有害な機能不全(Harmful Dysfunction: HD)の概念は、ウェイクフィールド(Wakefield)によって提唱されたものであり、精神障害を定義する二つの主要な要素から成り立っています。
有害な機能不全(HD)の定義によれば、精神障害とは有害な機能不全であるとされます。この概念は、以下の二つの要素で構成されています。
- 有害性 (Harmful): これは社会規範に基づく価値観の用語であり、障害が、社会的価値観と意味によって定義される個人の幸福に害を及ぼす場合に存在します,。
- 機能不全 (Dysfunction): これは科学用語であり、進化によって設計された自然な機能を精神的メカニズムが実行できないことを指します。
したがって、精神障害は、個人の内部メカニズムが自然によって設計された機能を実行できず、その侵害が、社会的価値観と意味によって定義される個人の幸福に害を及ぼす場合に存在すると定義されます。
ウェイクフィールドは、この概念によって、精神障害の概念が社会文化的価値観に強く影響されていることを認めつつも、社会的価値観に依存しない科学的、事実的、客観的な核心が存在すると提唱しました,。しかし、この定義における「機能不全」が純粋に科学的な用語であるという主張は、客観的に評価できない「精神的メカニズムの設計された機能」に依存しているとして、批判にさらされています。
