対人関係レパートリーが支配と服従しかないケース

「支配か、服従か」しか対人レパートリーがないケースは、
単なる性格傾向ではなく、関係様式の未分化の問題です。

「支配・服従」以外の対人関係テンプレートを持つこと。

対外的に戦う集団では支配・服従の関係だけで存在しているほうが機能的である。
その意味では、そのような集団の歴史を背負った存在であって、被害者の側面もある。
武士として、軍人として、社会人として、刷り込まれた「支配と服従」が、プライベートな密室でも展開される。本人はいびつなままで、子や孫に引き継がれる。戦争PTSDは戦争体験の極端な形の症状であるが、「支配と服従の対人関係テンプレート」も、そのような遺産である。


Ⅰ.構造の特徴

このタイプの基本構図は単純です。

  • 上に立つか
  • 下に回るか

中間が存在しない。

協働、交渉、相互調整、ユーモア、曖昧さの保持――
こうした第三の選択肢が育っていない。

そのため、

  • 職場では強圧的
  • 家庭では暴力的
  • あるいは外では従順、内で爆発

という二極化が起こります。


Ⅱ.心理力動

1.世界像が「力の階層」で構成されている

関係を

対等な他者
ではなく
序列の中の位置

としてしか認識できない。

これはしばしば幼少期の関係体験と関連します。

  • 強圧的な親
  • 情緒的に不安定な養育者
  • 恐怖に基づく統制

安全な相互性を経験していない。


2.恥の耐性の低さ

支配‐服従型の人は、

  • 無力感
  • 見捨てられ不安

に極端に弱い。

そのため、

  • 先制攻撃で優位に立つ
  • 逆に完全服従で安全を確保する

という両極端を行き来します。


3.象徴的父性の不在

象徴的な「法」が内在化されていないと、

  • 恣意的支配
  • あるいは無境界な従属

に傾きます。

ここで言う父性とは、
フロイトやラカンが論じた「法を導入する機能」です。

ジークムント・フロイト
ジャック・ラカン

法がないと、力だけが基準になる。


Ⅲ.DVとの接点

DV加害者の一部は、

親密圏=支配してよい空間

と無意識に理解しています。

外部社会では服従し、
内部で支配を回復する。

これは単なる怒りではなく、

自己の崩壊を防ぐためのコントロール行動

です。


Ⅳ.臨床的介入のポイント

このタイプに対して重要なのは、

1.二項対立を揺らすこと

「勝つか負けるか」以外の選択肢を体験的に学ばせる。

例:

  • 小さな交渉成功体験
  • 合意形成の練習
  • 境界を守りつつ譲歩する経験

2.感情語彙の拡張

怒りの背後にある

  • 不安
  • 寂しさ

を言語化できるかどうか。


3.力と尊厳の分離

「尊厳=優位」ではないと理解すること。


Ⅴ.社会的背景

競争が強調される社会では、

  • 成功=上位
  • 失敗=下位

という単純化が強まります。

そのとき、対人レパートリーは貧困化します。


Ⅵ.本質的問題

支配‐服従しかない関係様式の核心は、

対等な他者を想像できないこと

です。

他者は「脅威」か「庇護者」でしかない。

対等性とは、
自他の弱さを同時に認められる能力です。


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