「脳主義/DNA主義」仮説の延長


Ⅰ.進化ゲーム理論によるモデル化

1.基本枠組み

進化ゲーム理論では、個体は戦略を持つ存在とされる。

ここで仮に二戦略を置く:

  • C(Cooperate)=弱者を助ける/関係維持
  • D(Defect)=弱者を利用・攻撃する

DNA主義はC戦略の長期的安定性を重視する立場。
脳主義はD戦略の即時報酬に引き寄せられる傾向とみなせる。


2.繰り返しゲームと時間割引率

繰り返し囚人のジレンマでは、

  • 将来が十分に重視される(割引率が低い)場合 → Cが安定
  • 将来が軽視される(割引率が高い)場合 → Dが優位

SNS社会は「極端に割引率が高い環境」。

よってD(攻撃・炎上)が増幅される。

あなたの理論を形式化すると:

脳主義 = 高割引率社会で優勢になる短期戦略
DNA主義 = 低割引率社会で安定する長期戦略


3.評判システムの崩壊

小規模社会では評判が蓄積されるため、D戦略は長期的に不利。

しかし匿名化・巨大化した環境では評判の連続性が弱い。

つまり、

SNSは「進化的安定戦略」を不安定化する環境

と位置づけられる。


Ⅱ.精神分析との厳密接続

ここで脳主義/DNA主義を欲動理論に接続する。

1.エロスとタナトス

ジークムント・フロイトは、

  • エロス(結合・統合)
  • タナトス(破壊・解体)

を区別した。

DNA主義はエロス的。
脳主義が暴走するとタナトス的。

弱者攻撃は外向化されたタナトス。


2.分裂ポジション

メラニー・クラインの理論で言えば、

  • DNA主義=抑うつポジション(両価性の受容)
  • 脳主義=妄想分裂ポジション(善悪二分)

SNSは分裂ポジションを恒常化させる。


3.超自我の変質

近代的超自我は「弱者を守れ」と命じた。
しかし現代では「勝て」「生産せよ」が命令となる。

ここで超自我は、

DNA的倫理装置 → 神経的成果装置

へと変質する。


Ⅲ.日本文化における特殊性

日本社会には特有の構造がある。

1.恥文化と関係主義

日本は「罪」よりも「恥」による社会統制が強いとされる。

恥は対面関係で機能する。
しかしSNSは身体不在。

よって、

日本型倫理装置が空洞化しやすい


2.空気の支配

同調圧力が強い社会では、

  • 強者への同一化
  • 空気への服従
  • 集団攻撃への参加

が起こりやすい。

これは脳主義の集団的増幅。


3.家族構造との接続

父性的規範が強く、弱さの表出が抑圧される文化では、

弱者は「恥の象徴」になりやすい。

よって攻撃対象化しやすい。


Ⅳ.「恥」の再定義

ここが最も重要です。

1.恥を進化的装置として再定義

恥とは、

協力関係を壊す行為を抑制する内的警報装置

と再定義できる。

つまり、

恥 = DNA主義的フィードバック機構


2.恥の消失と脳主義の肥大

SNSでは、

  • 匿名性
  • 物理的距離
  • 即時承認

により恥が弱まる。

恥が機能しないと、

D戦略(攻撃)が短期優位になる。


3.成熟とは何か

成熟とは、

即時快楽よりも関係維持を優先できる能力。

心理学的には「遅延報酬選択能力」。

社会的には「低割引率文化」。

人間学的には、

弱さを引き受けられる主体


Ⅴ.統合理論(最終形)

理論を一文で精緻化すると:

文明とは、長期的関係合理性(DNA主義)と即時神経報酬(脳主義)の緊張の上に成立している。

そして現代は、

  • 割引率上昇
  • 恥装置の弱化
  • 分裂ポジションの恒常化
  • アルゴリズムによる刺激増幅

により、脳主義が優位化している。

弱者攻撃はその症候。


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