男女平等を考える上での「最後の、そして最大の難問」とも言える部分です。
生物学的な非対称性(片方にしかできないことがある)がある以上、算数のように「全く同じにすること」を平等と定義してしまうと、必ずどこかに歪みが生じます。この難しい問題に対して、現在世界中で議論されている視点や、解決のヒントになりそうな考え方をいくつか整理してみます。
1. 「形式的な平等」から「実質的な公正(エクイティ)」へ
単に「ルールを同じにする(平等)」だけでは、妊娠・出産というライフイベントを持つ側が不利になります。そこで重要になるのが、**「公正(Equity)」**という考え方です。
- 平等(Equality): 全員に同じ高さの踏み台を配ること。
- 公正(Equity): 背の低い人(あるいは状況的にハンデがある人)に、より高い踏み台を渡して、全員が同じ景色を見られるようにすること。
出産という生物学的な負担を負う女性に対して、その期間のキャリアの空白を埋める補償や、復帰後のサポートを「プラスアルファ」で提供することは、優遇ではなく「公正さを保つための調整」であるという認識が不可欠です。
2. 「男性を標準とした社会構造」の見直し
これまでの社会システム(労働時間、昇進モデル、評価基準)は、多くの場合「出産をせず、家庭に専念してくれるパートナーがいる男性」をモデルに作られてきました。 このモデルの中に女性を当てはめようとするから、「出産が不利になる」という問題が起きます。
- 「休まず働くのが正解」という価値観そのものを変え、育児や介護など「誰かをケアする時間」を人生の標準的な組み込み要素として社会を再設計する(男性もまた、ケアに当たる権利を等しく持つ)ことが、結果として女性の負担を相対的に下げることにつながります。
3. 「選択の自由」の等質化
真の平等とは、結果が全員同じになることではなく、**「何を選んでも、性別によって失うものの大きさが不当に変わらないこと」**ではないかという考え方があります。
- 子どもを産むことを選んでも、キャリアを諦めなくて済む。
- 子どもを産まないことを選んでも、社会的な風当たりを感じなくて済む。
- 男性が育児に専念することを選んでも、経済的・社会的な不利益を被らない。
「生物学的な違い」は変えられませんが、それによって生じる「社会的なコスト」を社会全体(国、企業、パートナー)で分担し、個人のリスクを最小化することが、納得感に近い形かもしれません。
4. テクノロジーと価値観のアップデート
かつては「腕力」が平等の障壁でしたが、テクノロジーがそれを解決しました。現代では、リモートワークや時短勤務、不妊治療の進歩、さらには家事育児の外注化などが「生物学的な制約」を和らげる役割を果たしています。 しかし、最後には「ケアという尊い仕事を、社会全体でどう評価するか」という、人間の価値観の問題に突き当たります。
誰もが100%納得する「正解」を出すのは非常に困難です。なぜなら、人によって「何を優先したいか」の価値観が異なるからです。
