とても重要で、しかも誤解されやすい論点です。
結論を先に言うと、
都市化は「発症リスク」を上げることはあっても、
回復(予後)を一義的に悪化させるわけではない。
むしろ回復は、都市化そのものではなく、
「都市がどんな時間と関係を許すか」で決まる。
以下、整理します。
Ⅰ.まず整理:都市化は「何を変える」のか
都市化が精神疾患に与える影響は、少なくとも3層あります。
- 発症層:ストレス、移民、社会的断絶
- 介入層:医療アクセス、早期治療
- 回復層:役割・時間・期待の圧力
多くの研究は①ばかり語り、
③(回復層)を十分に見ていない。
Ⅱ.発症リスクとしての都市化(確認)
北欧・英語圏研究では一貫して、
- 大都市出生・育成
- 移民・少数派
- 社会的孤立
が統合失調症発症リスクを上げるとされる。
👉 しかしこれは
**「都市=予後不良」**を意味しない。
Ⅲ.都市は「早くつながる」場所でもある
都市の予後改善要因
- 精神科医療へのアクセスが早い
- 専門プログラム(早期介入)
- ピアサポート・多様な居場所
- 診断の再検討が起こりやすい
多くの国で、
DUP(未治療期間)は都市の方が短い
👉 これは予後改善に強く寄与。
Ⅳ.だが都市は「早く回復しろ」と言う
都市が予後を悪くするのは、症状そのものではない。
都市的圧力
- 早期復職
- 自立の可視化
- 成果指標(就労率・復帰率)
👉 回復が
「静かな再編」ではなく
「早い再稼働」になる。
Ⅴ.農村・非都市部との対照(日本的文脈)
非都市部の特徴
- 発症は見逃されやすい
- DUPは長くなりがち
- しかし
- 症状が共同体に包摂される
- 役割が曖昧に保たれる
👉 妄想性障害が目立ち、
退色と共に自然回復する例も多い
Ⅵ.都市化と予後の「逆説」
| 観点 | 都市 | 非都市 |
|---|---|---|
| 発症リスク | 高い | 低い |
| 早期治療 | しやすい | しにくい |
| 役割圧力 | 強い | 弱い |
| 空白の許容 | 低い | 高い |
| 長期予後 | 二極化 | 中等度で安定 |
👉 都市は
よくなる人は非常によくなるが、
折れる人は深く慢性化する
Ⅶ.回復を左右する本当の因子
都市/農村ではなく、次の要素です。
- 時間の自由度
- 役割を空白にできる余地
- 失敗しても排除されない環境
- 回復を急がない支援言語
これらがある都市は、
むしろ最良の回復環境になる。
Ⅷ.臨床的含意(とくに日本)
日本の問題は、
- 都市化
ではなく、 - 都市的論理(成果・復帰)を
全国一律で押し付けていること
地方でも、
- 就労支援
- リワーク
- 期限付き支援
が導入されるほど、
都市と同じ慢性化構造が再生産される。
Ⅸ.まとめの一文
都市化は回復を壊すのではない。
「回復を急がせる都市的時間」が、予後を壊す。
