(行動異常型)前頭側頭型認知症

 (行動異常型)前頭側頭型認知症は非アルツハイマー型の認知症で、認知症全体の1%程度と比較的稀な疾患だが、若い年代での発症例が多い。若年性認知症の代表的なものである。行動異常と人格変化が前景となる。

診断のポイント

 臨床症状として、早期の脱抑制行動や無関心または無気力、共感や感情移入の欠如、固執・常同性、口唇傾向と食習慣の変化、遂行機能障害のうち、3項目以上を認める。頭部CT・MRIで前頭葉や側頭葉前部の萎縮、脳血流SPECTで同部位の血流低下を認める。

治療方針・処方の組み立て方

 前頭側頭型認知症そのものに対して保険適用を有する薬剤は現時点ではない。したがって、薬物療法はあくまでも適応外処方であり、対症療法として補助的に行うことになる。対応の中心は心理療法・行動療法や生活指導、見守りとケアといった非薬物療法である。

 患者は決まった時間に決まったところに出かける周回行動・時刻表的行動など、特定の考えや好みに固執し、常同行動を繰り返す。一方、興味のないことには無関心で拒否的となる。このような患者特性を逆手にとって、たとえばデイケアの日課や入浴サービスを常同化・習慣化していく方法はルーチン化療法と呼ばれ、行動の安定化に有用である。初期の段階からこれを導入しておくと有効性が高い。アルツハイマー病と異なり、記憶や視空間認知機能は比較的保たれるため、危険性が低ければある程度本人の常同行為を容認する。症状が軽い段階では、就労支援施設・作業所などで軽作業を行うことも可能である。

治療の実際

【常同行動が問題となる場合】

 強迫症に適応を有する選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)が、固執傾向や常同行動などに有効な場合がある。

一手目 ルボックス25mg錠もしくはデプロメール25mg錠(フルボキサミンマレイン酸塩)1回1錠1日2回(朝・夕食後)

二手目 〈処方変更〉パキシル12.5mg CR錠(パロキセチン塩酸塩水和物)1回1~2錠1日1回(朝食後)

【脱抑制や気分の高揚が問題となる場合】

 双極症の躁状態に適応を有する薬剤が、問題行動の軽減に有効な場合がある。過鎮静に注意する。

一手目 セロクエル25mg錠(クエチアピンフマル酸塩)1回1~2錠1日1回(夕食後)、またはジプレキサ 2.5mg錠(オランザピン)1回1~2錠1日1回(朝食後または夕食後)

 両剤とも糖尿病がある場合は禁忌である。

二手目 〈処方変更〉リーマス200mg錠(炭酸リチウム)1回1錠1日2回(朝・夕食後)、またはデパケン200mg錠(バルプロ酸ナトリウム)1回1錠1日2回(朝・夕食後)

【不安・焦燥や攻撃的言動が問題となる場合】

一手目 レキサルティ1mg OD錠(ブレクスピプラゾール)1回1錠1日1回(夕食後)

二手目 〈一手目に追加〉ワイパックス0.5mg錠(ロラゼパム)1回1錠(頓用)

【不眠が問題となる場合】

一手目 デエビゴ1mg錠(レンボレキサント)1回1錠1日1回(就寝前)

二手目 〈処方変更〉ツムラ抑肝散エキス顆粒(抑肝散)1回1包(7.5g)1日1回(就寝前)

偶発症・合併症への対応

 時に運動ニューロン疾患を伴うことがあり、必要な対症療法を行う。

非典型例への対応

 失語症を伴う場合は言語療法を行う。進行性の病態であるが、認知機能の維持や精神症状の緩和に多少とも効果が期待できる。

ケアおよび在宅でのポイント

 異常行動については、万引きなどの違反行為や、生命に危険が及ぶような問題がないかに気を配る。一方、常同行為をやみくもに抑えようとすると、暴言・暴力や不安・焦燥などの精神症状の悪化をまねくことがある。本人の発言を否定せず、行動もできるだけ制限しないようにする。

 家族・介護者への適切なケアや支援は重要である。若年性認知症の家族会への参加も有用である。

専門家へのコンサルト

 難病に指定されており、医療費の補助を受けられる可能性もあるため、専門家に相談することが望ましい。

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