食事療法の核心

ガエミ氏は、精神疾患を「脳の慢性炎症」や「代謝の異常」という側面から捉えており、食事を単なる栄養補給ではなく**「脳の炎症を鎮めるための介入手段」**と考えています。

彼が推奨する食事療法の核心は、**「地中海式ダイエット」**をベースにしつつ、脳のエネルギー代謝(インスリン抵抗性)を改善することにあります。


1. 地中海式ダイエットの徹底

ガエミ氏は、多くの研究(SMILESトライアルなど)に基づき、地中海式の食生活がうつ病のリスクを下げ、再発を防止する強力なエビデンスがあることを強調します。

  • 積極的に摂るもの:
    • オメガ3脂肪酸: 青魚(イワシ、サバ)、クルミ、フラックスシード。脳の神経細胞の膜を柔軟にし、炎症を抑えます。
    • ポリフェノール: 色の濃い野菜、果物(ベリー類)、オリーブオイル。酸化ストレスから脳を守ります。
    • 食物繊維: 全粒穀物、豆類。腸内細菌叢を整えることで、「腸脳相関」を通じてメンタルを安定させます。
  • 避けるべきもの:
    • 超加工食品: スナック菓子、保存料の多い食品。これらは脳の炎症を直接的に引き起こすと述べています。

2. 「インスリン抵抗性」と脳の関係

ガエミ氏の独自性は、**「糖質と気分の変動」**のリンクを鋭く指摘している点にあります。

  • 血糖値のスパイクを避ける:砂糖や精製された炭水化物(白いパン、白米)を摂取すると、血糖値が急上昇し、その後に急降下します。この「血糖値の乱高下」が、気分の不安定さ(特に焦燥感やイライラ)を増幅させます。
  • 脳のインスリン抵抗性:慢性的によくない食生活を続けていると、脳がインスリンをうまく利用できなくなり、エネルギー不足に陥ります。ガエミ氏は、これが**「双極性障害の悪化」や「将来の認知症(アルツハイマー病)」**への道筋になると警告しています。

3. 具体的な「ガエミ流・食のルール」

ガエミ氏の臨床的なアドバイスをまとめると、以下の3箇条になります。

① 炭水化物の「質」を変える(低GI)

砂糖入りの飲料や菓子パンは、脳にとっての「毒」と考えます。炭水化物を摂るなら、玄米、オートミール、全粒粉パスタなど、吸収が穏やかなものを選びます。

② 良い「脂質」を戦略的に選ぶ

脳の約60%は脂質でできています。サラダ油(オメガ6過多)を減らし、エキストラバージンオリーブオイルや魚の油を増やすことで、脳の「構成部品」を高品質なものに入れ替えます。

③ 「微量元素」への意識

これまでお話ししたリチウムに加え、マグネシウムや亜鉛、ビタミンDといった、神経伝達に関わるミネラル・ビタミンの不足を避けるよう指導します(これらは地中海食で自然に補えます)。


4. アルコールとカフェインへの厳格な姿勢

食事療法の一環として、これら「脳を揺さぶる物質」に対しても厳しい基準を持っています。

  • アルコール: 睡眠の質(リズム)を破壊し、リチウムの効果を減弱させるため、原則として避けるべき。
  • カフェイン: 擬似的な軽躁状態を作り出し、その後の「クラッシュ(うつ)」を招くため、特に気分が不安定な時期は禁止です。

結論:食事は「最も身近な薬」である

ガエミ氏にとって、食事療法とは「痩せるためのダイエット」ではありません。**「脳内の火事(炎症)を消し、神経細胞を長生きさせるための生物学的戦略」**なのです。

「あなたが今日食べるものは、数ヶ月後のあなたの脳の構造そのものになる。」


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