事例概念化の臨床的有用性を評価するために、その十分性(adequacy)の3つのレベルが区別されています。臨床的に有用な事例概念化は、提示された問題に対する説得力のある説明である説明力と、治療の成功に対する障害と促進要因の予測である予測力の両方を提供することが求められます。
以下に、事例概念化を評価するための3つのレベルを示します。
1. 高レベルのケース・コンセプチュアライゼーション
高レベルの事例概念化は、以下の特徴によって認識されます。
- 事例概念化の4つの主要な構成要素すべてに対応する質問に対処します:
- 「何が起こったのか?」(診断的フォーミュレーション)
- 「なぜそれが起こったのか?」(臨床的フォーミュレーション)
- 「文化はどのような役割を果たしているか?」(文化的フォーミュレーション)
- 「それについて何ができるか?」(治療フォーミュレーション)
- 抵抗、転移、ノンコンプライアンス(不遵守)などの治療の「障害」を予測します。
- **明確に定義された「治療の焦点」と「介入戦略」**を指定します。
- 介入をクライアントに合わせて**「調整(テーラリング)」するための基礎**として機能します。
- 治療上の意思決定と修正のためのガイドとして、効果的な治療同盟を維持するための基礎として、そして終結に関する問題を計画し予測するための基礎としても機能します。
- 書かれたレポートのセクション間には高度な一貫性があり、治療フォーミュレーションが臨床的フォーミュレーションおよび診断的フォーミュレーションを直接反映しています。
- かなりの説明力と予測力を持っています。
(例:ソース中の「バージョン3」は、パーソナリティ、状況、および文化的力動が中心であり、治療の成功に対する潜在的な障害を予測した調整された治療計画となっており、かなりの説明力と予測力を追加しているため、高レベルの事例概念化と評価されます。)
2. 中レベルのケース・コンセプチュアライゼーション
中レベルの事例概念化は、有能なコンセプチュアライゼーションと類似していますが、核心的な要素が欠落しています。
- 診断的、臨床的、文化的、および治療フォーミュレーションの質問に対処します。
- レポートのセクション間に合理的な程度の一貫性があります。
- 通常、治療目標は含まれていますが、明確に特定された治療の焦点や治療戦略が記されている可能性が低いです。
- 治療がどのようにクライアントに合わせて調整されるか、または治療目標の達成に対する障害(課題)が含まれている可能性も低いです。
- これらのコンセプチュアライゼーションは優れた説明力を持っているかもしれないが、予測力はほとんどありません。
(例:ソース中の「バージョン2」は、記述的な焦点とは対照的に、より多くの説明と治療への示唆を提供し、パーソナリティと状況的な力動を強調していますが、文化的配慮や予想される治療の成功に対する潜在的な障害が扱われていないため、かなりの説明力を持つものの、予測力は比較的低いと評価されています。)
3. 低レベルのケース・コンセプチュアライゼーション
低レベルの事例概念化は、いくつかの点で欠陥があり、臨床的に有用性に乏しいと特徴づけられます。
- 臨床資料の拡張された記述になる傾向があり、臨床的に有用な説明になることは少ないです。
- 診断的、臨床的、治療、およびフォーミュレーションの質問に対処できていません。
- 結果として、治療目標が十分に定義され、焦点が絞られている可能性が低いです。
- 目標を達成するための障害が予測されていないため、臨床医は治療の経過に驚かされたり、狼狽したりする可能性があります。
- レポートのセクション間の一貫性はほとんどないか、全くありません。
- このコンセプチュアライゼーションには、説明力も予測力もありません。
(例:ソース中の「バージョン1」は、基本的にDSM診断と初期治療計画を強調した事実に基づく記述であり、クライアントが一般的な治療計画に従うかどうかの予測がなく、事実上、説明力や予測力がないため、低レベルの事例概念化と評価されています。)
これらの評価のレベルは、事例概念化が単なる「ケース・サマリー(要約)」ではないことを示しています。ケース・サマリーが事実の蒸留であるのに対し、事例概念化は事実を超えた実行可能な推論(抽象化を伴う)を構築し、調整された治療と障害の予測を可能にすることで、臨床的有用性(説明力と予測力)を担保するものです,。
