発見的手法(ヒューリスティック)というのがある。これは昔から(昭和の頃)ある。「発見的」とか「ヒュー李ティック」とか謎めいた言葉だけど、簡単に言えば下記のようなグラフがあって、一番低い場所を見つける方法なわけですよ。

ただこうやってグラフ全体を眺めることができない。人間がこのグラフの上を歩く蟻だと考える。わかるのは下り坂か上り坂かとどっちにどれだけ歩いたかというものだけ。
山の向こうにはもっと低い場所があるかもしれない。でもないかもしれない。山の向こうに行ってみようか?無駄足になるかもしれないから、やめようか、と。これを試行錯誤する。
上記は1次元だから右に行くか左に行くかしかなかったけど、2次元だとより複雑になるよね。一番低い場所を探すのも大変になる。

図に書けないけど、3次元や4次元もあり得るわけじゃん。aiというのはこれを100次元とか1000次元で行ってるわけですよ。
だからaiが「やってること」はわかる。でもaiが「どこを一番低い場所と見つけたか」は、「わからない」わけですよ。1000次元のとか人間の頭では想像できないじゃん。
じゃあaiの学習って何をさせているかといえば、この「地形」を描かせてるわけ。1次元で説明するなら下記の曲線の形を決めさせている。近似させてるといったらいいかな。
例えば今、戦争を始めるべきか否かを判断する、こういう曲線があるわけですよ。もちろんもっと高次元だけどね。んで「こうすべきだ」というのを曲線の一番低い場所を見つけるという作業に置き換える。「ここが一番低い場所だ」「これが最適な選択だ」と見つけた場所が、aiの判断になる。
え?そんな簡単な方法で決められるわけがない?だからさ、1000次元のものを1次元で説明してるから「簡単」に見えるだけで、実際は複雑なわけですよ。
じゃあこの曲線はどうやって決めるのか?これがaiの事前学習というやつで、人間が絵を描くとき、輪郭線を何度も引きならがちょっとずつ修正していくじゃん。

これをaiにやらせてるわけ。「この部分はもっと凹んでるよ」「この部分はもっと尖ってるよ」と、aiが出した答えにダメ出しをしていく。最初は似ても似つかない形だったのが、だんだん似てくるわけですよ。
でも逆に今度は「人間」は全体像が描けない。「社会正義」みたいな概念がどういう形をしてるかなんて、人間にもわからないじゃん。aiが出した答えを「これは正しいよ」「これはまちがってるよ」というだけ。その回答をもとにaiは自分の中にグラフの形を形成していく。
でもそのグラフの形は1000次元だから人間には「わからない」。でもそれは人間が目に見える形として認識できないだけで、人間の脳でも同じことが行われてるわけですよ。「社会正義」という「形」があるわけ。
だからaiは「魔法」ではない。「複雑」なだけ。