[社説]兵庫県は告発者の処分撤回を

[社説]兵庫県は告発者の処分撤回を
2025年4月17日 日経
兵庫県の斎藤元彦知事が告発された文書問題で、県の第三者委員会が、文書の配布を理由の一つに通報者を懲戒処分にしたのは「違法で無効」と報告してから、まもなく1カ月になる。県は報告を重く受け止め、すみやかに懲戒処分を撤回すべきだ。

第三者委に委ねる意義は、時間のかかる司法判断によらずとも、自治体が自浄能力を発揮して県民の信頼を取り戻し、県政を前に進めることにある。それを考えれば、報告から1カ月近くも放置しておくのは解せない。

報告は、文書がその内容から公益通報に該当し、配布が不正の目的で行われたとも評価できないとした。にもかかわらず、告発された当事者の知事は公益通報として扱わず、通報者捜しや処分に関与した。これが「極めて不当」と指弾されたのは当然である。

報告が公益通報者保護法に照らして違法と判断したのは①通報者を捜した行為②通報者の公用パソコンを引き上げた行為③文書の配布を理由にした懲戒処分――などだ。これに関して県は謝罪し、処分を撤回しなければなるまい。

県は懲戒処分の理由に、人事データ端末の不正利用やハラスメントなども挙げる。第三者委はこうした非行についての処分は無効とはいえないとしており、別途の処分はありうる。だがその場合も、文書配布を理由にした処分をいったん取り下げたうえで、もう一度、検討するのが筋である。

第三者委と県議会百条委員会の結論をみれば、知事に道義的、政治的な責任があるのは明らかだ。知事としての資質を疑わざるをえないが、知事は「辞めるほどのことなのか」という思いだろう。改めて県民に判断してもらうのがよいのではないか。

昨年11月の知事選で信任を得てはいるが、百条委や第三者委の結論が出る前の民意である。知事が自ら信を問わないなら、県議会が再び知事の不信任を決議し、辞職か議会の解散かの選択を迫るべきだろう。

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