「Differences in Demographic and Clinical Characteristics of Patients With Depressive vs. Manic First Episode of Bipolar Disorder(双極性障害の初発エピソードが抑うつ対躁病である患者の人口統計学的および臨床的特徴の違い)」(2021年)の要約です。
中国の大規模な患者群を対象に、「最初にうつから始まったか、躁から始まったか」によって、その後の経過や患者の特徴にどのような違いが出るかを調査した研究です。
論文の要約
1. 研究の目的
双極性障害は人によって最初の症状が異なります。本研究は、初発エピソード(抑うつ vs 躁病)の違いが、人口統計学的特徴(性別、教育歴など)、臨床的特徴(診断までの期間、精神病症状の有無など)、および2年間の再発率にどう影響するかを比較することを目的としました。
2. 対象と方法
- 対象: 中国の双極性障害患者 742名の大きなコホート。
- グループ分け:
- 抑うつ発症群: 424名(57.14%)
- 躁病発症群: 318名(42.86%)
- 追跡調査: 全患者を24ヶ月間にわたりフォローアップし、6、12、18、24ヶ月時点での再発率や受診状況を記録しました。
3. 主な結果
- 有病率: 躁病から始まる人よりも、うつ病から始まる人の方が多い(約57% vs 43%)。
- 人口統計的な違い:
- 躁病発症群: 男性が多く、教育レベルが低く、診断時の年齢が高い傾向。
- 抑うつ発症群: 女性が多く、都市部に住んでいる割合が高い。
- 臨床的な違い:
- 診断までの遅れ: 躁病から始まった人の方が、最初の症状が出てから「双極性障害」と正式に診断されるまでの期間が長かった(10.8年 vs 8.85年)。
- 誘因: 抑うつから始まった人は、発症前に心理的なストレス(引き金となる出来事)を報告する割合が高かった。
- 精神病症状: 意外にも、抑うつから始まった人の方が、初発時に精神病症状(妄想や幻覚など)を伴う割合が高かった(45.75% vs 37.53%)。
- 予後(再発率):
- 躁病発症群の方が再発しやすい: 12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月のすべてのチェックポイントにおいて、躁病から始まったグループの方が、抑うつから始まったグループよりも有意に再発回数が多かった。
4. 結論
双極性障害は、最初のエピソードが「躁」か「うつ」かによって、その後の病状や再発のリスクが大きく異なります。特に「躁病から始まった患者」は再発のリスクがより高く、診断までに時間がかかる傾向があるため、より注意深いモニタリングと早期の診断・治療が重要であると結論づけられています。
この研究のポイント(わかりやすく解説)
- 「うつ」から始まる方が一般的: 多くの患者が最初は「うつ病」として現れます。
- 「躁」から始まると予後が厳しい: 最初に躁状態を経験した患者は、その後の2年間で何度も症状を繰り返す(再発する)確率が高いため、医師はより警戒して治療にあたる必要があります。
- 診断の難しさ: 躁病から始まっても、正しく「双極性障害」と診断されるまでに10年以上かかるケースがあり、早期発見の難しさが浮き彫りになりました。
