「Antecedents of manic versus other first psychotic episodes in 263 bipolar I disorder patients(双極I型障害患者263名における、初発の躁病エピソード対その他の精神病エピソードの前兆)」2014の要約です。
この研究は、「双極性障害が本格的に発症する10年以上前から、どのような予兆(前兆)が現れるのか」、そして「その予兆の内容によって、最初に現れる病相(躁か、うつか等)を予測できるか」を明らかにした重要な報告です。
論文の要約
1. 研究の目的
双極I型障害(BD-I)において、最初のエピソードがどのようなタイプ(躁病、うつ病、混合状態など)で始まるかは、その後の経過を予測する鍵となります。本研究は、本格的な発症に先立つ臨床的な「前兆(アンテセデント)」が、初発エピソードのタイプを予測できるという仮説を検証しました。
2. 対象と方法
- 対象: 初発の成人双極I型障害患者 263名。
- 方法: 本格的な精神病症状を伴う初発エピソードが「純粋な躁病」であった群(150名)と、「それ以外(混合状態、抑うつ、または非感情性の精神病症状など)」であった群(113名)に分け、過去の記録やインタビューから発症前の症状を比較・分析しました。
3. 主な結果
本格的な発症の平均12.3年前から、段階的な予兆(計32項目を特定)が現れ始めることが分かりました。
- 「躁病以外(うつ・混合状態など)」で始まった群に特有の前兆(オッズ比順):
- 早期(子供時代〜)の注意障害(集中力の欠如)
- 発症直前の抑うつ状態
- 早期の困惑・当惑した感覚
- 薬物などの解毒治療(デトックス)の経験
- 早期の不安定で混ざり合った感情(混合性の感情)
- 抗うつ薬の使用歴
- 早期の不快気分(不機嫌、不満感)
- 中期の抑うつ、早期の衝動性、直前のアンヘドニア(喜びの喪失)
- 中期の物質乱用
- 家族に「大うつ病性障害」の既往がある
- 最初の予兆が現れた年齢がより若い
- 「躁病」で始まった群に特有の前兆:
- 発症直前の行動面の問題(素行の乱れなど)
- 家族に「双極I型障害」の既往がある
4. 結論
双極I型障害の患者において、本格的な発症の10年以上前から臨床的な予兆は始まっており、それは段階的に進行します。 また、「躁病から始まるタイプ」と「それ以外(うつ・混合状態等)から始まるタイプ」では、その10年間の予兆のパターンが明確に異なっていることが示されました。
この研究の意義(わかりやすく言うと)
- 発症はずっと前から始まっている: 「突然発症した」ように見えても、実は12年も前から注意力の低下や感情の不安定さなどのサインが出ているケースが多い。
- 前兆による予測の可能性: 子供の頃に「注意欠陥(不注意)」や「感情の不安定さ」があり、家族にうつ病の人がいる場合は、将来、双極性障害の「うつ状態や混合状態」から発症するリスクを考慮できる。
- 早期介入への期待: これらの前兆を正しく認識することで、本格的な発症(精神病状態)に至る前の、より早い段階での診断や適切な治療介入(安易な抗うつ薬処方の回避など)に役立つ可能性がある。
