The pseudoscience of lithium and suicide: Reanalysis of a misleading meta-analysis. (J Psychopharmacol, 2024)

ガエミ氏が2024年に発表したこの論文は、彼が長年訴え続けてきた**「リチウムの自殺予防効果」**を死守するための、極めて攻撃的かつ緻密な反論論文です。

事の端端は、2022年〜2023年にかけて発表された大規模なメタ解析が「リチウムには自殺予防効果がない」という結論を出したことにあります。これに対しガエミ氏は、**「データの扱い方が科学的ではなく、統計的な誤謬に満ちている」として、それらの研究を「疑似科学(Pseudoscience)」**と断じ、自ら再解析を行いました。

論文の主なポイントを整理します。


1. 批判の矛先:なぜ「効果なし」という結論が出たのか

ガエミ氏は、先行するメタ解析(特にBRIGHT研究など)が陥った**「選択バイアス」**を鋭く批判しています。

  • プラセボ群の除外: 先行研究では、倫理的な理由から「自殺リスクの高い患者」をプラセボ(偽薬)群に割り当てない傾向がありました。その結果、比較対象となるプラセボ群に「そもそも自殺しそうにない人」ばかりが集まってしまい、リチウムの効果が統計的に薄まってしまったと指摘しています。
  • 期間の問題: リチウムの自殺予防効果は、数ヶ月の短期投与ではなく、年単位の長期投与で真価を発揮します。短期的なデータばかりを集めたメタ解析は、リチウムの本質を見誤っていると主張しました。

2. ガエミ氏による再解析の結果

ガエミ氏は、より厳格な基準でデータを再抽出し、**「ランダム化比較試験(RCT)の再解析」**を行いました。

  • 劇的な数値: 正しくデータを再評価した結果、リチウムはプラセボと比較して自殺率を約1/5(80%以上)も減少させるという極めて強力なエビデンスを再提示しました。
  • 「特異的」な効果: 驚くべきことに、この効果は「気分が安定したから自殺が減った」という二次的なものではなく、**「気分が安定していなくても、リチウムを飲んでいるだけで自殺衝動が抑えられる」**という、リチウム特有の抗自殺作用(Anti-suicidal effect)であることを強調しています。

3. なぜ「疑似科学」と呼んだのか

ガエミ氏が「疑似科学」という強い言葉を使ったのには、哲学的な理由があります。

  • エビデンスの乱用: 「エビデンスに基づく医療(EBM)」という言葉を隠れ蓑にして、不適切な統計手法でリチウムの価値を貶めることは、科学の名を借りた欺瞞であると憤っています。
  • 臨床的責任: このような誤ったメタ解析が広まることで、医師がリチウムの処方を躊躇し、結果として救えるはずの患者が自殺に追い込まれることを、彼は「医学的な犯罪に近い」と考えています。

4. 論文の結論:精神医学界への警告

この論文でガエミ氏が最も伝えたかったことは、以下の通りです。

「リチウムは精神医学において、唯一無二の命を救う薬である。安易な統計学の操作によってその輝きを曇らせてはならない。」

彼は、最新の薬(高価な抗精神病薬など)を売りたい製薬会社の意図や、古い薬(安価なリチウム)を軽視する現代の風潮が、こうした「誤ったメタ解析」を生む土壌になっていると見ています。


まとめ:ガエミ氏の執念

この2024年の論文は、ガエミ氏が単なる学者ではなく、**「患者の命を守るために、現代精神医学の主流派とも真っ向から戦う闘士」**であることを象徴する一報となりました。

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