「多重知能(MI):理論と実践における新たな地平線(ハワード・ガードナー 2008年)」の要約を以下に示します。
【要約】
ハワード・ガードナーは、1970年代から発達心理学と神経心理学の研究を進め、1983年に「多重知能(MI)理論」を発表しました。この理論は、知能を単一の尺度(IQなど)で測定する従来の考え方に異議を唱え、人間には多様で独立した知能が存在すると主張します。
本書は以下の構成になっています:
① 理論編(パートI)
- 第1章~第5章
- MI理論の概要と進化
- 新たに加えられた知能、知能と領域の区別、知性の多様な概念を紹介
- 知能と創造性・専門性・天才性との関係
- 心理学的研究が教育課題や提言につながるプロセス
- 理論に対する批判や質問への回答
② 教育的展望(パートII)
- 第6章~第10章
- 幼児教育から専門的教育、芸術教育におけるMI理論の応用事例
- 教育の目的論の検討
- 新しい評価方法の提案
③ 新たな展望(パートIII)
- 第11章~第13章
- 知能の社会・文化的背景を踏まえた新たな視点
- 職場におけるMI理論の活用と今後の展望
- 知能研究の未来とグローバル化社会におけるMI理論の位置づけ
【多重知能の分類(初期提案)】
ガードナーは以下の知能が存在すると述べています:
- 言語的知能
例:作家、詩人(T.S.エリオット) - 論理数学的知能
例:科学者、数学者(バーバラ・マクリントック) - 空間的知能
例:航海士、建築家、芸術家 - 身体運動的知能
例:アスリート、ダンサー(ベーブ・ルース) - 音楽的知能
例:音楽家(ユーディ・メニューイン) - 対人的知能
例:教師、セラピスト(アン・サリバン) - 内省的知能
例:自己理解、作家(ヴァージニア・ウルフ) - 博物的知能(後から追加)
例:自然観察者、生物学者(チャールズ・ダーウィン)
【理論の背景と意義】
従来のIQやSATなど一元的な知能観は、特定の人(法学教授的思考)に有利だが、多くの人の多様な才能を無視するという批判があります。MI理論は、人間の認知的多様性を認め、教育や社会制度をより個人中心で公正なものに再設計する必要性を説いています。
また、MI理論は、脳科学や認知科学の成果にも基づき、人間の「知的行動」の実態をより正確に反映すると考えられています。
【教育・社会への応用】
- 教育現場では、各生徒の知能の強みを活かしたアプローチが可能
- 職場や社会においても、異なる知能を評価・活用する文化が重要
- 知能の捉え方が変われば、教育の目的や方法、社会的評価基準も変化する
【結論】
多重知能理論は、知能の多元的理解を基礎に、教育、職場、社会の在り方を問い直し、個人の多様な能力を活かす社会の実現を目指しています。
