スティーブン・ピンカーの著書『暴力の人類史(原題: The Better Angels of Our Nature)』は、「現代は人類史上、最も平和な時代である」という衝撃的な結論を、膨大な統計データと歴史的事例で論証した大著です。
ニュースやSNSの影響で「世界は残酷になっている」と感じがちですが、ピンカーは殺人率や戦争による死者数を「人口比」で見ると、数千年前から現代にかけて劇的に減少していることを示しています。 本書の核心となる考え方は以下の通りです。
- 暴力が減少した「6つの動向」 人類史において、以下のプロセスを経て暴力は段階的に減ってきました。
平和化のプロセス: 狩猟採集から農耕定住社会へ移行し、国家(政府)が暴力を独占したことで部族間の報復合戦が減少。 文明化のプロセス: 封建制から中央集権国家へ。マナーや自己制御が広まり、日常的な殺人が激減。 人道主義革命: 啓蒙時代に、拷問や奴隷制、死刑の残酷さが批判され、制度として廃止。 長い平和: 第二次世界大戦後、大国同士の戦争が起きていない期間。 新平和: 冷戦終結後、内戦や虐殺も世界的に減少傾向。 権利革命: 女性、子供、マイノリティ、動物への暴力に対する意識の向上。
2. 「内なる悪魔」と「善なる天使」 人間の本性には、暴力を生む要素と抑える要素の両方が備わっていると分析しています。
5つの内なる悪魔(暴力を促す): 捕食(実利的な目的)、ドミナンス(支配欲)、報復、サディズム、イデオロギー。 4つの善なる天使(平和を促す): 共感、自己制御、道徳感覚、理性。
なぜ暴力は減ったのか?(4つの外的要因) 天使が悪魔を抑えられるようになった背景には、環境の変化(リヴァイアサン=国家、通商の発展、女性化、知性の拡大)があると述べています。 ビル・ゲイツが「生涯で読んだ中で最も重要な一冊の一つ」と絶賛した一方で、歴史学者からはデータの解釈について批判を受けることもありますが、人類の進歩を肯定的に捉える「希望の書」として世界中で読まれています。
