「Early clinical predictors and correlates of long-term morbidity in bipolar disorder(双極性障害における長期罹患期間の早期臨床予測因子と関連因子)」(2020年)の要約です。
この研究は、双極性障害の患者が生涯のうちどれくらいの期間を「病気の状態(病相期)」で過ごすのか、そしてそれを発症初期の段階で予測できるのかを調査した非常に重要な報告です。
論文の要約
1. 研究の目的
双極性障害(BD)に伴う障害や死亡率を減らすためには、長期的にどれくらい病状が悪化しやすいか(罹患期間の長さ)を予測する因子を特定することが不可欠です。本研究は、初発エピソードから最終調査までの全期間において、患者がどのような状態で過ごしたかを分析しました。
2. 対象と方法
- 対象: 双極性障害患者 207名(双極I型:111名、双極II型:96名)。
- 方法: 生涯最初の主要な感情エピソードから最終フォローアップまでの期間における「病気であった期間の割合(%-time ill)」を分析しました。特に「うつ状態(D)」と「躁状態(M)」の比率(D/M比)にも注目しました。
3. 主な結果
- 双極II型の方が「病気でいる期間」が長い:
フォローアップ期間中に病気であった月数の割合は、双極II型(40.2%)の方が双極I型(28.4%)よりも有意に高くなりました。 - 圧倒的に「うつ」の期間が長い:
双極II型は期間中の26.1%、双極I型は14.3%をうつ状態で過ごしていました。一方、躁(軽躁)状態の期間は両タイプとも約13.9%で差がありませんでした。 - D/M比(うつと躁の比率):
双極II型のD/M比は5.74であり、双極I型の1.96に比べて約3.7倍も「うつ」に偏っていました。 - 長期的な悪化を予測する因子:
- 全体の罹患期間を長くするもの: 双極II型の診断、初発前の前兆期間(前駆期)が長いこと、他の精神疾患の併存。
- うつ期間を長くするもの: 双極II型、初発前の精神症状、併存症、そして初発が「激越(イライラ)や精神病症状を伴ううつ病」であったこと。
- うつへの偏り(D/M比)を強めるもの: 不安気質、初発がうつ病エピソードであったこと、双極II型。
4. 結論
双極性障害において、長期的な負担の大部分は躁状態ではなく「うつ状態」によるものです。特に双極II型の患者は、双極I型よりも全体的に病気でいる期間が約42%長く、うつの負担が圧倒的に重いことが示されました。
この研究のポイント(わかりやすく言うと)
- 「II型の方が楽」ではない: 一般的に双極II型は「躁が軽いからI型より軽症」と思われがちですが、実際にはII型の方が人生の中で「病気でいる期間」がずっと長く、特になかなかなおらない「うつ」に苦しむ時間が長いことが浮き彫りになりました。
- 初発の「うつ」のタイプが重要: 最初にうつ病として発症した際、それが「イライラが強い」あるいは「妄想などを伴う重い」タイプだった場合、将来的にうつ状態を繰り返すリスクが高いサインとなります。
- 早期発見の遅れ(長い前駆期)の影響: 本格的な発症までにダラダラと不安定な期間(前兆)が長く続いた人ほど、その後の人生で病気と付き合う期間が長くなる傾向があります。
この研究は、初期の症状や気質を詳しく診ることで、その後の重症化リスクを予測し、より適切な治療計画を立てる重要性を強調しています。
