第1章 ピボット(転換)の必要性 A Liberated Mind


📘 第1章 ピボット(転換)の必要性

現代社会のパラドックス

科学と技術が、かつて想像もできなかった長寿、健康、社会的交流を提供しているまさにこの瞬間に、あまりにも多くの人が、意味があり、平和で、愛と貢献に満ちた人生を送ることに苦闘しています。過去50年間で物理的な健康と安全は驚くほど進歩しましたが(例:小児死亡率やマラリアによる死亡の減少)、行動科学においては、私たちはより幸福で、より成功した人生を送っていると主張するのは困難です。

精神疾患は、減少するどころか、急速にさらに大きな問題になっています。うつ病は、2017年には世界保健機関(WHO)によって障害と疾病の第1位と評価されました。

これは、現代社会で人間であることの課題に私たちが立ち向かっていないからです。技術革新はより大きな精神的および社会的課題を生み出し、私たちの文化と心は、効果的な方法で適応していません。メディアを通じて珍しい出来事にさらされることが増えた結果、私たちは恐怖、ドラマ、判断の絶え間ない情報にさらされ、世界がより危険になっているという印象を抱き、圧倒され脅威を感じています。

心理的柔軟性(Psychological Flexibility)

良いニュースは、行動科学が、私たちがより良く行うことができる方法に対するもっともらしい答えを開発したことです。過去35年間で、研究者たちは、人間がどのように人生を展開するかについて最も多くを語る一連のスキルを研究してきました。これらのスキルは、心理的柔軟性へと組み合わされます。

心理的柔軟性とは:

  • 開放性をもって感じ、考える能力。
  • 現在の瞬間のあなたの体験に自発的に注意を向ける能力。
  • あなたの価値観と願望に従って生きることを可能にする習慣を構築し、あなたにとって重要な方向にあなたの人生を動かす能力。

それは、痛みを伴うものから目をそらさないことを学び、代わりに意味と目的に満ちた人生を送るために、あなたの苦しみへと向き直ることです。私たちは開放的で、好奇心旺盛で、親切な方法で私たちの不快感と不安へと向き直ることができます。私たちが最も深く気にかけているものは、しばしば私たちに最も大きな苦痛を引き起こす力を持つものだからです。

このスキルは学ぶことができ、人間の解放を達成する手段であり、現代社会の課題に立ち向かうために人々が必要とする均衡の力です。

心理的硬直性(Psychological Rigidity)という罠

私たちは皆、心の奥底で私たちの最善の利益に役立たないと知っている行動に従事しています(例:過食、先延ばし、喧嘩)。簡単な答えは、私たちの心が私たちの邪魔をしているということです。私たちは、痛みを回避しようとする試みの中で、反芻、心配、気晴らしなどに消えてしまう、心理的硬直性のパターンに陥ります。

心理的硬直性の核心は、困難な体験によって引き起こされるネガティブな思考や感情を、避けようとする試みです。

  • ポジティブな思考でネガティブな思考を避けることは、心理的硬直性の別の形です。その目的が困難な感情を避けることである場合、長期的な結果はほとんど常に悪いということです。
  • 精神的硬直性は、不安、うつ病、薬物乱用、トラウマなど、ほぼすべての心理的および行動的な問題を予測します。
  • それは、喜びも避けることにつながります。硬直的な人々は、不安に耐えられないことから始まりますが、最終的には幸福にも耐えられなくなり、「麻痺している方が良い」と感じます。
  • それは感情から学ぶことを困難にし、失感情症につながる可能性があります。

内なる独裁者(The Dictator Within)

私たちの心には、支配的な問題解決の部分があります。私は心のこの側面を内なる独裁者と呼んでいます。なぜなら、それは私たちの心理的な痛みに対する「解決策」を絶えず提案しますが、私たちの経験はそれらの解決策が有害であるとささやくからです。

私たちは、人生を生きるべきプロセスとしてではなく、解決すべき問題として扱っているため、心理的な代償を払っています。外部の世界では痛みを排除するために行動することは生存本能ですが、思考や感情の内部の世界では同じようには機能しません。痛みを伴う記憶を取り除こうとする努力は、それらの中心性を高めることにつながります。

罠からの脱出:ピボットの力

著者は自身のパニック障害の経験から、不安から逃げろ、隠れろ、または戦えという要求が耐えられない場所へと自分を追いやったことを発見しました。不安のない人生という「賞品」にしがみつくことは、猿の罠(バナナチップを掴むと手がひょうたんから抜けなくなる)に囚われた猿のようでした。不安をコントロールしようとする試みを放棄し、その精神的なバナナチップを落としたときに、初めて癒しが始まりました。

痛みと目的は同じものの二つの側面です。うつ病と闘っている人は完全に感じることを切望している人であり、社会不安のある人は他者とつながることを切望している人である可能性が非常に高いです。あなたは気にかけるところで傷つき、傷つくところで気にかけるのです。

ACTは、私たちの心が私たちを閉じ込める硬直した方法のそれぞれが、その深い内側に隠された健康的な切望を含んでいることを解明しました。柔軟性のピボットは、その隠された切望を、実際にその切望を満たすことができる、より開かれた柔軟なあり方へと方向を変えることを可能にします。

ACTの6つのピボット

心理的柔軟性を構築する6つのスキルは、それぞれが硬直した精神的なプロセスから離れる特定のピボットを伴います。

柔軟性スキルピボット対象方向を変える切望
1. 脱フュージョン (Defusion)認知的フュージョンから脱フュージョンへ一貫性と理解への切望
2. 自己 (Self)概念化された自己から視点取得の自己へ帰属とつながりへの切望
3. 受容 (Acceptance)体験の回避から受容へ感じることへの切望
4. 今に存在すること (Presence)硬直した注意から柔軟な注意へ方向付けへの切望
5. 価値 (Values)社会的従順な目標から選択された価値へ自己方向付けと目的への切望
6. 行為 (Action)回避的な持続からコミットメントのある行為へ有能であることへの切望

ピボットは、蝶番のピンのように、一方向に向かっているエネルギーを取り、すぐに別の柔軟なプロセスへと方向を変えます。

ACTの科学的根拠

ACT研究は、その幅広い効果が診断を横断する「トランスダイアグノスティック」であることを示しています。不安、うつ病、薬物乱用、摂食障害など、広範な伝統的な精神衛生のカテゴリーにわたって機能するだけでなく、身体疾患の課題、人間関係、ストレス管理、スポーツ競技などの分野でも役立ちます。

癌回復者の研究では、ACT参加者は、不安とうつ病が低く、生活の質が高く、心的外傷後成長(人生への感謝、新しい可能性の受け入れ)がより多く見られました。

多剤使用者の研究では、ACT参加者は、メサドンのみのグループと比較して、オピエートの服用がはるかに少なくなりました。

ACTトレーニングは短い期間で劇的な変化をもたらすことが可能です。例えば、過体重と肥満の人々に対する一日のACTトレーニングは、恥を減らし、心理的な柔軟性と生活の質を改善し、自然により多くの体重を減らすことにつながりました。

心理的なピボットは、歩くことを学ぶのに似ており、努力と練習が必要なスキルです。しかし、その核心は、「始める」という単語を言うのと同じくらい近いことが示されています。


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