以下に要約を箇条書き。
- このPDFは、抑うつ症状に対する認知行動療法(CBT)を進化的視点から考察している。
- 著者たちは、抑うつや不安などの非精神病的な「障害」が、進化の過程で生じた適応反応であり、歴史的に病気の状態とは区別されるべきであると論じている。
- 抑うつは、複雑な社会的問題への対応としての熟考スタイル(反芻)を促進するために進化した可能性がある。
- CBTは、反芻をより効率的にし、患者が「行き詰まり」を解消するための行動スキルを磨くプロセスに焦点を当てている。
- 抑うつは進化的適応として考えられ、主にネガティブなライフイベントに対する反応として、包括的な適応度を高める役割を持つ。
- 多くの抑うつエピソードは治療がなくても自然に回復することが示唆されており、抑うつの進化的意義が考察されている。
- CBTは「上から下」方式で機能し、高次の大脳皮質がより感情的なプロセスを覆い隠す形で働くのに対し、薬物治療は「下から上」方式で作用する。
- CBTは意識的な論理的再考を促し、患者が自らの信念や問題を丁寧に見直すことを重視する。
- CBTでは初期セッションでの認知・行動戦略への遵守が症状の変化につながり、その結果、治療関係の質が向上する。
- CBTの特異性として、認知の変化が抑うつの変化に繋がる一方で、薬物治療ではその逆が見られる。
- 進化医学は、病気の状態と「健康な」病気の状態への反応とを区別しようと試みている。
- 発熱と下痢は、体内の病原体の存在に対する生存の可能性を高める進化的適応の例である。
- うつ病や不安のような陰性感情を中心としたほとんどの非精神病性「障害」は、祖先の過去において包括的な適応度を高めるために進化した適応である可能性がある。
- 非精神病性「障害」の根本的なメカニズムは「種に典型的」であり、病気でも障害でもない可能性がある。
- うつ病は、複雑な(しばしば社会的な)問題に対する意図的な認知スタイル(反芻)を促進するために進化したと主張できる。
- 反芻などの適応が果たすために進化した機能を最も促進する介入は、単に苦痛を麻酔する薬物よりも好まれる可能性が高い。
- 著者たちは、うつ病を生成するために進化したメカニズムと、認知行動療法で利用されるプロセスを進化論的観点から検討する。
- 現代精神医学の父と広く考えられているエミール・クレペリンは、正常な精神状態と病的な精神状態との間に根本的な区別を確立することはほとんど不可能であると述べた。
- 米国精神医学会の最新版である精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)も、同様の見解を示している。
- うつ病の現代的な診断基準が正常な状態と病的な状態を正確に区別しているかどうかについては、大きな議論がある。
- すべての不快な反応や経験が必ずしも病気や障害であるとは限らない。
- 強い陰性感情(特にうつ病や不安)を特徴とする非精神病性の精神医学的「障害」は、祖先の過去において機能するために進化した適応を表している可能性がある。
- 進化は「最も適した個人の生存」ではなく、「最も適した遺伝子系統の生存」を選択する。
- 臨床医は、個人の役に立たない行動を「不適応」と呼ぶことがあるが、進化論的な観点からは、その特性が包括的適応度を高めた場合、それは進化によって選択される。
- 精神医学は、DSMと精神薬理学を通じて、精神疾患の理解、研究調査、分類、および治療に大きな影響を与えてきた。
- 非精神病性障害は、経験するのが不快かもしれませんが、遺伝子系統を広めるのに役立つ適応防御を動機づける。
- 遡及的疫学研究では、すべての人が人生のある時点で、大うつ病の現代的な診断基準を満たすエピソードを経験すると推定されている。
- 女性は男性の2倍うつ病エピソードを経験する可能性が高く、その格差は青年期初期に初めて現れ、生涯を通じて維持される。
- DSM-5から死別除外を除外するという決定は、悲しみが愛する人を失ったことに対する「正常な」反応として広く認識されているため、かなりの論争を引き起こした。
- この記事では、進化適応としてのうつ病の意味を探り、CBTの側面が、うつ病が進化した機能を促進するのに特に適している可能性があるという命題を検討する。
- 著者たちは特に、メランコリー型うつ病が、若い霊長類が最初に成人の責任を負うときに特に発生しやすい複雑な社会問題に対する分析的反芻のプロセスを促進するために進化したという概念に焦点を当てている。
- 進化医学の基本原則は、負の感情が進化した機能を促進する介入は、単に苦痛を麻酔する介入よりも長期的には成功する可能性が高いということである。
- 著者たちは、CBTがうつ病が進化した機能を促進する(反芻をより効率的にする)と考えているが、ADMは苦痛を抑制するだけで、うつ病を引き起こした問題をほとんど未解決のままにする。
- ARHの文脈の中でCBTがどのように機能するかを示すために、臨床医が関心を持つ可能性のある9つの質問を提起し、著者たちの進化論的アプローチがそれぞれにどのように洞察を提供するかを議論する。
- 嫌悪感を抱く感情のほとんどの進化的説明は、それらが有害な出来事によって引き起こされ、それらの出来事の回避を促進する行動と学習を動機づけることを提案している。
- 感情的適応は、さまざまな状況のさまざまな適応課題に対応するために、協調的な全身反応を生み出すとも一般的に考えられている。
- 進化生物学の観点から見ると、そのような症候群は病気でも障害でもない。
- 有病率が低く、遺伝率が高い、重篤な精神疾患(SMI)(統合失調症、双極I型障害、自閉症)は、「真の」病気を十分に表している可能性があるが、有病率が高く、遺伝率が適度な、うつ病や不安のような苦痛な感情を中心とした非精神病性の「障害」は、祖先の過去において生殖能力を高めたために進化した適応を表している可能性がある。
- 痛みの生存価値に関する研究でこの点を説明する。
- 物語の教訓は、痛みは苦痛かもしれませんが、生物にさらなる害を回避するように動機づけ、生存を促進するということである。
- メランコリー型うつ病は苦痛だが、それは必ずしも悪いことではない。
- メランコリーのような特性が適応であることを示すことは、骨の折れる負担である。
- 自然選択は、高度に組織化され調整された特性を生み出すことができる自然界で唯一知られている力であり、脳の構造に対する唯一実行可能な説明である。
- 適応の探求には、本質的に高度に組織化され調整された特性を認識することが含まれる。
- メランコリー型うつ病の古典的な説明は、深刻な失敗または間違いに対応してタイプ2の回避学習を促進するための高度な秩序と調整を示している。
- 「回避学習」とは、メランコリーが深刻な過ちに対する感情的な反応であり、その機能が将来同様の出来事を回避することである学習スタイルを促進することを意味する。
- タイプ2思考はより熟考的で思慮深い。
- タイプ2思考は、時間がかかり、注意を要し、エネルギーを消費するため、即時の応答を必要としない複雑な社会問題を解決するのに適している。
- メランコリーの重要な症状である悲しみは、タイプ2処理スタイルを促進することがよく知られている。
- メランコリーの他の多くの症状は、時間のかかり、注意を要し、エネルギーを消費するタイプ2思考の性質の周りにランダムに組織化することができる。
- メランコリーにはセロトニン伝達の増加が含まれるという考えは、仮説を反証する致命的な欠陥のように思えるかもしれない。
- メランコリーは、タイプ2処理を促進するための適応の兆候を示している。
- タイプ2処理は分析的であるため、これを分析的反芻仮説(ARH)と呼ぶ。
- ARHはメランコリーに直接適用されるが、非定型うつ病または他のうつ病の表現型を説明するのにも役立つ可能性がある。
- 進化生物学者が、適応を生み出した可能性のある祖先の状態を解明しようとするとき、彼は「リバースエンジニアリング」と呼ばれるプロセスに従事する。
- 未知の進化的起源を持つ特性をリバースエンジニアリングしようとするときは、代謝資源(エネルギー)の分布に従うと役立つ。
- 抑うつ気分と快楽追求への関心の喪失(快感消失)を伴う症候群は少なくとも3つある。
- これらの異なるエネルギー移動はすべて、ミトコンドリアと共進化した非常に古代の神経伝達物質であり、ほぼすべてのADMの標的であるセロトニンによって調整される。
- 回避学習は、うつ病の特徴をランダムに組織化しない効果であり、ランダムでない組織化は自然選択の結果である必要がある。
- ジェフリー・グレイは、2つの協調的な神経生物学的システムをマッピングした。(1)脅威の回避、行動抑制システム(BIS)、主にノルアドレナリン作動性。(2)快楽の追求(食欲をそそる刺激)、行動活性化システム(BAS)、主にドーパミン作動性。
- うつ病で最も直接的に抑制されているように見えるのは後者である。
- 私たちの現在の議論に最も関連するのは、ほぼすべての抗うつ薬の主要な標的であるセロトニンが、抑制(BIS)と活性化(BAS)の間のエネルギーの分配を調整し、したがって、これらの異なるタイプの活動とそれらが反映する感情症候群の相対的なバランスを大きく調整するということである。
- 臨床医は、反芻を単なるうつ病の症状、またはさらに悪いことに、それ自体の原因となるプロセスであると考える傾向がある。
- ほとんどのうつ病エピソードは、治療なしで自然に寛解する(「自然寛解」として知られているもの)。
- 私たちの祖先の過去では、治療法が出現する前は、何かがそのような「自然寛解」を説明していたに違いない。
- 正常な感情は進化的に古く、特定の状況に対する適応反応を動機づけるために進化しました。
- メランコリーがタイプ2思考を促進するための適応であるという証拠は、抑うつ思考が引き金となる問題を解決することによって、そのような「自然寛解」に寄与する可能性があることを示唆している。
- 抑うつ思考(別名:反芻)には、無価値感や罪悪感といった自己非難的なテーマがある。
- 私たちの出発点は、損失や失敗についての思考は、まだ継続している社会問題を是正したり、将来同様の出来事を回避したりするのに役立つ場合、無駄な努力ではないということである。
- 損失や失敗につながった一連の出来事を分析し、予防可能な行動をとることができた因果関係のポイントに焦点を当てることは、根本原因分析(RCA)と呼ばれる。
- RCAにはタイプ2処理が必要である。
- RCAの1つの結果は、反事実的思考の展開である。
- 反事実的思考は自己非難の偏りを持つことが多い。
- メランコリー型の反芻で起こる罪悪感と後悔の自然な説明は、それらが過去の行動に対する後悔を示し、予防可能な行動をとることができたときに根本原因の検索を動機づけ、再発のリスクを減らすのに役立つ反事実的思考につながるということである。
- メランコリーの症状である自尊心の低さ(無価値感)と悲観主義(否定的な期待)も、根本原因の検索と上方反事実的思考の展開において動機づけの役割を果たす。
- 自己についての社会的文脈を欠く信念は、進化によって作用される可能性は低い。
- 要約すると、有害な出来事のタイプ2回避学習は、メランコリーのすべての主要な症状を非ランダムに組織化し、社会的機能、およびおそらく対人紛争の促進において役割を果たす。
- したがって、回避学習はメランコリーの進化した機能である。
- メランコリー型の反芻は、自己非難的な原因に特に焦点を当てて、問題の原因を理解することに焦点を当てることが多い。
- 抑うつエピソードは、連続的な2段階の反芻プロセスを通じて解決すると予測される。
- ARHは、メランコリーが外乱に応答し、システムを平衡に戻す「閉じたシステム」の一部であると予測する。
- 私たちは、臨床サンプルと非臨床サンプルの両方を含む一連の論文で、このモデルの一貫した支持を見つけた。
- うつ病は、遡及的疫学研究が私たちに信じさせるよりもはるかに一般的であるようだ。
- 「うつ病の可能性」と呼ばれている人々であり、その指定は事実上「種に典型的」と同義である。
- 最初の発作が慢性と見なされるほど長く続かない限り、治療を受ける人はほとんどいない。
- これは、うつ病になる人の大多数が、その機能を果たしてから止む何らかの進化的適応の作用を示唆している。
- 複数の説明が可能である。
- 単にうつ病のエピソードを経験しただけで、別のエピソードのリスクが高まるとは疑う理由はない。
- 以前のエピソードの数がその後のエピソードの可能性を予測するという事実は、異質なサンプルで「うつ病の可能性」のある個人と「再発しやすい」個人を混同したことによる単なる人工物である。
- メランコリー型うつ病が正常な感情である場合、苦境は解消される。なぜなら、すべての感情は繰り返しの経験だからである。
- 人々は経験的回避の能力も異なるようだ。
- 経験的回避は、うつ病からのより悪い結果と関連している。
- 人が経験から学ばない場合、同じ過ちを繰り返す傾向がある。
- 一部の問題は非常に複雑であるため、その解決には、休憩と休息の期間を挟んで、激しいメランコリー型の精神活動のバーストと発作を何年もかけてゆっくりと解決する必要がある場合がある。
- 多くの場合、人々が社会的世界のメンタルモデルが不十分であるというフィードバックを得るのは、社会的な目標を達成できない場合のみである。
- うつ病になりやすい人は、自分の信念を変えることに関して保守的であるという点で独特ではない。それは種に共通の特徴である。
- 人が自分の信念を変えることに関して保守的であることは、種に共通の特徴である。
- うつ病になりやすい人は、変化に対して特に抵抗力があるという考えを支持する間接的な証拠がある。
- 信念を保持することは、ほとんどの場合、私たちに役立つ。
- 信念を変えることはリスクも伴う。
- 信念を変えることのコストは高くなる可能性がある。
- 信念を保持することの利点と信念を変えることのコストとの間のトレードオフは、おそらく、私たちが進化してきた理由である。
- うつ病になりやすい人は、自分の信念を変えることに対して抵抗力がある理由を説明するのに役立つ可能性がある。
- うつ病になりやすい人が、自分の信念を変えることに対して抵抗力がある理由を説明するもう1つの可能性は、彼らが自分の信念に対してより確信を持っているということである。
- うつ病になりやすい人は、自分の信念を変える動機が低い可能性がある。
- これらの説明はすべて、うつ病になりやすい人が自分の信念を変えることに対して抵抗力がある理由を説明するのに役立つ。
- 信念を保持することの利点と信念を変えることのコストの間のトレードオフは、おそらく、反芻が適応である理由でもある。
- 反芻は、人が自分の信念を検証し、必要に応じて変更するのに役立つ。
- 反芻は、人が自分の信念を保持することの利点と信念を変えることのコストのバランスを取るのに役立つ。
- 反芻は、人が自分の信念を変える必要があることに気づき、変化に伴うコストを負担することなくそれを行うのに役立つ。
- 反芻は、人が自分の信念を検証し、必要に応じて変更するのに役立つことによって、他の多くの問題を解決するのに役立つ。
- 反芻は、人が自分の信念を保持することの利点と信念を変えることのコストのバランスを取るのに役立つ。
- 反芻は、人が変化する状況に適応するのに役立つ。
- 反芻には欠点もある。
- しかし、全体として、反芻の利点は欠点を上回る。
- 反芻は、人が変化する状況に適応するのに役立つ。
- これが、反芻が適応であり、うつ病になりやすい人が自分の信念を変えることに対して抵抗力がある理由を説明するのに役立つ理由である。
- 認知行動療法(CBT)は、うつ病の一般的な治療法である。
- CBTは、思考、感情、行動の間の相互関係に焦点を当てた心理療法の一種である。
- CBTの目標は、患者が自分の思考、感情、行動の間のつながりを理解し、自分の人生に悪影響を与えている否定的な思考パターンや行動パターンを特定して変更するのを助けることである。
- CBTは、うつ病