の治療として大まかに概説された治療マニュアルが作成された。 • 基本理念: 治療の基礎を、すべての優れた心理療法に共通する以下の要素に置いた。     ◦ 治療的アライアンスの構築     ◦ 感情の寛容と表現の奨励     ◦ 心理療法の「共通因子」の活用
  2. 短期支持的心理療法(BSP)の核心的特徴
    BSPは、他の治療法とは一線を画す明確な特徴を持つ。それは、心理療法をその感情的な核にまで蒸留した、骨子となるアプローチである。

    2.1. 感情への集中的焦点 BSPの中核であり、常に中心的な焦点となるのが**感情(Affect)**である。 • 感情の探求: セラピストは患者の感情について問いかけ、感情を引き出し、患者がそれを探求し、名付けるのを助ける。 • 感情の許容: 痛みを伴う感情でさえも危険ではなく、対処可能であり、抑圧する必要はないと患者が理解するのを支援する。 • 感情の有用性: 感情は個人の内的・外的な状況に関する重要な「信号」であると捉える。患者が自分の感情を信頼し、敵ではなく味方と見なせるようになることを目指す。 • 是正的感情的経験: 治療的出会いを通じて、患者が「すべての人が自分が恐れるようには反応しない」と発見する体験を促す。

    2.2. 「共通因子」の活用
    BSPは、ジェローム・フランクらが提唱した、治療法の種類に関わらず効果的な心理療法に共通する「共通因子」を意図的に活用する。 共通因子 説明 感情的覚醒 患者にとって意味のある感情的な強度。治療的出会いを生き生きとさせ、記憶に残るものにする。 セラピストに理解されている感覚 治療的アライアンスの基盤。患者が一人ではないと感じるための対人関係的サポート。 理解のための枠組み 患者の苦悩に対する説明と、治療がなぜ助けになるのかという根拠の提供。 専門知識 セラピストが患者を助けるための訓練と経験を持っているという信頼感の醸成。 治療的手順(儀式) 安全で予測可能な治療構造。セッションにおける一貫した手順が変化の方法を提供する。 改善への楽観主義 現実的な治療の見通し。絶望は症状であり、予後ではないというメッセージ。 成功体験 治療を通じて患者が対処法を見つけ、ポジティブな変化を起こすのを助けることによる再士気向上。

    2.3. 構造と他の治療法との比較
    BSPは、その構造とアプローチにおいて他の主要な心理療法と区別される。 • 構造: チャート、エクササイズ、宿題、議題設定は行わない。心理教育は最小限に留める。 • 精神力動的療法との関係: 転移の解釈や無意識の幻想への言及は行わないため、厳密な精神力動的療法ではないが、感情を重視する点で「精神力動的に友好的」と言える。 • 感情焦点療法(EFT)との関係: ロジャーズ派の流れを汲む点で共通するが、BSPは特定の診断(主にうつ病)に適用され、時間制限がある点で異なる。 • 対人関係療法(IPT)との関係: BSPは「IPTから感情に焦点を当てた核心部分を抜き出したもの」と表現できる。「IPTはBSPプラス」と見なすことも可能で、IPTが感情的理解に行動的・環境的な焦点を加えるのに対し、BSPは感情そのものに留まる。
  3. 臨床研究における有効性
    BSPは、研究のための対照条件として開発されたにもかかわらず、一貫して高い治療効果を示してきた。 • アクティブな対照条件としての実績: 国立精神衛生研究所(NIMH)が資金提供した複数の研究で、IPTや認知行動療法(CBT)の比較対象として用いられ、非常に優れた成績を収めた。他の治療法がBSPを上回ることは容易ではなく、「非常に厳密な対照」であることが証明されている。 • 実証された治療効果:     ◦ 抑うつとHIV/AIDSを併発した患者の治療において、抗うつ薬イミプラミンやIPTと同等の効果を示した(Markowitz et al., 1998)。     ◦ 慢性うつ病に対する治療法として、米国やドイツでの多施設共同研究で有効性が確認されている(Kocsis et al., 2009; Schramm et al., 2017)。     ◦ 気分障害だけでなく、不安障害など他の精神障害にも適用可能であるとされる。 • 結論: 累積された研究結果は、支持的心理療法(BSPとして明確に定義されたもの)をうつ病治療ガイドラインに組み込むことを正当化するものである。
  4. 現代心理療法への示唆
    BSPは、特定の治療法であると同時に、現代の心理療法全体が直面する課題に対する重要な示唆を与えている。

    4.1. 感情的覚醒の重要性の喪失への警鐘 著者は、現代の心理療法、特にCBTの実践において、感情への焦点が失われつつあることに懸念を表明している。 • 「頭でっかちな」治療: 一部のCBTは、感情と結びつかない「乾燥した、機械的な、知的な演習」になりがちである。 • セラピストの感情回避: 構造化された治療法を好むセラピストの中には、強い感情に不快感を抱き、それを避ける傾向がある。 • 感情の再導入: BSPは、感情的覚醒が治療関係を深め、記憶に残る効果的な治療体験を生み出すために不可欠であることを強調する。「第三の波」の認知療法(例:ACT)が感情を再導入しようとしているのも、この課題を反映している。

    4.2. すべてのセラピストのための基盤モデル BSPは、特定の学派に属するセラピストにとっても、自らの臨床実践を強化するための有用なモデルを提供する。 • スキルの強化: 経験豊富なCBTセラピストでさえ、BSPのような感情焦点型のアプローチを学ぶことで、患者理解に新たな次元が加わる可能性がある。 • 実践の統合: BSPの原則を学ぶことで、セラピストは自らが実践している他の治療法(CBT、IPTなど)の効果を高めることができる。 • 普遍的な基盤: どのような治療法を実践するにせよ、「共通因子」に基づく基盤はそれを強化することができる。BSPは、その基盤を効果的に活用するための具体的かつ検証されたアプローチを提示している。

なぜ効くの?心理療法の心臓部「共通因子」を学ぼう

導入:心理療法の「魔法」の正体 心理療法の世界へようこそ。これから様々な理論や技法を学んでいく中で、あなたはある素朴な疑問に突き当たるかもしれません。 「なぜ、認知行動療法(CBT)や精神分析的療法など、全く異なるアプローチの心理療法が、どちらも効果を上げることができるのでしょうか?」 ある治療は思考のパターンに焦点を当て、またある治療は過去の経験を深く掘り下げます。アプローチは全く違うのに、なぜどちらも人を癒す力を持つのでしょう。その答えの鍵を握るのが、特定の技法だけでなく、すべての優れた治療に共通する**「共通因子(Common Factors)」と呼ばれる要素です。 この重要な概念は、心理療法の巨人であるジェローム・フランク(Jerome Frank)やカール・ロジャーズ(Carl Rogers)**といった先駆者たちによって探求されてきました。彼らは、治療法ごとの違いの奥に、治療を成功に導く普遍的な心臓部があることを見出したのです。 この文書を読み終える頃には、あなたはあらゆる心理療法の基礎となる本質的な要素を理解し、未来のセラピストとしての揺るぎない土台を築く第一歩を踏み出していることでしょう。 では、その「共通因子」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

  1. すべての治療法の土台となる「共通因子」とは? 「共通因子」とは、治療の理論や流派に関わらず、効果的な心理療法に共通して見られる要素のことです。 様々な料理が異なるレシピを持っていても、「適切な火加減で加熱する」「塩で味を調える」といった共通の基本手順があるように、心理療法にも流派を超えた成功の秘訣が存在します。ジェローム・フランクらが提唱した主要な7つの共通因子は、まさにその「成功の秘訣」と言えるでしょう。 共通因子 説明 感情的覚醒(反応) 感情を安全な治療の場で体験すること。 セラピストに理解されていると感じること(関係性) 信頼できる治療関係(治療的アライアンス)。 理解のための枠組み(根拠) 苦しみの原因と治療法に関する納得のいく説明。 専門知識(厳密さ) セラピストが助けになるという信頼感。 治療的手順(儀式) 安心感を与える一貫したセッションの進め方。 改善への楽観主義(リアリズム) 回復できるという現実的な希望。 成功体験(再士気向上) 小さな成功を積み重ね、自信を取り戻すこと。 これらの因子はすべて重要ですが、特に治療の成功に不可欠とされる3つの要素を掘り下げてみましょう。
  2. 治療の成功を左右する3つの鍵 ここでは、特に重要な3つの共通因子について、それぞれがなぜ治療に不可欠なのかを解説します。 2.1. 鍵その1:感情的覚醒 ― 「感じる」ことの力 多くの患者さん(そして時にはセラピストでさえも)は、不安、悲しみ、怒りといった、いわゆる「ネガティブな」感情を避けようとします。これらは苦痛を伴うため、「悪い」「危険なもの」と見なされがちです。 しかし、感情を避けることには大きな問題が潜んでいます。 • 感情は重要な「信号」である 感情はランダムに湧き上がるものではなく、自分自身の心の状態や、人生で何が起きているかを教えてくれる大切なサインです。 • 抑圧しても感情は消えない 感情に蓋をしようとしても、それはなくなりません。抑圧された感情は、後になって別の形で再浮上し、さらなる問題を引き起こす可能性があります。 【学習のポイント】 感情を伴わない治療は、心に残らない退屈な講義のようなものです。感情を安全な場で体験することこそが、治療を記憶に残り、変化を促す**「生きた経験」に変えるのです。 2.2. 鍵その2:治療的アライアンス ― 「わかってもらえた」という安心感 治療的アライアンス(Therapeutic Alliance)は、単にセラピストと患者さんが仲良くなることではありません。その中核は、「このセラピストは、自分のことを感情的に理解してくれている」と患者さんが感じられることにあります。 この考え方の基礎には、カール・ロジャーズが提唱した「共感的理解(empathic understanding)」があります。セラピストが患者さんの世界を深く理解しようと努める姿勢そのものが、強力な治療関係の土台となるのです。 【学習のポイント】 患者さんが「この人になら話せる」という安全基地を感じられて初めて、心の奥深くにある悩みを打ち明け、新しい一歩を踏み出す勇気が生まれるのです。この信頼関係こそが、すべての治療技法が機能するための土台となります。 2.3. 鍵その3:改善への楽観主義 ― 現実的な希望の光 この因子は、単なる気休めの励ましや「大丈夫ですよ」といった陽気な安心感とは全く異なります。この点は、次の力強い言葉に集約されています。 絶望は症状であり、予後ではない これは、セラピストの専門知識と、治療がどのように効果を発揮するのかという枠組み(根拠)によって支えられた「現実的な希望」**です。「あなたの苦しみは治療可能であり、今は辛くても、良くなる可能性が高い」という見通しを、セラピストが専門家として示すことが重要です。 【学習のポイント】 治療という困難な旅を続けるためには、目的地にたどり着けると信じる力が必要です。セラピストが示す現実的な希望は、患者さんが諦めずに治療に取り組むためのコンパスの役割を果たすのです。 ここまで共通因子の重要性を見てきました。では、未来のセラピストである皆さんは、この知識をどう活かせばよいのでしょうか?
  3. 未来のセラピストであるあなたへ:共通因子を自分の力にする これからあなたは、様々な心理療法の理論や特定の技法を学んでいくでしょう。しかし、忘れないでください。今回学んだ「共通因子」こそが、すべての学習の基盤となります。 特定の理論や技法に偏りすぎると、治療の心臓部であるはずの共通因子、特に感情的なつながりを見失ってしまう危険性があります。事実、現代のセラピストは認知スキルの指導に集中するあまり、患者がどう感じているかを理解し、それを治療に活かすことへの関心が薄れがちだ、という懸念も指摘されています。 未来のセラピストであるあなたへのアドバイスは、次の2つです。 • 常に「感情」に耳を傾ける どんな治療法を実践するにしても、常に「患者さんは今、何を感じているのだろう?」と問いかける姿勢が、治療を深めます。感情は、患者さんの内面世界を理解するための最も重要な手がかりです。 • 信頼関係を何よりも大切にする 高度なテクニックを駆使する前に、まず一人の人間として患者さんに向き合い、理解しようと努めること。それ自体が、最も強力な治療ツールになります。 共通因子を意識し、磨き続けること。それが、あなたが将来どんな治療アプローチを選んだとしても、効果的なセラピストになるための揺るぎない土台となるでしょう。

支持的心理療法とは?感情に寄り添うセラピーの基本

導入

こんにちは。心理カウンセラーとして、また教育者として、心の仕組みやそのケアについてお伝えしています。

皆さんは「心理療法」や「カウンセリング」と聞くと、どんなイメージを持つでしょうか?もしかしたら、少し専門的で難しいものと感じるかもしれませんね。今回は、数ある心理療法の中でも、特に「支持的心理療法」というアプローチについて、その基本を分かりやすく解説していきます。

実は「支持的心理療法」という言葉は、専門家の間でも広く使われている一方で、時には誤解され、「ただ話を聞くだけの弱い治療法」のように軽んじられてしまうことがあります。

しかし、これからご紹介する**短期支持的心理療法(Brief Supportive Psychotherapy: BSP)**のように、その目的と方法が適切に定義されたアプローチは、あらゆる『良い心理療法』のまさに核となる要素を凝縮した、きわめて強力な介入(介入手法)なのです。

1. 支持的心理療法が生まれた背景

まず大切なのは、BSPが単なる「励まし」や「気休め」ではなく、科学的な研究の中から生まれた本格的な心理療法であるという点です。

薬の効果を調べる研究では、本物の薬と見た目がそっくりな「偽薬(プラセボ)」を使って、薬の本当の効果を確かめます。しかし、心理療法の研究では、このような「何もしない治療」を用意することが非常に難しいという課題がありました。

研究によっては、治療を待っているだけの人たち(待機リスト)と比較することもありましたが、これは苦しんでいる人にとって倫理的な問題があります。そこで研究者たちは、「何もしない」のではなく、比較対象としてもしっかりと効果のある「積極的な治療法」を開発する必要に迫られました。BSPは、まさにそのような経緯で生まれたのです。

それは単なる比較対象ではなく、他の専門的なセラピーが「これを超えなければ効果があるとは言えない」と認めざるを得ないような、質の高い『高いハードル』として設計されたのです。そして事実、多くの有名なセラピーがこのBSPを上回る効果を示すのに苦戦してきました。

では、BSPをはじめとする「良い心理療法」に共通する要素とは何なのでしょうか?

2. すべての良い心理療法に共通する「共通因子」

心理療法の専門家であるジェローム・フランクの研究によれば、認知行動療法や精神分析など、どんな種類の心理療法であっても、効果的なものにはいくつかの共通した要素(共通因子)があると言われています。

BSPは、これらの共通因子を特に大切にしています。ここでは、その中でも特に理解しやすい5つの要素をご紹介します。

• 感情の活性化(感情的覚醒) セラピーの中で、喜びや悲しみ、怒りといった感情が自然に動くことは、心が変化していく上でとても重要です。感情が動くことで、ただの『お話』が忘れられない『体験』へと変わり、心の変化が促されるのです。

• 理解されているという感覚 セラピストに自分の気持ちや状況を深く共感的に理解してもらえているという感覚。これは治療関係(治療同盟)の土台となり、一人ではないという安心感を与えてくれます。

• 苦しみへの説明(理解の枠組み) 「なぜ自分はこんなに苦しいのだろう?」という問いに対して、専門家と一緒に納得のいく説明を見つけられること。そして、「このアプローチで良くなる可能性がある」という道筋が見えることが重要です。

• 改善への希望(楽観主義) 専門家と共に取り組むことで、「今の苦しみは治療可能であり、良くなる可能性がある」と感じられること。これは単なる気休めではなく、治療への現実的な希望です。

• 成功体験 セラピーを通じて、どんなに小さなことでも「できた」「変われた」というポジティブな変化を経験すること。これが自信となり、失いかけていた希望や意欲を取り戻す『再士気向上』につながります。

これらの要素の中でも、BSPが特に大切にしているのが「感情」です。次の章で詳しく見ていきましょう。

3. BSPの核:なぜ「感情」がそんなに大切なのか?

私たちの多くは、不安、悲しみ、怒りといった、いわゆる「ネガティブな感情」を避けようとしたり、悪いものだと考えたりする傾向があります。特に、うつ病などを経験すると、そうした感情が自分を圧倒するように感じられ、ますます避けたくなるかもしれません。

しかし、BSPでは、感情を「悪いもの」ではなく、「自分の心の状態や人生で起きていることを教えてくれる大切なサイン」と捉えます。

感情は、敵ではなく味方です。BSPの目標の一つは、患者が自分の感情を特定し、信頼し、それを人生の役に立つ手がかりとして使えるようになることです。

感情を避けて、頭だけで問題を分析しようとするセラピーは、どこか「乾燥して退屈なもの」になりがちです。一方で、感情に焦点を当てることで、セラピーは生き生きとし、心に深く刻まれる体験となります。BSPは、この感情の力を最大限に活用するアプローチなのです。

では、感情を大切にするBSPは、他の心理療法とどう違うのでしょうか?

4. BSPと他のセラピーとの違い

BSPの最も特徴的な点の一つとして、「宿題や課題がない」ことが挙げられます。これは、特定の考え方や行動を変えるためのトレーニングを行うのではなく、患者さん自身の内側にある感情の理解を深めることを最優先するからです。

ここではBSPを代表とする感情焦点療法と、宿題が出されることも多い曝露に基づく療法(認知行動療法など)との違いを比較してみましょう。

特徴短期支持的心理療法(BSP)曝露に基づく療法(例:認知行動療法)
主な焦点患者が「今、どう感じているか」という感情そのもの問題となっている具体的な「考え方」や「行動」。
セッションの進め方決まった議題はなく、患者の感情の流れに沿って対話が進む。議題設定や、考え方の癖を修正するためのエクササイズを行うことがある。
宿題や課題原則として、ありません日常生活で実践するための宿題や課題が出されることが多い。
目指すもの感情を理解し、受け入れ、信頼できるようになること。非合理的な思考パターンを修正し、行動を変化させること。

このように、BSPは外から何かを教え込むのではなく、患者さん自身が自分の感情と向き合い、それを理解するプロセスを丁寧にサポートすることに重点を置いています。

では、最終的にBSPはどのような心の状態を目指すのでしょうか?

5. BSPが目指すゴール

BSPが目指す最終的なゴールは、単に症状をなくすことだけではありません。それは、自分自身の感情との付き合い方を学び、より豊かな内面の世界を育むことです。具体的には、以下の3つの状態を目指します。

• 感情の理解と受容 自分の感情に圧倒されたり、逆に感情を無理に押し殺したりするのではなく、感情がなぜ湧き上がってくるのかを理解し、「そう感じていいんだ」とありのままに受け入れられるようになること。

• 症状の緩和 感情をうまく扱えるようになると、それに伴ってうつ病などの苦しい症状が和らいでいきます。感情をコントロールしようと戦うのではなく、理解することで、心の負担が軽くなるのです。

• 内面の豊かさ これまで「敵」だと思っていた感情を「信頼できる味方」として使えるようになること。感情は、自分がいま何を必要としているのかを教えてくれるコンパスのようなものです。このコンパスを信頼し、頼りにすることで、世界をより深く、豊かに感じられるようになります。

結論

今回は、「支持的心理療法」、特にその中核をなす短期支持的心理療法(BSP)について解説しました。

「支持的」という言葉からくる「弱い治療法」という誤解とは異なり、BSPが人間の核である『感情』に深く焦点を当てる、非常にパワフルなアプローチであることがお分かりいただけたでしょうか。それは、あらゆる良い心理療法の基礎となる『共通因子』を大切にし、専門的な治療法の効果を測るための『高いハードル』としてさえ機能するほど、本質的で効果的なものなのです。

この解説が、皆さんにとって心理療法をより身近に、そしてその奥深さを感じるきっかけになれば幸いです。


支持的心理療法に関する学習ガイド 理解度確認クイズ

以下の各問に対し、2~3文で簡潔に回答してください。

  1. 支持的心理療法とは何か、また歴史的にどのように認識されてきましたか?
  2. 短期支持的心理療法(BSP)は、当初どのような目的で開発され、どのような状況で初めて検証されましたか?
  3. ジェローム・フランクが定義した心理療法の「共通因子」とは何ですか?少なくとも5つ挙げてください。
  4. 短期支持的心理療法(BSP)は、伝統的な精神分析や精神力動的心理療法とどのように異なりますか?
  5. 心理療法における「感情的覚醒(Affective Arousal)」の役割と、それが重要な共通因子と見なされる理由を説明してください。
  6. 本文書では、「感情焦点療法」と「曝露に基づく療法」がどのように対比されていますか?それぞれの例を挙げてください。
  7. 短期支持的心理療法(BSP)が、ロジャーズの来談者中心療法と異なる3つの特徴は何ですか?
  8. 特にうつ病を持つ患者に対する短期支持的心理療法(BSP)の核心的な目標は何ですか?
  9. 短期支持的心理療法(BSP)が、心理療法研究においてプラセボではなく、強力な「アクティブな対照条件」と見なされるのはなぜですか?
  10. 精神分析の歴史的文脈は、支持的心理療法の発展と認識にどのように影響しましたか?

クイズ解答

  1. 支持的心理療法とは、心理療法の「最も広く実践されている」種類とされてきましたが、定義が曖昧な包括的用語です。歴史的には、精神分析に適さないとされた重症患者のための「二級の治療」と見なされ、軽蔑的な意味合いで使われることもありました。これは、既存の精神的防御を強化し、患者を安定させることを目的としていました。
  2. BSPは当初、心理療法研究における比較対象として開発されました。研究者たちは、倫理的に問題のある待機リストではなく、患者を助ける可能性のあるアクティブな対照条件を必要としており、抑うつとHIV/AIDSを併発した脆弱な患者集団を対象とした無作為化対照試験で初めて検証されました。
  3. ジェローム・フランクが定義した共通因子には、①感情的覚醒(治療の感情的強度)、②セラピストに理解されていると感じること(治療的アライアンス)、③理解のための枠組みの提供(治療の根拠)、④専門知識、⑤治療的手順(儀式)、⑥改善への楽観主義、⑦成功体験(再士気向上)が含まれます。
  4. BSPは患者の感情的な理解を求めますが、精神力動的心理療法とは異なり、精神力動的防御や転移に対処したり、解釈を行ったりはしません。また、無意識の幻想の構造を利用することもなく、中核的葛藤関係テーマ(Core Conflictual Relationship Theme)を中心に治療を構築することもありません。
  5. 「感情的覚醒」とは、心理療法における感情的な強度を指し、治療的出会いを生き生きとさせ、記憶に残る経験を形成するために不可欠です。感情は人生の出来事に関する重要な信号であり、感情を経験し耐えることを学ぶことで、患者はそれを危険なものではなく、対処可能で有用な味方と見なせるようになります。これが、心理療法の主要な共通因子とされる理由です。
  6. 「感情焦点療法」は、患者が自身の感情を理解するのを助けるアプローチで、精神力動的療法や対人関係療法(IPT)、支持的心理療法がこれに含まれます。「曝露に基づく療法」は、認知や行動を中心に据え、感情を軽視する傾向があり、認知行動療法(CBT)がその代表例です。
  7. BSPはロジャーズの来談者中心療法と異なり、(1) 特定の診断(主にうつ病)を持つ患者に適用される点、(2) 通常10~12セッションという時間制限がある点、(3) 診断特有の困難に対して患者が抱きがちな特定の否定的な感情を意識している点、という3つの特徴があります。
  8. BSPの核心的な目標は、うつ病などの精神障害の文脈で、感情に圧倒されているか、あるいは感情から切り離されている患者が、感情を理解し、許容し、慰めを得て、ある程度の習得を達成できるよう支援することです。これにより、患者は自分の感情を信頼し、それを敵ではなく味方と見なせるようになります。
  9. BSPは、無作為化対照試験において、他の実績ある治療法(IPTやCBTなど)と比較しても遜色ない成果を一貫して示してきたためです。それは単なる不活性な治療ではなく、患者の改善を助ける効果的な介入であり、他の治療法がそれを上回ることが期待される高いハードルとなるため、「アクティブな対照条件」と見なされています。
  10. 20世紀半ばの精神分析が優勢だった時代、良い「分析可能」な患者は精神分析で治療されましたが、感情的に不安定で治療に耐えられないと見なされた患者には、代わりに支持的療法が提供されました。このため、支持的療法は「二級の治療」という烙印を押され、性格の深いレベルには到達しない絆創膏のような介入と見なされるようになりました。

小論文課題 以下のテーマについて、本文書の内容に基づいて考察を深めるための小論文を作成してください。(解答は提供されません)

  1. 支持的心理療法が「二級の治療」という認識から、厳密に定義された短期支持的心理療法(BSP)へと進化する過程を論じてください。この変容において、心理療法研究はどのような役割を果たしましたか?
  2. フランクとフランクが提唱した7つの「共通因子」の重要性を、心理療法全般の有効性の観点から分析してください。特に「感情的覚醒」に焦点を当て、BSPがこれらの因子をどのように具体的に活用しているかを説明してください。
  3. 短期支持的心理療法(BSP)を、本文書で言及されている他の治療法(精神分析、認知行動療法(CBT)、対人関係療法(IPT)など)と比較対照してください。技法、焦点、理論的基盤における主な違いは何ですか?
  4. 本文書は、現代の多くの治療法、特に一部のCBTが感情の重要な役割を軽視していると主張しています。この主張を詳述し、なぜ著者がこれを心理療法分野における重大な損失と考えているのか、そしてBSPがこの不均衡をどのように是正しようとしているのかを説明してください。
  5. 著者は研究のための「アクティブな対照条件」としてBSPを開発しましたが、それが非常に効果的な治療法であることが証明されました。心理療法の効果研究において、待機リストを対照群とする場合と、BSPのようなアクティブな対照条件を使用する場合の、倫理的および方法論的な意義について論じてください。

主要用語集 用語 定義
支持的心理療法 (Supportive Psychotherapy) 広く実践されているが、定義が曖昧な心理療法の総称。歴史的には、精神分析に適さない患者を安定させるための「二級の治療」と見なされてきた。
短期支持的心理療法 (Brief Supportive Psychotherapy, BSP) 本文書で定義される、焦点の定まった、感情に焦点を当てた、共通因子に基づく治療法。研究におけるアクティブな対照条件として開発され、それ自体が効果的な治療法であることが示されている。
共通因子 (Common Factors) 治療の理論的志向に関わらず、すべての効果的な心理療法に共通するとされる治療的特性。感情的覚醒、治療的アライアンス、改善への楽観主義などが含まれる。
感情的覚醒 (Affective Arousal) 心理療法セッションにおける感情的な強度や活性化。治療的出会いを生き生きとさせ、患者が自分の感情を安全に経験し、理解するのを助けるための重要な要素。
治療的アライアンス (Therapeutic Alliance) セラピストと患者の間の協力的な関係。患者がセラピストに理解されていると感じることが核となり、すべての良い心理療法の基礎をなす。
対人関係療法 (Interpersonal Psychotherapy, IPT) 感情の引き出しと検証に焦点を当てる点でBSPと共通するが、さらに対人関係における具体的な行動変化を促す要素を加えた治療法。「BSPプラス」と見なすことができる。
認知行動療法 (Cognitive Behavioral Therapy, CBT) 認知や行動を中心に据える「曝露に基づく療法」の代表例。実践によっては、感情的な側面が軽視され、「頭でっかち」な知的演習になりがちであると指摘されている。
精神分析 (Psychoanalysis) 転移の解釈や無意識の探求を行う、構造化されていない長期的な治療法。歴史的に、支持的心理療法は精神分析の対極にあるものとして定義されてきた。
感情焦点療法 (Emotion Focused Therapy) 患者が自身の感情を理解することを助ける心理療法のカテゴリー。精神力動的療法、対人関係療法、支持的心理療法などが含まれる。
曝露に基づく療法 (Exposure-Based Therapy) 認知や行動を中心に据える心理療法のカテゴリー。理論上は感情を扱うが、実際には軽視される傾向にあるとされ、CBTがその代表例である。


短期支持的心理療法(BSP)の再定義

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1. 序論:短期支持的心理療法(BSP)の再定義

1.1. 「支持的」という用語の再評価

本ガイドラインは、短期支持的心理療法(Brief Supportive Psychotherapy: BSP)の理論的基盤、主要原則、および臨床応用を体系的に概説することを目的とする。本稿が特に焦点を当てるのは、心理療法の領域におけるある臨床的誤解の病因を分析し、エビデンスに基づいた厳密な治療法として「支持的」という用語を再定義することの喫緊の重要性である。

歴史的に、「支持的」という言葉は、しばしば二流の治療法を指す軽蔑的な含意を伴って用いられてきた。20世紀半ば、精神分析が心理療法の主導的パラダイムであった時代、洞察に適した「分析可能」な患者は精神分析の対象とされた。一方で、感情的に脆弱であったり、病状が重かったりするために精神分析の厳格さに耐えられないと見なされた患者には、代替として「支持的治療」が提供された。この文脈において支持的治療とは、解釈を通じて構造的変化を目指すのではなく、既存の心理的防衛を強化し、患者を安定させることを目的とした、より低頻度の介入を意味した。

このような起源から、「支持的心理療法」という用語は、焦点が定まらない、単なる良性の手助け、あるいは他の高度な治療法に応答しない患者のための最終手段といった、曖昧で否定的な意味合いを帯びるに至った。しかし、本ガイドラインで定義するBSPは、コミュニティで実践されているかもしれない非体系的な「支持的療法」とは明確に一線を画すものである。ここで論じるBSPは、注意深く定義され、その有効性が複数の無作為化対照試験によって実証されてきた、特定の治療モダリティなのである。

本稿を通じて、BSPが決して二流の介入ではなく、すべての効果的な心理療法の核となる要素を凝縮した、厳密かつ強力な治療法であることを論証していく。

1.2. BSPの起源と科学的妥当性

BSPの開発は、心理療法研究における根本的な課題、すなわち「何を比較対象とするか」という問いへの応答として始まった。薬物試験における不活性なプラセボ錠に相当するものが心理療法には存在しないため、単なる待機リスト(これは倫理的問題をはらむ)ではない、積極的で効果的な「アクティブな対照条件」の必要性が高まっていた。BSPは、単なるプラセボではなく、それ自体が患者を援助することを目指して開発されたのである。

30年以上前、コーネル大学医学部のJohn C. Markowitz氏らは、治療的アライアンスの構築や感情表現の奨励といった、すべての優れた心理療法に共通する基本原則(いわゆる「共通因子」)に基づき、16セッションからなる治療マニュアルを作成した。これがBSPの原型である。

その有効性を検証するための最初の無作為化対照試験は、HIV感染またはAIDSを合併したうつ病患者という、極めて脆弱な集団を対象に行われた。この研究でBSPは、対人関係療法(IPT)、認知行動療法(CBT)、抗うつ薬イミプラミンといった、すでに確立された治療法と比較された。驚くべきことに、BSPはこれらの確立された治療法と比較して非常に良好な結果を示した(Markowitz et al., 1998)。さらに特筆すべきは、BSPを実施したセラピストは、競合する他の治療法を実施したセラピストよりも臨床経験が少なかったにもかかわらず、この優れた成績を収めたという事実である。これは、BSPの基本原則が本質的に強力であり、アクセスしやすいものであることを示唆している。

この最初の成功以来、BSPは慢性うつ病などを対象とした複数の大規模な臨床試験で、効果的なアクティブな対照条件として一貫して採用され、その有効性が繰り返し証明されてきた。例えば、米国(Kocsis et al., 2009)およびドイツ(Schramm et al., 2017)で実施された慢性うつ病に関する多施設共同研究において、BSPはその有効性を確固たるものにした。これらの累積的エビデンスは、BSPが単なる比較対照に留まらず、それ自体が強力な治療法であることを示している。

BSPの強固な科学的基盤は、その理論的支柱である「共通因子」の探求へと我々を導く。次章では、なぜこのアプローチが効果を発揮するのか、その理論的根源を詳述する。

2. BSPの理論的基礎:「共通因子」の活用

2.1. 心理療法の巨人の肩の上に立つ

本章では、BSPの理論的根源を探り、なぜその基本原則がすべての効果的な心理療法の核心となるのかを論じる。BSPは、特定の理論や技法に固執するのではなく、心理療法の有効性に普遍的に寄与すると考えられる要素を抽出し、活用することに主眼を置いている。

BSPは、心理療法の歴史における二人の巨人、Carl RogersとJerome Frankの先駆的な業績に深く根ざしている。Rogersが提唱した、クライエントに対する共感的理解、真実性、無条件の肯定的配慮といった治療的関係性の重要性は、BSPにおける治療的アライアンス構築の基盤を形成している。同時に、Frankが体系化した「共通因子(common factors)」の概念は、BSPの理論的枠組みそのものである。

「共通因子」とは、特定の治療理論(精神分析、CBTなど)を超えて、あらゆる効果的な心理療法に共通して存在する治療的メカニズムを指す。Frankは、なぜ多様なアプローチが同様の効果をもたらしうるのかを説明するために、これらの普遍的な要素を特定した。BSPは、これらの共通因子を意図的かつ集中的に活用することで、治療効果を最大化しようと試みるものである。

これらの理論的支柱が、具体的にどのような要素から構成されているのか、次に詳しく見ていこう。

2.2. 効果的な心理療法を構成する7つの共通因子

Jerome Frankが特定した7つの共通因子は、BSPの実践において有機的に統合され、治療効果を生み出す原動力となる。これらは単なるリストではなく、治療プロセス全体を支える相互に関連した要素群である。

  • 感情的覚醒(Affective Arousal) 患者にとって意味のある感情的な強度がセッション内に存在すること。BSPでは、感情は治療の中心であり、感情を活性化させることが不可欠である。強い感情をセッション内で安全に経験することは、それらの感情自体が危険ではないという暗黙のメッセージを患者に伝える。
  • セラピストに理解されていると感じること 治療的アライアンスの構築に不可欠な要素である。患者が、自身の苦しみや感情をセラピストが真に理解してくれていると感じることで、孤立感が和らぎ、安心して自己を探求できる安全な基盤が築かれる。
  • 理解のための枠組みの提供 患者が自身の苦しみに対して、もっともらしい説明や根拠を得ること。これにより、混乱した経験に意味と秩序がもたらされ、治療がどのようにして救済をもたらすかについての見通しが立つ。
  • 専門知識(Expertise) セラピストが、患者を助けるための経験と訓練を有しているという信頼感。この信頼が、患者が治療に積極的に関与するための前提条件となる。セラピストは、自身の経験に焦点を当てるのではなく、患者の経験に専門知識を適用する。
  • 治療的手順(Therapeutic Procedure) セッションにおける儀式や構造。一貫した手順は、患者に安全で予測可能な「治療の器(therapeutic container)」を提供し、変化をもたらすための具体的な方法があるという感覚を与える、儀式的な枠組みとして機能する。
  • 改善への楽観主義(Optimism for Improvement) 現実的な治療的見通しを持つこと。これは単なる気休めの安心感ではなく、「絶望は症状であって、予後ではない」といった、現実に基づいた希望である。症状がもたらす悲観主義とは対照的に、治療によって改善する可能性が高いという視点を提供する。
  • 成功体験(Success Experience) 治療を通じて、患者がポジティブな変化を経験し、対処法を見出すこと。小さな成功体験の積み重ねが、失われた士気を回復させ、自己効力感を高める。

これらの共通因子の中でも、BSPは特に**「感情的覚醒」**を治療のエンジンとして中核に据えている。次章では、この感情への焦点が具体的にどのような治療的意義を持つのかをさらに深く掘り下げていく。

3. BSPの中核的要素:感情への焦点

3.1. 感情的覚醒(Affective Arousal)の治療的意義

なぜ感情はBSPの中心に位置づけられるのか。多くの患者は、不安、悲しみ、怒りといった感情を避けようとして治療を求める。そして皮肉なことに、一部のセラピストもまた、強い感情を扱うことに不快感を抱きがちである。BSPは、この感情回避のパターンに直接対峙し、感情そのものを治療の主たる対象として扱う。

多くの患者は、不安、悲しみ、怒りといった「負の」感情を「危険」「悪い」「歓迎されない」ものとみなし、抑圧したり避けたりする傾向がある。例えば、うつ病を経験した人々は、悲しみや怒りといった感情を抑うつ状態そのものと関連づけ、それらを避けようとする。同様に、パニック障害を持つ人々は、強い不安を身体的・感情的制御の喪失という危険な兆候とみなし、回避する。この回避は、感情からの切り離し、知性化、解離といった問題につながる。

この感情との距離は、二つの大きな問題を生む。第一に、感情はランダムなものではなく、個人の内的・外的な出来事に関する重要な**「信号」**であるという視点が失われる。BSPでは、感情を理解することが、自分自身の身に現実に何が起きているのかを知るための重要な手がかりになると考える。第二に、「悪い」感情というレッテル貼りは誤りである。これらの感情は、人生における困難な出来事を反映する自然な反応であり、その強度は出来事の重大さを示している。

BSPにおける感情的覚醒は、治療的出会いを単なる知的な会話から、生き生きとした記憶に残る体験へと変える上で不可欠である。感情が動くセッションは、セラピストとの良好なアライアンス形成を促進し、Alexander & French (1946) の言う「是正的感情経験(corrective emotional experience)」、すなわち「すべての人が自分が恐れているようには反応するわけではない」という発見が生まれる土壌となる。

この感情への揺るぎない焦点こそが、BSPを他の多くのアプローチ、特に認知や行動に主眼を置く治療法と区別する核心的な特徴なのである。

3.2. 感情焦点療法と曝露ベース療法の峻別

現代の心理療法は、感情へのアプローチの仕方によって、大きく二つの潮流に分類することができる。一つは患者が自身の感情を理解することを助ける「感情焦点療法」、もう一つは認知や行動の変容に主眼を置く「曝露ベース療法」である。

感情焦点療法 (例: BSP, 精神力動的療法, IPT)曝露ベース療法 (例: CBT)
治療の主眼: 患者の内的な感情世界の探求と理解を治療の中心に据える。治療の主眼: 不合理な思考パターンや不適応な行動の特定と修正に焦点を当てる。
感情へのアプローチ: 感情を直接引き出し、経験し、検証することを奨励する。感情へのアプローチ: 理論上は感情を扱うが、実際には軽視されるか、認知や行動の副産物として扱われがち。

特に認知行動療法(CBT)のような高度に構造化された治療法は、その有効性が広く認められている一方で、実践において感情を避けるための「頭でっかちな」知的演習になりがちである、という懸念が指摘されている。もちろん、Aaron Beckが実践したような優れたCBTは感情的な問題を適切に組み込んでいるが、他の実践者の手にかかると、感情そのものと向き合うよりも、自動思考の特定や論理的な反論といった課題に終始してしまうことが少なくない。

BSPは、感情を治療の中心に据えることで、このような知的回避を防ぐ。患者がこれまで圧倒されてきた、あるいは切り離してきた自身の内面世界と安全な環境で向き合い、それを理解し、許容し、自己の一部として統合していくプロセスを促進すること、それがBSPの目指すところである。

4. 臨床実践におけるBSPの位置づけ:他療法との比較分析

4.1. BSPと他の主要な心理療法との比較

臨床家が自身の既存のスキルセットの中でBSPを正確に位置づけ、その独自の貢献を理解できるよう、ここでは他の主要な心理療法との共通点と相違点を分析する。

  • 伝統的な精神分析および精神力動的療法 BSPは、感情への焦点や治療関係の重要性を共有している点で「精神力動的に友好的」と言える。しかし、決定的な違いがある。BSPは、転移の解釈無意識の幻想への介入といった、精神分析の中核的な技法を用いない。あくまで患者の意識的な感情体験に焦点を当てる。
  • 他の感情焦点療法(EFT, IPT) 対人関係療法(IPT)は、BSPと感情の引き出し・検証という点で基盤を共有するが、その上に対人関係における具体的な行動変容を促す要素を加える。このため、IPTは**「BSPプラス」**と表現することができる。BSPは、IPTの感情的な「核」に相当する部分を抽出したものである。感情焦点療法(EFT)もまた、ロジャーズ派にルーツを持つ点で共通するが、BSPと比較して「感情的スキーマシステム」といった専門用語や理論的な概念化をより多く用いる傾向がある。
  • クライエント中心療法 BSPは、Carl Rogersのクライエント中心療法に最も近いアプローチである。非指示的で、共感的理解を重視し、感情に焦点を当てるという核となる姿勢を共有している。しかし、以下の3つの具体的な違いが存在する。
    1. 特定の診断への適用: BSPは主にうつ病などの特定の診断を持つ患者集団を対象とした研究で発展してきた。
    2. 時間制限: BSPは通常、10〜12回といった短期の枠組みで実施される。
    3. 診断特有の感情への意識: セラピストは、例えばうつ病患者が抱きがちな特定の否定的な感情に対して意識的である。
  • 認知行動療法(CBT) 最も対照的なのはCBTとの比較である。構造的に、BSPにはCBTの特徴であるチャートの記録、宿題、セッション毎の議題設定が一切ない。さらに根本的な違いは、感情の扱いに見られる。CBTが感情を認知の誤りから生じる結果とみなし、認知の修正に主眼を置くのに対し、BSPは感情そのものを治療の主たる対象とし、その探求と理解を最優先する。

これらの比較を通じて、BSPが特定の理論的装飾を排し、心理療法の最も基本的で強力な要素である「感情との対話」に特化した、独自の治療的ポジションを占めていることが明らかになる。

5. BSPセッションの実際:セラピストの役割と技法

5.1. BSPにおけるセラピストの中心的課題

BSPのセッションは、議題設定、チャート、エクササイズといった外的な構造を持たない。その代わりに、セッションは一貫して患者のその時々の感情的体験に焦点を当てる。セラピストの役割は、患者を「指導」することではなく、患者が自身の内なる感情の世界を探求し、理解するのを助けることにある。

BSPセラピストが担う核となるタスクは、以下の4つのプロセスに集約される。

  • 感情についての質問: セラピストは、患者の語りに対して「その時、どのように感じましたか?」「今、それについて話していて、どんな気持ちですか?」といった問いを投げかけ、感情への注意を促す。
  • 感情の引き出し: 感情的な表現がなされた際に、それをさらに深めるよう促す。これにより、表層的な語りから、より深い感情体験へと移行する。
  • 感情の探求と命名: 患者が漠然と感じている感情を、より具体的に探り、言葉にする(例:「それは悲しみですか、それとも失望に近いですか?」)のを助ける。
  • 文脈の中での感情の検証: その感情が生じている生活文脈において、その感情を抱くことがいかに合理的であるか、あるいは意味のあることかを検討する。これにより、患者は自分の感情が「間違っている」のではなく、正当な反応であると認識できる。

この一連のプロセスは、患者にとって**極めて深い感情的検証(a profound experience of emotional validation)**の経験となる。これまで混乱し、圧倒され、否定的であった内面の世界が、理解可能で許容できるものへと変化していく。

BSPがチャート、エクササイズ、宿題、議題設定を一切行わない、意図的に非構造的なアプローチであることは、この感情的プロセスに最大限のスペースを与えるための設計である。この純粋な焦点こそが、BSPの力強さの源泉なのである。

6. 結論:BSPを臨床実践に統合する意義

6.1. BSPがもたらす臨床的価値

本ガイドラインでは、短期支持的心理療法(BSP)が、歴史的な誤解とは異なり、心理療法の「共通因子」、特に感情への焦点を核とした、エビデンスに基づく強力な治療法であることを概説した。そのアプローチは、理論的装飾を排し、治療的変化の根源に直接働きかけるものである。

BSPの原則を学ぶことの臨床的価値は、BSPを単独の治療法として実践することに留まらない。BSPの学習と実践は、セラピストがすでに行っている他の治療モダリティ(例えばCBTやIPT)を強化する可能性を秘めている。なぜなら、BSPはすべての優れた心理療法の基盤である「共通因子」、とりわけ治療関係の構築と「感情的焦点」を磨くための、集中的な訓練となるからである。感情を効果的に扱うスキルは、あらゆるアプローチの有効性を高めるだろう。

BSPの最終的な目標を再確認しよう。それは、感情に圧倒されている、あるいは感情から切り離されている患者が、自身の感情を理解し、許容し、信頼できるようになるのを助けることである。そして最終的には、患者が自らの感情を**「敵ではなく味方」**として、人生を豊かに生きるための羅針盤として活用できるようになることを目指す。

臨床家がBSPの原則を自身の臨床実践に取り入れることは、単に新たなツールキットを加える以上の意味を持つ。それは、すべての効果的な治療の根底にある基礎的スキルへの回帰であり、セラピスト自身の専門家としての発達と臨床的成熟に不可欠な要素である。この探求は、表層的な問題解決を超えた、より深く、より人間的な治療的経験を患者に提供する可能性を開き、我々の臨床実践そのものを豊かにするだろう。


支持的心理療法(Supportive Psychotherapy: SP)は、その定義が広く曖昧である一方で、適切に採用された場合には強力な介入となり、すべての良い心理療法の核を強調する要素を持つとされています。

以下に、支持的心理療法の定義、歴史的背景、研究における役割、およびその中核となる原則(特にBrief Supportive Psychotherapy: BSPの観点から)について詳述します。

1. 支持的心理療法の定義と歴史的背景

曖昧な包括的用語としてのSP

支持的心理療法という用語は広く使われ、誤用され、様々に、そしてしばしば不完全に定義されてきました。コミュニティの多くのセラピストが行ってきたことを指す曖昧な包括的な用語であり、心理療法の「最も広く実践されている」種類として引用されてきましたが、その結果、ほとんど何でも意味し、何も意味しない可能性があります。

Pinsker (2002) によれば、SPは「症状を改善し、自尊心、自我機能、および適応スキルを維持、回復、または改善するために直接的な手段を使用する」と定義されています。その技術には、治療的アライアンスの強化、教育、アドバイス、励ましと賞賛、制限の設定と禁止、そして適応的な防御の強化などが含まれます。

軽蔑的な起源

歴史的に、支持的という用語は、しばしば弱い治療法に対する軽蔑的または蔑称的な言葉として用いられてきました。SPは、精神分析ができないほど不幸な患者のための「二級治療」として始まりました。20世紀半ばの精神分析的優位性の時代には、「分析可能」な患者は精神分析で治療されましたが、感情的に不安定で病弱すぎる患者は代わりに支持的治療を受けました。これは、構造的解釈を通じて獲得を達成するよりも、欠陥状態にある患者の機能維持と安定化を目的としていました。

精神医学教育における位置づけ

「支持的療法」は包括的な用語であるにもかかわらず、支持的療法における「コンピテンシー」のトレーニングは、精神科研修の正式なACGME(大学院医学教育認定協議会)要件となっていますが、実際にそれが何を伴うかは必ずしも明確ではありません。

2. 短期支援的心理療法(Brief Supportive Psychotherapy: BSP)

BSPは、一般に曖昧な「支持的心理療法」という用語に対し、研究のために注意深く定義され、骨子化された介入です。BSPは、すべての良い心理療法の基本に基づいて基礎を置かれており、治療的アライアンスの構築、感情の寛容と表現の奨励、およびすべての良い心理療法に固有の「共通因子」を利用します。

研究における役割

心理療法のアウトカム研究において、薬物試験におけるプラセボに相当する非活性な錠剤プラセボのような比較対象がないという問題がありました。BSPは、苦しんでいる患者にとって非倫理的である可能性が高い待機リスト(治療なし)ではなく、治療を受けた患者を助けるかもしれない「アクティブな対照条件」として開発されました。

BSPは、抑うつとヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染または後天性免疫不全症候群(AIDS)の両方を持つ患者サンプルを対象とした無作為化対照試験で、対人関係療法(IPT)、認知行動療法(CBT)、および三環系抗うつ薬イミプラミンと比較され、非常によく機能しました

BSPは、無作為化試験における「万年の弱者」としての役割にもかかわらず、機能することが示されており、累積的な研究結果は、抑うつ治療ガイドラインへの支持的心理療法の組み込みの正当性を提供しています。他の治療法は一般にBSPを上回ることに成功しないため、BSPは「高いハードル」として機能します。

BSPの適用

BSPは主に気分障害の治療に使用されてきましたが、その原則は不安障害を持つ患者や他の精神障害にも適用される可能性があります。BSPは通常、時間制限があり、心理療法試験に適した10から12回の週に一度の50分間のセッションで行われます。

3. BSPと心理療法の共通因子

BSPは、心理療法の巨人であるCarl Rogers (1951) とJerome Frank (1971; 1993) の先駆的な仕事にルーツを持ち、心理療法をその感情的な核に凝縮します。ここで定義されているBSPは、「焦点の定まった、感情に焦点を当てた、骨子の共通因子の治療法」です。

Frank & Frank (1993) に基づく心理療法の共通因子は、以下の要素を含みます。これらの要素は、支持的心理療法に加えて、一般に心理療法にとって鍵となります。

  1. 感情的覚醒(Affective Arousal): 患者にとって意味のある心理療法の感情的な強度であり、その感情が危険ではないことを患者に暗黙的に示します。
  2. セラピストに理解されていると感じること(関係性): 治療的アライアンスを開発するための対人関係のサポートと必要性の形態。
  3. 理解のための枠組み(根拠): 患者が苦しんでいるものの説明と、なぜ治療が救済をもたらすかもしれないかの根拠。
  4. 専門知識(厳密さ): セラピストが患者を助け、効果的な治療を提供するための経験と訓練を持っていることを伝えること。
  5. 治療的手順(儀式): 患者に慣れ親しみ、安全で予測可能な環境と変化の方法を提供する、セッションにおける儀式または構造。
  6. 改善への楽観主義(リアリズム): 現実的な治療的な見通し(例:抑うつは痛みは伴うが治療可能であり、良くなる可能性が高いという信念)。
  7. 成功体験(再士気向上): 治療は患者がポジティブな変化を起こすのを助ける対処法を見つけるのを助けます。

感情的焦点の重要性

BSPの核心的な側面は、感情的覚醒にあります。感情は個人の気分状態や人生における出来事についての信号であり、回避されるべき「悪い」ものではありません。感情的覚醒は、治療的出会いを生き生きとさせ、セラピストとの良いアライアンスを生み、記憶に残る経験を形成する中心的な共通因子です。

BSPは、感情的に検証する治療法であり、セラピストは感情を引き出し、患者が感情を探求し、名付けるのを助け、感情を許容し、受け入れるのを助けます。BSPの目標は、患者が感情の理解、許容、それによる慰め、および何らかの習得を得るのを助けることであり、これは「是正的感情的経験」の増加につながる可能性があります。

4. 他の治療法との比較

精神力動的治療法

支持的心理療法と呼ばれるいくつかのバージョンは精神力動的に基づいていますが、ここで説明されているBSPは、精神力動的防御や転移に対処したり、解釈を行ったりすることはありません。LuborskyのSupportive-Expressive Psychotherapyは力動的な風味を持つSPと見なせますが、これはBSPがしない方法で、Core Conflictual Relationship Themeの周りに治療を構築します。BSPは精神力動的に友好的ではありますが、真の精神力動的治療法ではないとされています。

対人関係療法(IPT)

IPTは感情の引き出しと検証においてBSPと重複しますが、より活動的な対人関係の反応の焦点を追加します。IPTは「BSPプラス」と見なすことができ、BSPはIPTがより外部の、環境的な焦点にリンクする内側の、感情的な側面を構成します。BSPのセラピストは、IPTのような行動に関する質問を尋ねたり、ロールプレイを日常的に行ったりはしません。

認知行動療法(CBT)

BSPのような感情に焦点を当てた治療法は、認知スキルを教える高度に構造化された方法に焦点を当て、患者がどのように感じているかを理解することに最小限の焦点を当てる傾向がある他のセラピスト(特にCBTの訓練を受けた経験豊富なセラピスト)に新しい視点を提供します。良いCBTは感情的な問題を組み込みますが、他の手に渡ると、しばしば最適ではない結果を伴う「乾燥した、機械的な、知的な演習」になりすぎることがあります。

BSPは、感情に焦点を当てた治療法であり、患者が自分の感情を理解することを助けるグループに属し、一方、CBTは、認知や行動を中心に据える曝露に基づく療法として分類されます。


「共通因子」(Common Factors)は、心理療法の理論的志向に関係なく、すべての効果的な心理療法に共通する、活動的かつ治療的な要素を指します。これらの因子は、すべての良い心理療法の核を強調する強力な介入要素であり、支持的心理療法(BSP)などの基礎となっています。

共通因子の起源と定義

共通因子の概念は、Rosenzweig(1936)が最初に提唱し、後にJerome Frank(Frank, 1971; Frank & Frank, 1993)によって最もよく定義され、洗練されました。

Frankらの研究に基づき、心理療法の共通因子として以下の要素が挙げられています。

共通因子説明
感情的覚醒(Affective Arousal, 反応)患者にとって意味のある感情的な強度であり、その感情が危険ではないことを暗黙的に示すこと。これが治療的出会いを生き生きとさせ、記憶に残る経験を形成します。
セラピストに理解されていると感じること(関係性)治療的アライアンスを開発するために必要な、対人関係のサポートと必要性の形態。
理解のための枠組みの提供(根拠)患者が苦しんでいることの説明と、なぜ治療が救済をもたらすかもしれないかの根拠(ラショナル)の提供。
専門知識(厳密さ)セラピストが患者の経験に焦点を当てている間、患者を助け、効果的な治療を提供するための経験と訓練を持っていることを伝えること。
治療的手順(儀式)患者に慣れ親しみ、安全で予測可能な環境と変化の方法を提供する、セッションにおける儀式または構造。
改善への楽観主義(リアリズム)治療的な現実的な見通し。絶望は症状であり予後ではないという見方(例:うつ病は痛みを伴うが治療可能である)。
成功体験(再士気向上)治療が患者がポジティブな変化を起こすのを助ける対処法を見つけるのを助けること。

これらの要素はすべて、支持的心理療法に加えて、一般に心理療法にとって鍵となります。このリストの側面が欠けている治療法は、一般にうまくいきません。

共通因子と支持的心理療法(BSP)

Brief Supportive Psychotherapy(BSP)は、心理療法の巨人であるCarl Rogers(1951)とJerome Frank(Frank, 1971; Frank & Frank, 1993)の先駆的な仕事にルーツを持ち、これらの共通因子を利用することで開発されました。

BSPは、治療的アライアンスの構築、感情の寛容と表現の奨励、およびすべての良い心理療法に固有の共通因子を利用することに基づいて基礎づけられました。BSPは、焦点の定まった、感情に焦点を当てた、骨子の共通因子の治療法として定義されています。ここでいう「骨子」(skeletal)とは、単純にすべての良い治療法の共通因子、共有された要素と基礎を意味します。

BSPは研究において、不活性な治療ではなく、患者の改善を助け、他の心理療法がそれを上回ることを期待する**高いハードル(アクティブな対照条件)**として使用されてきましたが、他の治療法は一般にBSPを上回ることに成功していません。

感情的覚醒の重要性

共通因子の中でも、感情的覚醒(Affective Arousal)は特に重要です。

  • 中心的な共通因子: 感情的覚醒は心理療法の主要な共通因子であり、治療関係の形成、記憶の統合、そして変化の核心的要素として機能します。
  • 信号としての感情: 感情はランダムに起こるものではなく、個人の気分状態や人生の出来事についての信号です。
  • 回避の問題: 精神障害を持つ人々は、しばしば自分の感情に圧倒され、それを避けようとしますが、この回避(感情の切り離し、知性化、解離)は問題を引き起こします。
  • BSPにおける焦点: BSPでは感情は常に中心的な焦点であり、患者が感情を引き出し、経験し、耐えられるように助けることが目標の一つです。BSPは、感情に焦点を当て、心理療法の「共通因子」を採用する治療法であり、これはあらゆる臨床医のスキルセットに不可欠であるにもかかわらず、しばしば無視されています。

セラピストが感情を避けながら心理療法を行うことは可能ですが、それは乾燥し、抽象的で退屈になり、効果が薄いとされています。最近の懸念として、心理療法の訓練と実践において、感情または情緒の決定的な要因を含む共通因子のバランスの取れた使用が失われつつあることが指摘されています。


「感情的覚醒(Affective Arousal)」は、すべての良い心理療法の核を強調する要素であり、治療効果を高めるための主要な「共通因子」の一つとして位置づけられています。

感情的覚醒の定義と重要性

感情的覚醒は、心理療法の「共通因子」として、Rosenzweig (1936)が最初に提唱し、後にFrank & Frank (1993)によって精緻化されました。

ソースによると、感情的覚醒とは、**「患者にとって意味のある心理療法の感情的な強度であり、その感情が危険ではないことを患者に暗黙的に示します」**と定義されています。

感情的覚醒は極めて重要であり、これが欠けた心理療法セッションは、乾燥し、抽象的で退屈なものになり、効果が薄いとされています。治療的出会いを生き生きとさせ、セラピストとの良いアライアンスを生み、記憶に残る経験を形成するのが感情的覚醒の役割です。

患者による感情の回避

多くの人々、特に精神障害を持つ人々は、自分の感情を恐れ、避ける傾向があります。

  1. 「負の」感情への恐れ: 不安、悲しみ、怒りといったいわゆる「負の」感情は、しばしば苦痛を伴う経験として感じられ、劣等感の証拠、あるいは「悪い」「危険」「歓迎されない」ものとみなされ、抑圧されます。
  2. 回避行動: 患者は感情に圧倒され、感情の切り離し、知性化、解離といった形で感情を避けようとします。
  3. 診断との関連:
    • うつ病を経験した人々は、悲しみや怒りといった感情を抑うつ状態と関連づけ、避けようとします。
    • パニック障害を持つ人々は、強い不安を感情的・身体的制御の喪失という危険とみなし回避しますが、抑圧された感情は後に再浮上し、さらなるパニック発作を引き起こすことがあります。
    • トラウマを負った人々は、トラウマによって引き起こされた強烈な感情を抑圧し、麻痺感を経験します。

患者は、感情を避けようとして治療を求め、自身の人生の出来事を、感情的にではなく、一般的または抽象的な形で、あたかも他人事のように語ることがあります。

感情の機能と治療の焦点

感情はランダムに起こるものではなく、個人の気分状態や人生における出来事についての信号です。感情の強さは、その出来事がどれほど動揺をもたらすかを示しています。

多くのセラピストも強い感情に不快感を抱くことがありますが、治療の場では、セラピストと患者は感情を避けるか、感情の流れに飛び込むかの選択を迫られます。感情的覚醒を促すため、セラピストは一般論ではなく具体的な事例や名前を使うよう患者を導き、感情を引き出す役割を担います。

Brief Supportive Psychotherapy (BSP) における感情的覚醒

短期支持的心理療法(BSP)は、心理療法をその感情的な核に凝縮する治療法であり、感情的覚醒を採用します。

BSPでは、感情は常に中心的な焦点です。BSPの目標の一つは、感情を引き出し、患者がそれを経験し、耐えられるようにすることにあります。痛みを伴う感情も危険ではなく、対処可能であり、抑圧する必要はないと患者が理解することを助けます。これにより、患者は自分の感情を特定し、信頼し、それを敵ではなく味方とみなせるようになることを目指します。

BSPに例示される感情に焦点を当てた治療法(Affect-focused treatment)は、感情の調節不全と不安定なアタッチメントの修復に対処することを目指しています。患者が感情の理解、許容、慰め、そして何らかの習得を得るのを助けることが目標です。

感情的覚醒と他の治療法との比較

心理療法の多くは、感情焦点療法(精神力動的療法、対人関係療法、支持的心理療法)と、曝露に基づく療法(認知行動療法:CBT)の二つに分類されます。

  • 曝露に基づく療法(CBT): 認知や行動を中心に据え、理論上は感情を扱うものの、実際にはしばしば軽視される傾向があります。認知行動的な背景を持つセラピストは、感情を避ける傾向が強いことが指摘されています。CBTは、他の手に渡ると、最適ではない結果を伴う乾燥した、機械的な、知的な演習になりすぎることがあります。
  • 第三の波の認知療法: Affective Arousal(感情的覚醒)を再び組み込むことを求める「第三の波」の認知療法(例:Acceptance and Commitment Therapy)が台頭したのは、従来のCBTにおける感情の扱いの問題が一因です。

BSPは、感情に焦点を当てた治療法であり、情緒的な核に基づいており、感情に焦点を当てた治療法を行うことは、セラピストの理解と患者の理解に新しい次元を追加する可能性があります。


Brief Supportive Psychotherapy(BSP:短期支援的心理療法)について、提供された情報に基づいて包括的に考察します。

BSPは、しばしば曖昧で軽蔑的な意味合いを持つ「支持的心理療法」という広範な用語とは異なり、注意深く定義され、骨子が定められた治療法です。

1. BSPの定義、起源、および目的

BSPは、心理療法のアウトカム研究において、薬物試験における不活性なプラセボに相当する比較対照条件がないという問題に対処するために開発されました。研究者たちは、空の条件(待機リストなど)ではなく、患者を助ける可能性があり、コミュニティで実践される心理療法との関連性を持つアクティブな比較対照条件を作成することを目的としました。

開発と構造

  • BSPは、Markowitz、Dr. Michael Sacks、Dr. Allen Frances、およびLarry Jacobsbergの協力により作成されました。
  • この治療法は、治療的アライアンスの構築、感情の寛容と表現の奨励、そしてすべての良い心理療法に固有の「共通因子」(Frank, Rogersなどによる)を利用するという、心理療法の基本に基づいて基礎付けられています。
  • BSPは、16セッションの週次治療を大まかに概説した治療マニュアルとして作成されました。研究では一般に、週に一度の50分間のセッションを10〜12回という時間制限付きで適用されます。

支持的心理療法との区別

「支持的心理療法」という用語は、広く使われながらも曖昧で、ほとんど何でも意味する可能性がある包括的な用語です。しばしば、精神分析から利益を得るには病弱すぎる患者のための二級の治療法、または焦点の定まらない、良性の手を取ることの同義語と見なされてきました。

しかし、BSPはそれとは異なります。BSPは、30年前に未公開のマニュアルで説明された、焦点の定まった、感情に焦点を当てた、骨子の共通因子治療法として定義されています。これは、研究における「アクティブな対照条件」であり、不活性な治療ではなく、患者の改善を助ける高いハードルとして機能します。

2. BSPの核となる原則と焦点

BSPは、心理療法の巨匠であるCarl Rogers(クライアント中心療法)とJerome Frank(共通因子)の先駆的な仕事にルーツを持っています。それは、心理療法をその感情的な核に凝縮します。

感情的焦点(Affective Arousal)

感情への焦点は、BSPの常に中心的な焦点です。

  • BSPの目標の一つは、患者の感情を引き出し、患者がそれを経験し、耐えられるようにすることです。これは、痛みを伴う感情も危険ではなく、対処可能であり、抑圧する必要はないと理解することを助けます。
  • BSPは、セラピストと患者の両方にとって価値のある感情的な理解の喪失を修正しようとしています。
  • BSPの核心は、感情的に検証する治療法です。セラピストは感情について尋ね、感情を探求し、名付けるのを助け、その感情を持つことが合理的であるか、または意味があるかを検討します。このプロセスは、患者が自分の感情の世界を定義し、理解し、受け入れるのに役立ち、環境的および内面の鎮静を通じて症状を緩和します。

共通因子の採用

BSPは、Frankらが定義したすべての効果的な心理療法に共通する要素(共通因子)を治療の基盤として採用します。 共通因子の例としては、以下のようなものがあります:

  • 感情的覚醒(Affective Arousal)
  • セラピストに理解されていると感じること(関係性/治療的アライアンス)
  • 理解のための枠組み(根拠)
  • 専門知識(厳密さ)
  • 治療的手順(儀式)
  • 改善への楽観主義(リアリズム)
  • 成功体験(再士気向上)

3. 他の治療法との比較

BSPは、感情に焦点を当てたアプローチを共有する他の治療法と比較されますが、構造や焦点において異なります。

対人関係療法(IPT)との比較

BSPは、感情を引き出し検証する点でIPTと重複しますが、IPTがより外部の、環境的な焦点にリンクする内側の、感情的な側面を構成します。BSPを「IPTから感情に焦点を当てた核心に剥ぎ取られ、行動項目から剥ぎ取られたもの」と見なすことができます。BSPのセラピストは、IPTで行われるような「どのような選択肢がありますか?」といった質問をしたり、対人関係の行動を取らせるためのロールプレイを日常的に行ったりはしません。

精神力動的治療法との比較

BSPは精神力動的に友好的ではありますが、真の精神力動的治療法ではありません。精神力動的防御や転移に対処したり、解釈を行ったり、無意識の幻想の構造を利用したりすることはありません。

認知行動療法(CBT)との比較

CBTのような曝露に基づく療法は、理論上は感情を扱いますが、実際にはしばしば軽視される傾向があります。感情を欠いた心理療法セッションは退屈で効果が薄く、CBTが他の手に渡ると、感情的な問題から切り離された「乾燥した、機械的な、知的な演習」になりすぎることがよくあります。BSPは、感情的覚醒を再び組み込むことを求める、認知療法の「第三の波」の台頭の理由の一部を反映しています。

4. 研究と臨床的有効性

BSPは、無作為化対照試験において、機能することが示されています。

  • アクティブな対照としての使用: BSPは、治療法の比較研究において、待機リストのような非倫理的な比較対象を避け、実績のある代替治療法(IPTやCBTなど)と比較するためのアクティブな対照条件として使用されてきました。
  • 初期の研究: 流行の最盛期に抑うつとHIV/AIDSの両方を持つ患者サンプルを対象とした無作為化対照試験で、BSPは対人関係療法(IPT)、認知行動療法(CBT)、および三環系抗うつ薬イミプラミンと比較され、非常によく機能しました
  • その後の研究: その後、BSPは国立精神衛生研究所から資金提供を受けた追加の研究でアクティブな対照条件として継続的に使用されており、他の研究者(例:米国およびドイツの慢性抑うつ病の多施設研究)も使用しています。
  • 結果: BSPは、セラピストが他の治療を行う競合相手よりも治療の経験が少ない場合でさえ、試験で非常にうまく機能しました。累積的な研究結果は、抑うつ治療ガイドラインへの支持的心理療法の組み込みの正当性を提供しています。

BSPは、主に気分障害の治療に使用されてきましたが、同じ原則は、不安障害を持つ患者(およびおそらく他の精神障害)にも適用可能であるとされています。BSPは、感情的な理解と許容、そして何らかの習得を得ることを通じて、症状を軽減するだけでなく、患者の生活を広げ、内面の側面を毒性から有用なものに変えることにつながります。


治療研究、特に心理療法の効果を検証するアウトカム研究は、比較対象の設定に関して特有の課題に直面しています。支持的心理療法(Supportive Psychotherapy: SP)、特に研究用に厳密に定義された**短期支援的心理療法(Brief Supportive Psychotherapy: BSP)**は、この治療研究の課題を克服するために重要な役割を果たしてきました。

以下に、心理療法の治療研究が直面する問題、BSPが果たした役割、および具体的な試験結果について詳述します。

1. 心理療法アウトカム研究の比較対照の課題

心理療法のアウトカム研究が直面する主要な問題の一つは、薬物試験で使用される不活性な錠剤プラセボに相当する比較対象がないことです。

待機リストの問題点

いくつかの心理療法研究では、比較対象として待機リストが使用されてきました。これは、治療を求めて研究に参加した患者に対し、「治療はありません。12週間後に戻ってきて、もう一度症状を評価します」と告げる方法です。

待機リストは以下の理由から問題視されています。

  1. 非倫理性と失望: 苦しんでいる患者にとって、失望や不公平であり、治療可能な障害を持つ患者にとっては非倫理的である可能性が高いです。
  2. ノセボ効果: 待機リストは、不活性または有害な状態(ノセボ)である可能性があり、このような状態よりも優れている治療法は、それ自体ではあまり主張できません。

アクティブな対照条件の必要性

真の達成とは、不活性な状態ではなく、アクティブな対照条件(言い換えれば、何かを行う治療)に勝る治療を見つけることです。研究者は、空の条件ではなく、それを受けた患者を助けるかもしれない治療を開発したいと考えました。

2. 短期支援的心理療法(BSP)の誕生と研究における役割

この課題に応えるため、研究者は、心理療法の基本(治療的アライアンスの構築、感情の寛容と表現の奨励、およびすべての良い心理療法に固有の**「共通因子」**の利用)に基づいて骨子化された介入として、BSPを開発しました。

BSPは、曖昧な包括的用語である「支持的心理療法」とは異なり、研究のために注意深く定義されたマニュアル化された治療法です。

アクティブな対照条件としてのBSP

BSPは、ランダム化比較試験において、アクティブな対照条件として機能します。

BSPの設計上の目的は、治療を受けている患者の改善を助ける治療であり、他の心理療法がそれを上回ることを期待する高いハードルとして設定されることです。そして、他の治療法は一般にBSPを上回ることに成功しないとされています。

3. BSPが使用された具体的な治療試験

BSPは、コーネル大学医学部の若手教員だったMarkowitz氏らが、非常に脆弱な患者集団を治療するための心理療法研究の比較条件として開発しました。

HIV/AIDS関連うつ病試験 (Markowitz et al., 1998)

最初の重要な無作為化対照試験で、BSPは以下の実績のある代替治療法と比較されました。

  • 対人関係療法(IPT)
  • 認知行動療法(CBT)
  • 三環系抗うつ薬イミプラミン

対象となった患者は、当時治療不可能でスティグマ化されていた流行の最盛期に、**抑うつとヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染または後天性免疫不全症候群(AIDS)**の両方を持つサンプルでした。

結果: BSPは、この試験で非常にうまく機能しました

慢性抑うつ病の多施設研究

その後、BSPは国立精神衛生研究所(NIMH)から資金提供を受けた追加の研究でアクティブな対照条件として使用され続けています。

  • BSPは、米国中およびドイツ中の慢性抑うつ病の多施設研究で使用されました。
  • BSPは、治療を行っているセラピストが他の治療を行っている競合相手よりも経験が少ないにもかかわらず、非常にうまく機能したことが示されています。
  • 累積的な研究結果は、抑うつ治療ガイドラインへの支持的心理療法の組み込みの正当性を提供しています。

その他の研究

BSPは他の研究者にも使用されており(例:Lipsitz et al., 2008; Koszycki et al., 2012; Swartz et al., 2016; Schramm et al., 2017)、現在も、抑うつと不安症状を持つ患者に対する曝露に基づく療法行動活性化との比較試験で監督されています。

研究の観点から見ると、BSPは単なる「対照」条件ではなく、アクティブな治療でもあり、他の心理療法を上回ることが難しい厳密な対照であると見なされています。評価者は、アドヒアランス評価尺度を使用して、他の定義された心理療法とBSPを区別できることが示されています。

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