ポルトガル研究を日本の状況と対比しながら整理します。
臨床感覚とも照合しやすいように、結論→理由→含意の順でまとめます。
1. 結論を先に言うと(日本との大枠比較)
ポルトガルと同様、日本でも
「都市か農村か」そのものは、精神病発症を決定づける主因ではない
と考えられます。
ただし日本では、
- 都市・農村の差が
「発症率」ではなく「受診経路・治療のされ方」
として現れやすい
という違いがあります。
2. 有病率・発症率の比較
ポルトガル研究
- 都市部・農村部で
FEP有病率は同一(10万人あたり42人) - 南欧諸国の先行研究と一致
日本
- 日本でも
都市部が明確に高発症率というデータは乏しい - むしろ日本の疫学研究では
- 地域差は小さい
- 年齢構成や受診行動の影響が大きい
👉 「都市化=発症増加」という北欧・英語圏モデルは、日本にも当てはまりにくい
3. 発症年齢が高い点の共通性
ポルトガル
- 平均40代
- 妄想性障害が多い
- DUPが長い
日本
- 統合失調症の「典型的発症年齢(20代)」より
かなり遅れて初診に至る例が多い - 特に地方では
- 妄想性障害
- 晩発性・遅発性精神病
が目立つ
👉 「発症が遅い」のではなく
「医療につながるのが遅い」
という構造が日本でも共通。
4. 未治療期間(DUP)の比較
ポルトガル
- DUP2年以上が約2割
- 農村部では早期受診が極端に少ない
日本
- 国際的に見ても
DUPが長い国 - 特に地方・高齢者では
- 家族が抱え込む
- 「様子見」が長期化
- 精神科受診への抵抗
👉 日本の農村部は、ポルトガル農村部と非常によく似ている
5. 社会的要因の比較
共通点
- 失業
- 独居・未婚
- 社会的孤立
が精神病患者に多い。
相違点
| ポルトガル | 日本 |
|---|---|
| 移民・国籍多様性が都市部で影響 | 移民要因は限定的 |
| 物質使用(大麻)が目立つ | 物質使用は比較的少ない |
| 医療制度の未整備 | 制度は整っているが利用が遅れる |
👉 日本では
文化的要因(恥・我慢・家族主義)
がDUP延長に強く作用。
6. 都市部の特徴:日本の場合
ポルトガル都市部(リスボン)では
- 早期受診は多い
- 診断が「特定不能」にとどまりやすい
日本の都市部でも
- 早期アクセスは可能
- しかし
- 軽症のまま通院が長期化
- 社会的孤立が見えにくい
👉 都市は「発症を減らす」のではなく
「慢性化の形を変える」
7. 日本への示唆(臨床・政策的)
この研究を日本に引きつけると、示唆は明確です。
① 問題は都市化ではない
- 本質は
社会的孤立 × 医療につながるまでの時間
② 農村=安全、都市=危険ではない
- 農村:
- 見過ごされやすい
- 発見が遅れる
- 都市:
- 早く拾われる
- しかし関係性が薄い
③ 日本で本当に必要なのは
- 早期介入(DUP短縮)
- 家族・地域への教育
- 「精神病は特別ではない」という
意味づけの更新
まとめ(日本との比較の一文要約)
日本もポルトガルと同様、
精神病の問題は「都市か農村か」ではなく、
「孤立した人が、どれだけ長く一人で耐えさせられるか」の問題である。
