民主主義は集団力学である

選挙というものは軽躁状態である。
民主主義は集団力学である。

多数派、少数派、孤独者、などに分かれる。

人間を躁うつ系とシゾフレニー系で分類すると、
立食パーティーの中心部でワイワイやって、話題を振りまいたり、感情を拡大させたりしているのが、躁うつ系である。
壁の花になって、中心部のにぎやかさとは別世界で、神と対話しているのが、シゾフレニー系である。

シゾフレニー系は孤独者。
躁うつ系は多数派と少数派に分かれる。
多数派の中でのし上がりたい人と、その多数派に異を唱える形で反逆するのが格好いいと思う人がいる。

孤独者は、集団の力学など関係なく、孤独な内心の自由を生きている。


1. 祝祭としての選挙と、躁的防衛

選挙が「軽躁状態」を必要とするのは、それが一種の世俗的な祝祭(フェスティバル)だからです。
躁うつ系の「多数派」が形成するうねりは、共鳴(レゾナンス)を呼び起こします。感情を拡大させ、共有し、一つの大きな熱狂に身を投じることで、個々の不安を打ち消す。これを心理学的には「躁的防衛」と呼びます。

この場において、言葉は「意味」を失い「リズム(韻)」や「声量」へと変質します。論理的な整合性よりも、「私たちはいま、繋がっている」という感覚が優先されるのです。

2. 「反逆する少数派」という共依存

躁うつ系に属しながら「少数派」として異を唱える人々は、実は多数派とコインの表裏の関係にあります。
彼らは多数派がいなければ、自分の「格好よさ(アイデンティティ)」を定義できません。多数派への反逆という形で熱量を放出し、注目を浴びることで、彼らもまた集団力学の中心円の中に踏みとどまっています。

つまり、「賛成」も「反対」も、同じ躁的エネルギーの回路を流れる電流の向きが違うだけであり、どちらも「他者の眼差し」という外部電源を必要とする点では共通しています。

3. シゾフレニー系(孤独者)の「切断」

一方で、壁の花であるシゾフレニー系は、この回路から「切断」されています。
彼らにとって、選挙の演説やシュプレヒコールは、遠い異国の、あるいは別次元のノイズに過ぎません。シゾフレニー系が「神と対話している」とき、彼らが参照しているのは「世論」や「支持率」といった横軸の統計ではなく、「真理」や「永遠」といった縦軸の原理です。

民主主義というシステムにとって、この孤独者は最も扱いづらい存在です。なぜなら、彼らは「共感」や「帰属意識」という報酬によって動機づけられないからです。

4. 民主主義のパラドックス:沈黙の質

ここで一つのパラドックスが生じます。
民主主義を健全に保つためには、実は躁的熱狂から一歩引いた、この「孤独者の視点」が必要不可欠であるという点です。

  • 躁うつ系の危機: 集団が過熱し、全体主義的な暴走(あるいは単なるポピュリズム)に陥るリスク。
  • シゾフレニー系の役割: 熱狂の外側から、冷徹に「その前提は間違っていないか?」と問い直す視座。

しかし、現在の「デジタル民主主義(SNSなど)」は、シゾフレニー系が得意とする「静かな内省」や「距離感」を許しません。あらゆる孤独者に「どっちの味方だ?」と踏み絵を迫り、孤独を強制的に「多数派か少数派か」のどちらかの陣営に引きずり込もうとします。

5. 結論:内心の自由の防衛

今後、論点は「孤独者の自由」をどう守るかへと移行します。
集団力学が高度化し、アルゴリズムによって感情が操作される社会において、シゾフレニー系のような「神(絶対的な自己基準)との対話」を保持し続けられるかどうか。

民主主義の成熟とは、躁うつ系が主導する「熱い議論」の賑やかさを認めつつも、その端っこで、誰にも邪魔されずに壁を見つめている孤独者の「静かな不在」を、社会が許容し、守り抜くことにあるのではないでしょうか。

孤独者が孤独なまま、一票を投じる(あるいは投じないという自由を行使する)こと。それこそが、集団力学という引力から脱した、最も純粋な「内心の自由」の証明となるのです。


知能とか趣味(ハビトゥス)の分布を見れば、正規分布になるのだから、
民主主義的多数派は中央部分の話である。
優秀な人とか趣味のいい人は原理的に多数派を形成できないことになる。
真ん中程度だから、多数派なのである。

中央程度の人から見て、知能が高いとか趣味がいいとか認定される人は、実際は、中央程度の人にも理解される程度なのだから、中央程度である。
知能も趣味も、隔絶した位置にいる人は理解されず、孤独に終わることになる。
これは原理的に仕方のないことだ。

こう考えてみると、民主主義は、集団内の最上質な部分を無駄に捨てていることになる。
中くらいの人が、中くらいのことを思考して、中くらいのことを嗜好している。それを全集団に押し付けるという、誠に理不尽な面もある。


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