軽躁病:抑うつ抑制を無効化する防御機序
要旨
目的
双極性障害に関する進化的視点は、これらの疾患の起源への理解を深め、臨床医が正常な状態と異常な状態を区別する助けとなる。軽躁病は、重度の躁病や抑うつとは対照的に、有益な側面を持っているように見え、診断が難しい場合があるという点で、双極性障害の中でも特異なものである。本論文では、防御機序としての軽躁病の進化に関する理論的視点を提示する。
方法
抑うつの「適応度(fitness)」を低下させる側面と、軽躁病/躁病の適応度を高める側面に焦点を当てた文献レビューを行った。
結果
抑うつにつきもののあらゆる逆境の中で、身体的・精神的活動の抑制(抑うつ抑制)は最も有害な結果をもたらすものであり、人類の進化の過程において適応度を著しく低下させてきたと考えられる。軽躁病は、この「抑うつ抑制」を無効化(オーバーライド)する防御機序として進化したものであり、通常は短期間作用することで、身体的・精神的活動を、適応度を維持または向上させるレベルまで回復させると提案する。気分の高揚ではなく「過活動」こそが、適応度を低下させる状態である抑うつ抑制に対する防御機序として、軽躁病を機能させているのである。
抑うつ抑制には、行動活性化システム(BAS)と行動抑制システム(BIS)という2つの基本的な動機づけシステムが関与している。抑うつ抑制はある程度、低いBASと高いBISによって構成される。人類の知性が進化するにつれ、BASを抑制しBISを活性化させる「認知」が増幅された結果、抑うつ抑制が強化されることとなった。
限界
本研究は理論的視点に基づくものである。
結論
抑うつ抑制を無効化する能力があることを踏まえると、軽躁病は、治療すべき問題というよりもむしろ、一種の「自然な治療(natural treatment)」と見なせるかもしれない。それは、通常は社会的行動を向上させつつ、機能が最も損なわれた領域において最大の改善をもたらすものである。
