訪問看護指示書 訪問看護ステーションが医師に不適切・過剰な要求 結果、利益を目的とした不正・過剰な診療報酬の請求 訪問看護で不適切要求4割 学会調査

訪問看護で不適切要求4割 ホスピス住宅、医師経験 虚偽病名や過剰、学会調査
2025年12月8日 (月)配信共同通信社

 末期がんや難病患者向けの有料老人ホームなどで、入居者への訪問看護について医師が指示書を発行する際、ホーム側に都合のいい虚偽の病名や過剰な回数を書くよう不適切な要求をされたとの回答が4割に上ることが6日、日本在宅医療連合学会の調査で分かった。

 こうしたホームは「ホスピス型住宅」と呼ばれ、近年各地で急増。入居者向けの訪問看護ステーションを併設し、利益を目的とした不正・過剰な診療報酬の請求が横行していると指摘されていた。今回の調査で実態が裏付けられた形だ。現場のケアの質に対する医師の評価も低かった。

 調査は同学会が10~11月、会員の医師約3400人を対象にインターネットで実施。約490人が回答した。

 訪問看護の実施には、それぞれの入居者について主治医の指示書が必要。「指示書に記載する病名に手心を加えるよう求められたことがあるか」尋ねると、40%が「ある」と答えた。「頻繁な回数や複数人での訪問が必要」と書くよう求められた経験も、37%が「ある」と回答した。多数回や複数人での訪問をすると、ホーム側に入る診療報酬はその分、増える。

 医師側が要求に応じないことで「ホーム側に主治医を変更された」「変更を示唆された」「自ら診療をやめた」との回答が計59%に上った。

 医師が訪問診療に入っているホスピス型住宅のケアの質について聞くと、各医師が最も優良と考えている施設でも、10項目のうち5項目で過半数の医師が5段階評価の「3」以下と答えた。

 学会の平原佐斗司(ひらはら・さとし)代表理事は「不適切な事業者により医療や看護に重大なゆがみが生じている。構造的な問題であり、制度の再設計などを通じて質を担保する必要がある」としている。

 ※ホスピス型住宅

 末期がんや難病患者向けの住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅を指す。公的な名称ではない。入居者向けの訪問看護・介護ステーションを併設しているのが一般的。高齢化に伴うみとりニーズの増加を受け、近年急増している。民間調査によると、今年10月現在、全国で約670カ所あり、定員数は約3万人。病院の緩和ケア病棟のベッド数(約1万床)を大幅に上回る。大手を含む複数の運営会社が訪問看護で診療報酬を不正・過剰に請求していた疑いが判明している。

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