デビッド・マイヤーズ
先週、私は人工内耳の手術を受けるため、全身麻酔で3時間を過ごしました。好奇心旺盛な心理学者であり、麻酔科医とも親交があったので、簡単な記憶テストを受ける機会を逃しませんでした。
まず、私がこの疑問に思った理由から。一晩の睡眠は、その日の経験を処理して永続的な記憶として保存する役割を果たします。よく眠ることは、記憶を記憶することです。しかしながら、記憶の最初の神経記録（「エンコード」）には、起きている間に少し時間がかかります。そのため、実験中のラットは、脳に電流を流して記憶形成が中断されると、直前に経験したことを忘れてしまいます。
人間も同様に、電気けいれん療法（ECT）を受ける直前の記憶を失っています。そして、私が心理学の著書で説明したように、「一瞬意識を失ったフットボール選手やボクサーは、ノックアウト直前の出来事を全く記憶していないのが普通です。」
眠りに落ちた人や、薬物による一時的な昏睡状態に陥った人にも、同じことが当てはまるでしょうか？あなたは、うとうとする前に考えていたことや経験していたことを忘れてしまったのでしょうか？
麻酔科医は、私が答えを体験できるように、薬を投与する旨を告げ、もうすぐ意識が朦朧とするだろうと告げました。それが、私が声に出して秒数を数え始める合図でした。「1、2、3、…」
3時間半後に目が覚めた時、手術室に入り、手術台に上がった時のことは覚えていた。担当スタッフと雑談したことも覚えていた。麻酔科医が身体センサーを接続した時のことも覚えていた…しかし、それ以降のことは何も覚えていなかった。
実際には、目が覚めてから知ったのだが、私の記憶にない意識的な活動は、16 まで数えることも含めて約 3 分間続いた。私の人生の一部 ― 完全に経験されたが記録されていない ― が、心のブラックホールに消え去っていたのだ。
奇妙な体験でした。でも、もっと奇妙なのは、私が今まであまり理解していなかったことです。それは、私、そしてあなたも、この魅力的な現象を毎日体験しているということです。
麻酔誘発性昏睡は睡眠ではありません（健忘薬の作用が加わることもあります）。しかしながら、先月、ベイラー大学の睡眠研究者マイケル・スカリン氏に、私が想定していた準実験を提案したところ、彼は私の体験を予測していました。彼によると、予想される記憶喪失は（私にとって新しい概念である）中等度健忘の一例となるとのことでした。[i]
私たちは日常的に、しかし無意識のうちに、眠りに落ちる直前の記憶が忘却される中等度健忘症を経験しています。この現象は、ジェームズ・ワイアット氏らが1997年に実施した実験で実証されました。被験者は、脳波記録によって眠りへの移行が検知される直前に話された言葉を思い出すことができませんでした。（この記憶喪失は、眠りに入る最大4分前から起こり、手術台にいた私の場合と同様に、驚くほど長く続きました。）
さらに奇妙なことに、スカリン氏がさらに説明したように、睡眠誘発性中等度健忘とは、私たち人間が夜間に短時間（1～4分）目覚めたことを記憶していないことを意味する。この現象は実験的にも確認されている。例えば、大学生が短時間目覚めた状態でテキストメッセージを送信した場合、翌朝にはそのことを全く覚えていないことが多い。また、睡眠時無呼吸症候群の患者は、短時間の覚醒を複数回経験するが、その記憶は残っていない。
中等度健忘は、私が最近経験した睡眠体験の一つを説明しています。ある暖かい夜、一人でベッドに潜り込むと、毛布を足元まで押し下げてしまいました。夜中に部屋が冷え込み、朝目が覚めると毛布が引き上げられていました。どうしてそうなったのか、全く記憶にありません。妖精のおばあちゃんは私の冷えに気づいたのでしょうか？
スカリンの記憶術講座を読んだことで、仕事帰りの夜に少なくとも週に一度経験するある出来事について考えるようになりました。それは、イギリスのミステリー番組を見ながら、うとうとしてしまうことです。意識が戻ると、たいてい10分ほど記憶のない時間を思い出さなければなりません。番組の空白は10分間の昼寝に相当すると想定していました。しかし実際には、中等度健忘による4分間と昼寝による6分間で、失われた10分間を説明できるかもしれないと、今になって気づきました。
睡眠実験の参加者、そして私に当てはまることは、あなたにも当てはまります。眠りに落ちること ― 睡眠や昼寝の始まり、そして中断された睡眠中に再び ― によって、直前の人生経験に関する記憶が失われます。時間が経つにつれて、中等度健忘の経験は、脳のハードドライブに記録されずに消え去った、意識のある人生の何時間分にも相当するのです。
これを、私たちの人生における驚異の一つとして数えてください。（こうした驚異についてもっと知りたい方は、最近出版した私の著書『私たちは自分自身を知る方法：人間の心の不思議と驚異』をご覧ください。 ）
[i] ほとんどの健忘は、順行性健忘（新しい記憶の形成に問題が生じる）か逆行性健忘（古い記憶へのアクセスに問題が生じる）のいずれかです。中等度健忘（中等度健忘）は、新しい記憶の保存または一度保存した記憶の想起が困難であることのどちらかが原因であるとは明確には言えません。覚醒から睡眠への移行期に海馬の活動が急激に増加し、記憶を阻害することで発症すると考える人もいます。
