不適応なコーピング(対処様式)

スキーマ療法において、**不適応なコーピング(対処様式)**は、早期不適応スキーマ(EMS)によって引き起こされる強烈で圧倒的な感情を避け、適応しようとするために、人生の早い段階で発達させたメカニズムです,。

1. コーピングとスキーマの関係

重要な点として、スキーマ療法モデルでは、「行動(コーピング)」はスキーマそのものの一部ではないと定義されています,。スキーマは記憶、感情、認知、身体感覚の集合体であり、コーピングはそれらによって駆動される「反応」です,。同じスキーマを持っていても、人によって、あるいは状況によって異なるコーピングスタイルを選択することがあります。

2. 3つの主要な不適応なコーピングスタイル

これらは動物の基本的な防御反応である「固まる(Freeze)」「逃げる(Flight)」「戦う(Fight)」に対応しています。

  • スキーマ降伏 (Schema Surrender): 「固まる」に対応します。スキーマが真実であると受け入れ、その感情的な痛みに屈服してしまいます。行動的には、幼少期の体験を再現するような状況やパートナーを無意識に選び、受動的・従順に振る舞うことでスキーマを永続させます。
  • スキーマ回避 (Schema Avoidance): 「逃げる」に対応します。スキーマが活性化されないよう、思考や感情を遮断したり、特定の状況(親密な関係や課題など)を避けたりして生活を整えます。過度の飲酒、薬物使用、仕事中毒などの刺激追求によって、内面の不快な感情を麻痺させようとすることもあります。
  • スキーマ過剰補償 (Schema Overcompensation): 「戦う」に対応します。スキーマの反対が真実であるかのように振る舞うことで、スキーマと戦おうとします。例えば、無力感を感じている人が、他人に対して攻撃的・支配的に振る舞ったり、完璧主義を貫こうとしたりします。一見、自信に満ちて成功しているように見えることもありますが、その行動は過剰で無神経なことが多く、最終的には周囲を遠ざけ、孤立を招きます,。

3. なぜ「不適応」なのか

これらのコーピングスタイルは、子供時代の過酷な環境においては、生存するための「適応的」で健康的な戦略でした。しかし、大人になり環境が変わっても、これらの古い戦略に固執し続けることで、以下の問題が生じます。

  • スキーマの永続化: コーピングによって一時的に痛みは和らぎますが、スキーマ自体が癒えることはなく、むしろ強化・精緻化されてしまいます,。
  • ニーズの不充足: 例えば、愛を求める人が「回避」や「過剰補償(攻撃性)」を選択すると、本来の「他者への安全な愛着」というニーズが満たされる機会を自ら奪ってしまいます,。
  • 柔軟性の欠如: スキーマに支配されたコーピングは自動的かつ硬直的であり、状況に応じた適切な対応を妨げます。

4. 治療の目標

スキーマ療法では、患者がこれらの不適応なコーピングスタイルを認識し、それを手放して、より健康的で適応的な行動パターン(健康な大人モード)へと置き換えていくことを目指します,。


たとえ: 不適応なコーピングは、**「子供の頃に激しい嵐から身を守るために建てた、窓のない頑丈なシェルター」**のようなものです。かつては命を守るために必要不可欠でしたが、大人になって空が晴れ渡っても、その中に閉じこもり続けているため、外の暖かい太陽の光や新鮮な空気を感じることができなくなっている状態と言えます。

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